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3日目、看護師さんからの贈り物
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「あゆみちゃん。明日、病院から出られるよ」
「え?」
朝起きてすぐ、看護師さんは私に泣きそうな顔で笑いながら言った。
「先生から許可とったの。柏木奏馬くん?の分も一緒にお願いしたわ。デートにでも行ってらっしゃい」
屋上の件ではこっぴどく叱られたが、看護師さんはそれから私の恋を全面的に応援してくれている。
「いいの!?」
満面の笑みで問いかけると、看護師さんは私の頭を優しく撫でながら、ゆったりと頷く。
「えぇ。たぶん、明日が1番体調がいいはずだから。あんまり遠いところに行く許可は出せないし、明日行く場所と時間、食べる物をあらかじめ決めないといけないけれど、それさえ守ってくれれば構わないわ」
「やったぁ!!」
無邪気に飛び跳ねられるほどに、私の体調は中戻りで良くなっていた。そして、それは私の死へのカウントダウンでもある。
「それじゃあ、今日も屋上でお話し合いしてくるね!!」
「………談話室にしないのね」
「うん!だってあそこ逢引にぴったりだしっ!!」
「はぁー、めいいっぱい楽しんでおいで」
「うん!奏馬くんの心を落としてくる!!」
屋上にぱたぱた登る私の足取りは軽い。
看護師さんに櫛を通してもらってから可愛らしく縛ってもらった薄茶の髪は、今日はしっかりとお手入れしたからか艶が出ている。
「たーのもー!!」
鍵が空いていた屋上への扉を勢いよく開けて、私はにっこり笑う。私の視線の先にいるのはもちろん奏馬くん。
カッコいい彼は、病院着のままごろんと屋上の床にねっ転がっていた。
「んー、………つーか、普通の入り方できなわけ?昨日も今日も変なかけ声って面白すぎるんだけど」
「えー、いいじゃんっ!」
ふっと笑った彼は、まだ出会って3回目なのにだいぶ心を許してくれた。
口数が増えて表情が変わるようになった彼は、相変わらずイケメンだ。
「ねえ、明日お出かけできるって看護師さんから聞いた?」
「あぁ。なんか明日は特別だって医者に言われた。詳しい話は別口から聞けって言われたんだけど………」
困惑がおの彼に、私はしてやったりと笑う。
「ねえ、明日私とデートしてよ!特別に外出許可が出たんだっ!」
隠し持っていた周辺のマップ本を彼に『じゃじゃーん!』と見せて、私はパラパラと本を捲る。行きたい場所、やりたいこと、食べたいものは沢山ある。でも、できることの個数と時間は決まっているから、そこまで沢山はできない。
「あのねあのね、やりたいこといっぱいあるんだ!」
呆れたような表情でも真面目に話を聞いてくれる彼の肩にもたれかかって、私は行きたいところを順に指差していく。
「そこは見た目は綺麗だけど、味はまあまあ。それならこっちがおすすめ。距離的には近いほうがいいんだよね?なら、行く場所はこっちにしよう。座れる場所も多いし、何かあったら病院に戻りやすい。料理もこっち周辺の方が美味しいよ。俺の行きつけあるし、案内しやすい」
的確すぎるくらいに的確な反応に、私は目をぱちくりさせた。
「ーーー本当に、一緒に来てくれるの?」
まさか本当に一緒に来てくれると思ってなかった私は、つい本音を漏らしてしまった。
「………お前が嫌なら行かない」
「い、嫌じゃないです!!一緒に行きたいです!!」
「いや、なんで敬語?」
「ん~、なんとなく?でも、本当にいいの!?」
「あぁ」
そう言って彼は私の頭をぽんぽん撫でた。
「お前の行きたいところに、俺が連れていってやる」
左膝を撫でた彼は、ゆっくり立ち上がった。
「………看護師さんに報告に行くか」
「うん!」
先に立ち上がって手を貸してくれた彼のお手々は、ゴツゴツしていて日に焼けていた。色白なようでしっかりとお外に出ていることが感じられる彼にドキドキしていると、彼はふわっと笑った。
ーーー私の余命はあと4日。
人生で初めて、恋が残酷に思えた。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
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