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2日目、俺の爆弾

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▫︎◇▫︎

 俺はずっとサッカーだけをして生きてきた。

 勉強は苦労することなく会得できたし、運動はサッカーだけが好きで、その他には一切の興味を示せなかった。

『ーーー次壊れたら、もう走れなくなるよ』

 だからこそ、高校最後の大会に向けて過酷になっていく練習メニューによって身体を壊した俺に向けて医者が言った言葉は、俺の心を深く抉った。

 周囲よりも一気に加速できる俺の脚。
 周囲よりも長時間加速していられる俺の脚。

 俺の唯一無二の宝物は、この医者の一言によって『爆弾』へと変化した。いつ爆発するかも分からない爆弾によって、脚が壊れることに恐怖しながら、俺はサッカーの練習を続けようとした。
 けれど、脚の痛みはだんだんと、そして着実に強くなっていった。

『ーーー悪いけど、主治医として次の大会には出してあげられない』

 残酷な宣言は大会の直前に行われた。
 そして、俺のリハビリ入院が親によって決定された。将来を最も期待されていた選手だった俺の選手生命は、脚の爆弾によってあっという間に終了を告げられた。

 それからは日々蛇足だった。
 ボールに触れることは禁止されて、サッカー関連のものは全て取り上げられる。サッカー漫画にサッカー観戦、ボールやユニフォームがない生活は、俺を苦しめ、駄目にしていく。
 リハビリに参加する意欲さえも持てなくて、ベッドに寝転がるだけの日々。俺は俺にとってのサッカーの重さを実感した。

(ーーーあぁ、できないんなら、ダメになるんなら、ダメになる前に死ねば良いんだ)

 極端な思考に行くのには、時間を必要としなかった。
 あっという間に死に場所を見つけて、ツテを使って屋上に登って、そして飛び降りようとした。
 でも、あいつに邪魔されて結局はできなかった。

 病室に戻っていった、昨日出会ったばかりのあいつが座っていた場所は、まだほんのり暖かい。

『それを言い訳に挑戦しないのってなんか違うんじゃない?』

 目を閉じれば、どこまでも澄んでいてまっすぐな瞳を思い出せる。

『リハビリが終わったら、身体はちゃんと動くよ。怪我の前と同等っていうのは無理かもしれない。でも、ちゃんと動けるよ。リハビリ入院した子たちを見てきた私が保証する』

 手を伸ばした彼女の髪は、傷んでいるはずなのに、さらさらと風に靡く姿が美しかった。

『もう少し、頑張ってみよう。あなたが、もう1度走れるように!!』

 去っていった彼女は、たった2回会っただけなのに、俺の心に住み着きやがった。

 こんなに思い通りにいかないのは初めてで、俺は困惑していた。
 でも、本当はこの感情の意味を知っている。

 俺と彼女に残されている時間はあと5日。

 俺は彼女に、
 真っ直ぐに生きようとする彼女に、

 ーーー恋をしている。

 俺の世界はどこまでも残酷だ。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈‍⬛🐈

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