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2日目、俺の爆弾
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俺はずっとサッカーだけをして生きてきた。
勉強は苦労することなく会得できたし、運動はサッカーだけが好きで、その他には一切の興味を示せなかった。
『ーーー次壊れたら、もう走れなくなるよ』
だからこそ、高校最後の大会に向けて過酷になっていく練習メニューによって身体を壊した俺に向けて医者が言った言葉は、俺の心を深く抉った。
周囲よりも一気に加速できる俺の脚。
周囲よりも長時間加速していられる俺の脚。
俺の唯一無二の宝物は、この医者の一言によって『爆弾』へと変化した。いつ爆発するかも分からない爆弾によって、脚が壊れることに恐怖しながら、俺はサッカーの練習を続けようとした。
けれど、脚の痛みはだんだんと、そして着実に強くなっていった。
『ーーー悪いけど、主治医として次の大会には出してあげられない』
残酷な宣言は大会の直前に行われた。
そして、俺のリハビリ入院が親によって決定された。将来を最も期待されていた選手だった俺の選手生命は、脚の爆弾によってあっという間に終了を告げられた。
それからは日々蛇足だった。
ボールに触れることは禁止されて、サッカー関連のものは全て取り上げられる。サッカー漫画にサッカー観戦、ボールやユニフォームがない生活は、俺を苦しめ、駄目にしていく。
リハビリに参加する意欲さえも持てなくて、ベッドに寝転がるだけの日々。俺は俺にとってのサッカーの重さを実感した。
(ーーーあぁ、できないんなら、ダメになるんなら、ダメになる前に死ねば良いんだ)
極端な思考に行くのには、時間を必要としなかった。
あっという間に死に場所を見つけて、ツテを使って屋上に登って、そして飛び降りようとした。
でも、あいつに邪魔されて結局はできなかった。
病室に戻っていった、昨日出会ったばかりのあいつが座っていた場所は、まだほんのり暖かい。
『それを言い訳に挑戦しないのってなんか違うんじゃない?』
目を閉じれば、どこまでも澄んでいてまっすぐな瞳を思い出せる。
『リハビリが終わったら、身体はちゃんと動くよ。怪我の前と同等っていうのは無理かもしれない。でも、ちゃんと動けるよ。リハビリ入院した子たちを見てきた私が保証する』
手を伸ばした彼女の髪は、傷んでいるはずなのに、さらさらと風に靡く姿が美しかった。
『もう少し、頑張ってみよう。あなたが、もう1度走れるように!!』
去っていった彼女は、たった2回会っただけなのに、俺の心に住み着きやがった。
こんなに思い通りにいかないのは初めてで、俺は困惑していた。
でも、本当はこの感情の意味を知っている。
俺と彼女に残されている時間はあと5日。
俺は彼女に、
真っ直ぐに生きようとする彼女に、
ーーー恋をしている。
俺の世界はどこまでも残酷だ。
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