4 / 15
2日目、私は聞いてみたい!!
しおりを挟む▫︎◇▫︎
「ーーーということで、いろいろ聞いてみたいな。君のこと!!」
「いや、なんでだよっ、」
思ってたよりもキレのいいツッコミが返ってきて、にっこり笑った私は満足に頷く。
私はこれが欲しかった………!!
「だって、聞かないことには対処できないもん。君、なんで死にたいの?」
「なんでお前なんかに………」
「いいじゃん、いいじゃん。吐き出しちゃいなよ」
私はにっこり笑って、昨日よりもまた体調が良くなった身体を動かして、彼の肩に自分の腕を乗せる。
「だって私、どのみち1週間後には死んじゃうんだし。何か言っても、ちゃーんと墓まで持ってけるよ?」
ほらほら行っちゃいなよっ!というと、奏馬くんはぐっと顔を顰めた後に、諦めたように溜め息をついた。
「これ、言うまで離さない気だよな?」
「ん?そうだよ?なんか文句ある?」
首を傾げると、彼は大きな溜め息をもう1度ついてから、くちびるを湿らせた。
「膝壊したから」
「ん?」
いまいち意味が分からなくて、私は首を傾げる。
「俺、サッカー選手なの」
「おぉっ!すごいね」
「んで、高校最後の1番大きな大会目前に膝壊した」
淡々という彼の横顔には、寂しさが浮かんでいる。悔しさや苦しみでもない、ただただ沈むように深い寂寥。
「もう、大会出られないの?」
「1回壊したら終了なんだよ。身体っていうのは」
「それは身をもってよ~く知ってるかな」
私の身体は生まれつき悪くて、弱くて、そして、治ったことがない。
でも、だからこそ、私は思う。
「それを言い訳に挑戦しないのってなんか違うんじゃない?」
「は?」
私は彼の前に座り直して、じっと彼の瞳を見つめる。
光を写していないかのように暗い瞳は、感情を置き去りにしてしまっている。こういう場所に、死と隣り合わせな場所に住んでいるからこそ分かる。
奏馬くんは、全てを諦めてしまっていると。
「私たち不治の病を持ってる人ってさ、絶対最後まで諦めないんだよね。だって、諦めるまでもないんだもん。そもそもできないの」
目を瞑れば、私ができないこと、できなくなったことが沢山思い浮かぶ。
くらくらと周りだした世界は、私の嫌いなもので溢れている。
「お勉強、中学の分で精一杯だったんだ。椅子にね、座れなくなっちゃったの。読書、本を捲れなくなったんだ。運動、歩けなくなったんだ。ちょっと歩いただけで転んで、起き上がれなくなる。動きたいって願っても、できないんだよ。諦めないって言う次元じゃなくてお医者さまに禁止されちゃうの」
空を見上げると、私は乾いた笑いをこぼす。
もう1度彼を見つめると、びっくりするぐらいに整った顔をした奏馬くんは無表情だった。真剣で真面目な彼は、考え込んでいるようだ。
「だからね、私はあなたは羨ましい」
「………………」
「動けるあなたが、望めばできるあなたが、………私は羨ましい」
私は真っ直ぐと彼を見つめて、にっこり笑う。
「今、リハビリ入院なんでしょ?」
「まあ、うん」
歯切れ悪く頷いた彼は、多分リハビリをサボっているのだろう。
「リハビリが終わったら、身体はちゃんと動くよ。怪我の前と同等っていうのは無理かもしれない。でも、ちゃんと動けるよ。リハビリ入院した子たちを見てきた私が保証する」
私は彼に手を伸ばす。
「もう少し、頑張ってみよう。あなたが、もう1度走れるように!!」
彼は驚いたように目を見開いて、そして破顔した。
ーーー私の余命はあと5日。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る
通りすがりの冒険者
ライト文芸
高校2年の安藤次郎は不良たちにからまれ、逃げ出した先の教会でフランチェスカに出会う。
スペインからやってきた美少女はなんと、あのフランシスコ・ザビエルを先祖に持つ見習いシスター!?
ゲーマー&ロック好きのものぐさなフランチェスカが巻き起こす笑って泣けて、時にはラブコメあり、時には海外を舞台に大暴れ!
破天荒で型破りだけど人情味あふれる見習いシスターのドタバタコメディー!
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
水縞しま
ライト文芸
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる