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「………あなたは、」
「もうやめろ、リュシー」
わたしの声に被せるようにして、男性の大きな声が響いた。
その麗しい声に、焦った表情に、わたしは無表情に僅かに困惑を滲ませる。
「あら、もう来たのですか?兄さま。ダメでしょう?わたくしが壊す、」
「リュシーっ!!」
ぎゅっと王女殿下のことを抱きしめる王太子殿下に、わたしはぱちぱちと瞬きをした。
「………リュシーは僕の権限で離宮に閉じ込める。僕と数名の侍女のみが接することができるようにし、2度とこのような遊びをさせないようにする。………………だからっ、だから!!見逃してくれっ!!」
わたしに向かって必死になって頭を下げる王太子殿下の姿は、驚くほどに恐怖が滲んでいる。双子の妹を必死になって庇う姿はいっそのこと哀れで、わたしには意味が分からない。
「………元々問い詰めて法廷に投げ捨てる気もありませんでしたよ。わたしは真実を追い求めたいだけ。この瞳に真実を映したかっただけ」
すっと細めたシトリンの瞳がじゅっと熱を持ち、ふわふわとした高揚感に襲われる。
ふわっと頬が緩むのが感じる。
(あぁ、心地いい)
ワインを一気に煽ったわたしは、ワイングラスを机に置いて後ろに手を回す。
「わたしは真実を愛します。ですが、真実を暴くことは好みません」
ストロベリーを手に取っていじいじと触り、ぽいっと口の中に放り込む。
「だって意味がないでしょう。真実こそが美しいなんていう言葉はまやかし」
ぺろっと人差し指を舐めると、甘い甘いストロベリーの味がする。
「本当に美しいもの。それは『宝石』だけ」
わたしの脳には、この世にあるありとあらゆる宝石が詰め込まれている。
「この世の美しいものは全て嘘で固められている」
宝石も本当は美しいものなんかじゃない。
でも、切り出して、磨いて、デザインをすることによって美しくなる。
「わたしはその嘘こそが美しいと思っている」
わたしの瞳に、表情に、王太子殿下が怯える。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「もうやめろ、リュシー」
わたしの声に被せるようにして、男性の大きな声が響いた。
その麗しい声に、焦った表情に、わたしは無表情に僅かに困惑を滲ませる。
「あら、もう来たのですか?兄さま。ダメでしょう?わたくしが壊す、」
「リュシーっ!!」
ぎゅっと王女殿下のことを抱きしめる王太子殿下に、わたしはぱちぱちと瞬きをした。
「………リュシーは僕の権限で離宮に閉じ込める。僕と数名の侍女のみが接することができるようにし、2度とこのような遊びをさせないようにする。………………だからっ、だから!!見逃してくれっ!!」
わたしに向かって必死になって頭を下げる王太子殿下の姿は、驚くほどに恐怖が滲んでいる。双子の妹を必死になって庇う姿はいっそのこと哀れで、わたしには意味が分からない。
「………元々問い詰めて法廷に投げ捨てる気もありませんでしたよ。わたしは真実を追い求めたいだけ。この瞳に真実を映したかっただけ」
すっと細めたシトリンの瞳がじゅっと熱を持ち、ふわふわとした高揚感に襲われる。
ふわっと頬が緩むのが感じる。
(あぁ、心地いい)
ワインを一気に煽ったわたしは、ワイングラスを机に置いて後ろに手を回す。
「わたしは真実を愛します。ですが、真実を暴くことは好みません」
ストロベリーを手に取っていじいじと触り、ぽいっと口の中に放り込む。
「だって意味がないでしょう。真実こそが美しいなんていう言葉はまやかし」
ぺろっと人差し指を舐めると、甘い甘いストロベリーの味がする。
「本当に美しいもの。それは『宝石』だけ」
わたしの脳には、この世にあるありとあらゆる宝石が詰め込まれている。
「この世の美しいものは全て嘘で固められている」
宝石も本当は美しいものなんかじゃない。
でも、切り出して、磨いて、デザインをすることによって美しくなる。
「わたしはその嘘こそが美しいと思っている」
わたしの瞳に、表情に、王太子殿下が怯える。
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