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 ぷいっと横を向いてやったら、旦那さまは大きなため息を吐いた。

「溜め息ってこぼすと幸せを逃すらしいですよ」
「………誰のせいだと?」
「旦那さまのせいでは?」

 ぎゅうっと背伸びをしたわたしは、旦那さまの殺気に当てられて失禁しながら気絶している宰相さまのご子息さまに手を合わせてから、何の躊躇いもなく執務室を漁り始める。

「おいっ!」

 焦ったような表情で止めに入る旦那さまににこっと笑ったわたしは、片手で首を摩りながらもう片方の手で執務机の1段目の棚に見つけた二十底をぱかっと開けた。

「あらあらまあまあ、出てくる出てくる」

 わたしの手の中に握られているのは、ここ最近宰相さまが冷戦中であった隣国と貿易をしていた証。
 うん。間違いなく失脚ものね。

「それじゃあ旦那さま、ここにはもう用事はございませんし、お暇いたしましょうか。

 くるっと振り返って笑いかけた瞬間、わたしの視界がぐにゃりと歪んだ。

 ———落ちる………!!

 ぎゅっと瞳を閉じた瞬間にわたしの身体を包んだのは、わたしよりもずっとずっと大きな体躯。

 ………あとは任せます。

 自分の意識を保つという行為すらも不可能に感じたわたしは、ふわっと意識を手放した。先程まで緊張によってねっとりと汗をかいていた身体が、凍えるくらいに寒かった。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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