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 首筋を動いた指はわたしの首を包み込むように動きを変える。
 優しく段々と閉められる指のせいで、わたしの息は止められる。どんどん息が吸えなくなって、苦しくなって、視界が歪んで、乾いたと息が溢れて、男の顔に愉悦が覗く。

「かはっ、」

 口の端からシトシトとこぼれる唾液はメイド服を汚し、わたしの身体は宙に浮く。

「あぁ………、やっぱり。君の泣き顔は唆るねぇ」
「っ、こんぉ、………どへん、ぁいあろう、がっ———!!」

 もう隠す必要もない。相手が牙を向いたのだから。
 もう従順である必要はない。わたしは殺されかけているのだから。

 霞む視界、痛む喉、ひりつく全身。
 わたしの身体は着実に終わりの瞬間を待ち侘びている。

 なんで、こんな時に浮かぶ顔があのデマントイドガーネットの瞳なのかなぁ。

 憎いはずだった。
 大嫌いなはずだった。
 わたしの人生はあいつのせいで壊れた。

 そのはずなのに、あいつがわたしに寄越した言葉が、態度が、頭から離れない。

『俺は前線に出てバリバリ働くお前は、純粋にカッコいいと思ったぞ』

 働くわたしを見て、多くの人はわたしに後ろ指を指した。

『俺はそんな働く女だったから、お前に契約婚を持ち込んだんだ』

 働くわたしを見て、みんなわたしを結婚相手から外した。

『働くという行為に忌避感のない女は素敵だと思う』

 働くわたしを見て、貴族女性はわたしに忌避感を抱いた。

『そもそも、働くという行為に男女という壁は必要ない』

 働くわたしを見て、多くの男は女だからという理由でわたしに仕事をくれなかった。

『それに、仕事内容によっては女性の方が優れていることも多々あるんだ』

 働くわたしを見て、女らしさによってできない仕事を見つけるたびに、女だからできなんだと馬鹿にされた。事実でも、………悔しかった。わたしは望んで女に生まれたわけじゃないのに。

『『女が働くな』なんていう考え方は古い』

 働くわたしを見て、みんな口を揃えて言った。「女が働くな」って。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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