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 わたしと旦那さまはゆったりと、それでいて堂々とした足取りでウーデラハイト公爵の方に向かう。

 にしても、

「旦那さまはイーデンハイト公爵夫妻と仲が大変よろしいのですね」
「あぁ。魔法学院時代の同級生だからな。公の場でなければ名を呼び、酒を交わすぐらいには仲が良い。ちなみに次に会うウーデラ公とは嵐が吹き荒むと言われるほどに仲が悪い。ご子息とは馬が合うのだがな」
「あー、あの老害さんは頭が硬いお馬鹿さんですからね。まあ、合理主義者の旦那さまとは犬猿でしょう」
「そういうわけだ」
「成る程」

 しがない男爵令嬢でありながら高位貴族の裏事情にどんどん詳しくなっていく自分に身震いをしていると、渋い黄色の衣装に身を包んだ老夫婦に道を塞がれた。

 相変わらず奥さまの首に輝くマリガーネットが美しい。
 ゴールデンライムのようなフレッシュで鮮やかなイエローグリーンから、品のある落ち着いたイエローへと移り変わる魅惑的な宝石は、決して人工的には作れないであろう色彩だ。

 ウーデラハイト公爵家は一応実家のアイリーン男爵家の上の一族のいうこともあって、他の一族よりも顔合わせの機会が多かったが、毎度嫌味を言われた思い出しかない。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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