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「はぁー、」

 ガシガシと頭を掻く音と共に、頭上にため息が降ってくる。
 わたしが悪いわたしが悪いと自分自身に言い聞かせていなかったら殴りかかっていた気がする。
 たとえどんなに態度が悪いとしても、今悪いのはわたしの方だ。怒る権利も文句を言う権利もわたしには存在していない。

「………1ヶ月後に王宮で行われる舞踏会に招待された。準備しておけ」
「はい?………あの、もう1度お願いします」
「チッ、………準備しておけ」
「その前です」
「舞踏会に招待された」
「ぶとーかい」
「?」
「武道会」
「舞踏会だ」
「………」

 わたしは自分の頭から血の気がさぁっと引いていくのを感じながら、にへらっと笑った。

「わ、わたし、」

 情けなく震える声と涙目に、旦那さまが若干引いた顔をしている気がするが、そんなもの気にする余裕すらない。

「踊れませええええぇぇぇぇぇん!!」

 びゃあああぁぁぁ!!っと泣き出さんばかりに叫んだわたしに、旦那さまがぽかんとした表情をしたが、次の瞬間またもやピキピキと額に青筋を立てた。

 ふむふむ、そんなに怒ってたら寿命縮みますよ~なんちゃって。

 というか、そんなこと言ってる場合じゃないくらいヤバい!ヤバいヤバい!!ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!

「貴様、それでも貴族の令嬢か?」

 美形の怒り顔って本当に怖いですよねぇ。
 もう現実逃避の材料すら少なくなってきた気がする。

「………一応男爵令嬢です」

 ぷるぷると震える身体を抱き込めながら返事をすると、旦那さまは呆れたように大きなため息を吐いて、わたしの頭に一撃を突っ込んだ。

「っつぅあ!!」

 見事なチョップなことでっ!!
 ていうか、女の子殴るって酷くない!?

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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