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世界最大の商会ルカの末っ子

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「で?あの赤女はどうなりそうなの?」
「赤女って、グレン殿………、………………スカーレット殿下なら国王陛下に縋っていたよ。国王陛下はどうにかしようとしていたけれど、スカーレット殿下を傀儡にして利を得ようとしていた貴族たちにすら見放されたスカーレット殿下は、立ち直ることすら不可能だろうね」
「はっ、当然の報いだ」

 グレンのきらきらした笑みに、オリヴァーは背筋が凍りつくのを感じながらも、未だにグレンの肩を濡らし続けているシャーリーに最大の敬意をこめて、膝を床につき、頭を垂れた。

「ルカ・シャーリーさま。此度のご支援、誠に感謝しております。この御恩は必ずや」
「………………わ、我がルカ商会との、ずびっ、お取り引きを早急にお取り付けいただけると、ずびっ、嬉しいですわ」
「あぁ、分かった。明日にでも書面にしよう」
「ずびっ、よろしくお願いいたします」

 世界最大級の商会を営むルカ家の息女らしい言葉に、オリヴァーは厳かに頷く。

 ルカ商会を敵に回すことは即ち、世界中の商会を敵に回すことに等しい。
 よって、商会の溺愛されている末娘シャーリーの取る一挙手一投足大国の王並みの注目と責任が伴う。

 そんなシャーリーが、先程スカーレットの向かい「もう永遠に出会わないことを願っているわ」と言ったのだ。
 つまり、王太子であったスカーレットに向かい、世界中全ての商いの権限を持っていると言っても過言ではないルカ家が、「2度と表舞台に出てくるな」と言ったのだ。

「まぁ、ご安心ください。グレン殿、シャーリーさま。シャーリーさまがああ言ってしまった時点で、我が国の王侯貴族たちには抗う術などないという訳ですよ」

 肩をすくめたオリヴァーに、シャーリーが「うゃぁぁぁああああ!!」という変な奇声を上げながら、グレンの肩に額を打ち付けた。

「恥ずかしいっ!恥ずかしすぎるわっ!!私如きが何さまっていうお話よねっ!?あぁ!どうしましょう!!どうしましょうっ!!」
「えぇーっと………、」
「あぁ、気にしないで、オリヴァー殿。シャーリーはシャイなだけだから。今更ながらに、自分の格好つけた姿が恥ずかしくて死にそうなんだよ。ほんっと、可愛いよねぇ」

 ぎゅうぅーっとシャーリーの身体を抱きしめたグレンは、にこりと微笑む。
 それからしばらく、色気の全くない話し合いを行なった2組のカップルは、各々の婚約者を連れ自らの部屋に帰って行き、婚約者をベタベタに甘やかしたとかなんとか———。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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