1 / 9
真実の愛と婚約破棄
しおりを挟む
▫︎◇▫︎
「オリヴァー・スチュアート!わたくし、真実の愛に目覚めてしまいましたの!!よって今この瞬間をもって、婚約を破棄させていただきますわ」
ドリルを描く美しい太陽の巻き髪に、釣り上がった真っ赤な瞳。
大輪の赤薔薇のようなドレスを身に纏った、この国の第1王女にして王太子であるスカーレット・ロベロンの言葉に、秋の収穫を祝う舞踏会の最終日を楽しんでいた貴族たちは、涼しげな仮面を被ることも忘れて唖然とした。
「………それは、陛下もご存じのことなのですか?」
ふるふると身体を震わせる、ミルクティーブラウンの癖っ毛に若葉色の瞳を持つ柔和な美青年である公爵令息オリヴァー・スチュアートは、じっとスカーレットの表情を見つめる。
「えぇ!昨日、わたくしはとある殿方と運命の出会いを果たしましたわ。白銀のさらさらと靡くまっすぐなお髪、宝石の王さまであるダイヤモンドすらも嫉妬してしまいそうなぐらいに美しく輝く、切れ長のアメジストの瞳。………どれをとっても美しい殿方に、暴漢に襲われそうになったところを助けていただいたのです。これを運命と、真実の愛と呼ばずしてなんと呼ぶのです!!」
うっとりと頬に手を当てたスカーレットは、その青年が流れるような動きで剣を扱い、相手に一切の怪我を負わせることなく全ての暴漢をやっつけてしまった情景を思い出し、ほうっと吐息をこぼす。
「あぁ、わたくしの愛おしいお方。ルカ・シャーリーさま………、」
貴族たちは唖然としていた顔から表情を落とし、口をポカーンと開け放った。
———隣国の皇太子殿下の婚約者の“ご令嬢”に恋するバカがどこにいるッ!!
おそらくこの会場にいる全ての人間が思っているはずだ。
「誰と誰が真実の愛に目覚めたって?」
チェロの演奏のように軽やかで美しい声が、パーティー会場にはっきりと響く。
柔らかな黒髪を丁寧に撫で付け、銀刺繍が美しい軍服を身に纏った青年隣国の皇太子ライノルト・グレンは、青筋を立てた顔で海のようなサファイアの瞳を細めてにっこりと微笑んだ。
そして、その腕にはほっそりとした美女の腕が優しく絡まっている。
後毛さえも計算され尽くされたかのように完璧にアップヘアのシニヨンにされた美しい銀髪、ダイヤモンドすらも嫉妬していしまいそうなほどに美しく輝くアメジストの瞳。
儚げで中性的な美貌を持つ美女は、首から手首の先までを覆う黒いレースと鮮やかな青が特徴的なマーメイドラインのドレスを捌きながら、近寄り難い印象を与える、気高い表情を浮かべていた。
*************************
この作品を見つけてくださり、そして読んでくださり本当にありがとうございます🐈🐈🐈
「オリヴァー・スチュアート!わたくし、真実の愛に目覚めてしまいましたの!!よって今この瞬間をもって、婚約を破棄させていただきますわ」
ドリルを描く美しい太陽の巻き髪に、釣り上がった真っ赤な瞳。
大輪の赤薔薇のようなドレスを身に纏った、この国の第1王女にして王太子であるスカーレット・ロベロンの言葉に、秋の収穫を祝う舞踏会の最終日を楽しんでいた貴族たちは、涼しげな仮面を被ることも忘れて唖然とした。
「………それは、陛下もご存じのことなのですか?」
ふるふると身体を震わせる、ミルクティーブラウンの癖っ毛に若葉色の瞳を持つ柔和な美青年である公爵令息オリヴァー・スチュアートは、じっとスカーレットの表情を見つめる。
「えぇ!昨日、わたくしはとある殿方と運命の出会いを果たしましたわ。白銀のさらさらと靡くまっすぐなお髪、宝石の王さまであるダイヤモンドすらも嫉妬してしまいそうなぐらいに美しく輝く、切れ長のアメジストの瞳。………どれをとっても美しい殿方に、暴漢に襲われそうになったところを助けていただいたのです。これを運命と、真実の愛と呼ばずしてなんと呼ぶのです!!」
うっとりと頬に手を当てたスカーレットは、その青年が流れるような動きで剣を扱い、相手に一切の怪我を負わせることなく全ての暴漢をやっつけてしまった情景を思い出し、ほうっと吐息をこぼす。
「あぁ、わたくしの愛おしいお方。ルカ・シャーリーさま………、」
貴族たちは唖然としていた顔から表情を落とし、口をポカーンと開け放った。
———隣国の皇太子殿下の婚約者の“ご令嬢”に恋するバカがどこにいるッ!!
おそらくこの会場にいる全ての人間が思っているはずだ。
「誰と誰が真実の愛に目覚めたって?」
チェロの演奏のように軽やかで美しい声が、パーティー会場にはっきりと響く。
柔らかな黒髪を丁寧に撫で付け、銀刺繍が美しい軍服を身に纏った青年隣国の皇太子ライノルト・グレンは、青筋を立てた顔で海のようなサファイアの瞳を細めてにっこりと微笑んだ。
そして、その腕にはほっそりとした美女の腕が優しく絡まっている。
後毛さえも計算され尽くされたかのように完璧にアップヘアのシニヨンにされた美しい銀髪、ダイヤモンドすらも嫉妬していしまいそうなほどに美しく輝くアメジストの瞳。
儚げで中性的な美貌を持つ美女は、首から手首の先までを覆う黒いレースと鮮やかな青が特徴的なマーメイドラインのドレスを捌きながら、近寄り難い印象を与える、気高い表情を浮かべていた。
*************************
この作品を見つけてくださり、そして読んでくださり本当にありがとうございます🐈🐈🐈
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
シナリオではヒロインと第一王子が引っ付くことになっているので、脇役の私はーー。
ちょこ
恋愛
婚約者はヒロインさんであるアリスを溺愛しているようです。
そもそもなぜゲームの悪役令嬢である私を婚約破棄したかというと、その原因はヒロインさんにあるようです。
詳しくは知りませんが、殿下たちの会話を盗み聞きした結果、そのように解釈できました。
では私がヒロインさんへ嫌がらせをしなければいいのではないでしょうか? ですが、彼女は事あるごとに私に噛みついてきています。
出会いがしらに「ちょっと顔がいいからって調子に乗るな」と怒鳴ったり、私への悪口を書いた紙をばら撒いていたりします。
当然ながらすべて回収、処分しております。
しかも彼女は自分が嫌がらせを受けていると吹聴して回っているようで、私への悪評はとどまるところを知りません。
まったく……困ったものですわ。
「アリス様っ」
私が登校していると、ヒロインさんが駆け寄ってきます。
「おはようございます」と私は挨拶をしましたが、彼女は私に恨みがましい視線を向けます。
「何の用ですか?」
「あんたって本当に性格悪いのね」
「意味が分かりませんわ」
何を根拠に私が性格が悪いと言っているのでしょうか。
「あんた、殿下たちに色目を使っているって本当なの?」
「色目も何も、私は王太子妃を目指しています。王太子殿下と親しくなるのは当然のことですわ」
「そんなものは愛じゃないわ! 男の愛っていうのはね、もっと情熱的なものなのよ!」
彼女の言葉に対して私は心の底から思います。
……何を言っているのでしょう?
「それはあなたの妄想でしょう?」
「違うわ! 本当はあんただって分かっているんでしょ!? 好きな人に振り向いて欲しくて意地悪をする。それが女の子なの! それを愛っていうのよ!」
「違いますわ」
「っ……!」
私は彼女を見つめます。
「あなたは人を愛するという言葉の意味をはき違えていますわ」
「……違うもん……あたしは間違ってないもん……」
ヒロインさんは涙を流し、走り去っていきました。
まったく……面倒な人だこと。
そんな面倒な人とは反対に、もう一人の攻略対象であるフレッド殿下は私にとても優しくしてくれます。
今日も学園への通学路を歩いていると、フレッド殿下が私を見つけて駆け寄ってきます。
「おはようアリス」
「おはようございます殿下」
フレッド殿下は私に手を伸ばします。
「学園までエスコートするよ」
「ありがとうございますわ」
私は彼の手を取り歩き出します。
こんな普通の女の子の日常を疑似体験できるなんて夢にも思いませんでしたわ。
このままずっと続けばいいのですが……どうやらそうはいかないみたいですわ。
私はある女子生徒を見ました。
彼女は私と目が合うと、逃げるように走り去ってしまいました。
転生ヒロインに現地悪役令嬢が現実を見せるだけ
下菊みこと
恋愛
正論パンチでヒロイン(笑)を改心させるお話。
ざまぁあり、多分ヒロインは改心し始めたはず、取り巻きはヒロインがなんとかして欲しい。
ご都合主義のSS、とりあえずハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
【完結】悪役令嬢に転生したけど『相手の悪意が分かる』から死亡エンドは迎えない
七星点灯
恋愛
絶対にハッピーエンドを迎えたい!
かつて心理学者だった私は、気がついたら悪役令嬢に転生していた。
『相手の嘘』に気付けるという前世の記憶を駆使して、張り巡らされる死亡フラグをくぐり抜けるが......
どうやら私は恋愛がド下手らしい。
*この作品は小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる