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3 ばいばい、アート
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「ねぇ、俺も連れて行ってよ」
「ごめんね」
モカの言葉に、流されるしかなかったアフォガートはくしゃっと顔を歪める。
「俺、家事とか頑張るから、お仕事も………、どうにかなると思うから、だから………!」
「アート、家事なんてできないでしょう?お仕事も書類仕事ぐらいしかできないのに、駆け落ちできるような農村でお仕事なんてできるの?」
「………………、」
「ね?無理でしょう。私たちみたいな弱虫には、流されて生きるしか道なんてないの」
しっとりゆっくり話す彼女の言葉にくちびるを震わせた彼は、諦めたように微笑む。
「そう、だね。ごめん、言ってみただけ」
「うん。わかってる」
さあっと初夏の優しい風が2人の間を抜ける。
「幸せになってね、アート」
彼はふるふると首を振る。
「俺は幸せになれないから、その代わりモカが幸せになって」
「うん。わかった」
「………俺の葬式には来て欲しいな」
「難しいかも」
「じゃあ、墓参り」
「いいよ」
小さく囁き合った2人は両手を恋人繋ぎにし、こつんと額を合わせる。
「ばいばい、アート」
「………ん、」
唯一の心の拠り所との別れは唐突に、そしてあっという間にやってきて、全てを掻っ攫って行った。
馬車に乗り込み、車窓から見える流れゆく長閑な景色に一筋の涙を流したモカは、窓に頭を預けて眠るのだった———。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「ごめんね」
モカの言葉に、流されるしかなかったアフォガートはくしゃっと顔を歪める。
「俺、家事とか頑張るから、お仕事も………、どうにかなると思うから、だから………!」
「アート、家事なんてできないでしょう?お仕事も書類仕事ぐらいしかできないのに、駆け落ちできるような農村でお仕事なんてできるの?」
「………………、」
「ね?無理でしょう。私たちみたいな弱虫には、流されて生きるしか道なんてないの」
しっとりゆっくり話す彼女の言葉にくちびるを震わせた彼は、諦めたように微笑む。
「そう、だね。ごめん、言ってみただけ」
「うん。わかってる」
さあっと初夏の優しい風が2人の間を抜ける。
「幸せになってね、アート」
彼はふるふると首を振る。
「俺は幸せになれないから、その代わりモカが幸せになって」
「うん。わかった」
「………俺の葬式には来て欲しいな」
「難しいかも」
「じゃあ、墓参り」
「いいよ」
小さく囁き合った2人は両手を恋人繋ぎにし、こつんと額を合わせる。
「ばいばい、アート」
「………ん、」
唯一の心の拠り所との別れは唐突に、そしてあっという間にやってきて、全てを掻っ攫って行った。
馬車に乗り込み、車窓から見える流れゆく長閑な景色に一筋の涙を流したモカは、窓に頭を預けて眠るのだった———。
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