ほたる祭りと2人の怪奇

飴之ゆう

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特別章:ほたる祭り

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ほたる童謡公園の入場料は、環境保全の為の支援金五百円(中学生以下無料)・団体(十五名以上)四百円だ。ゲンジホタルの数は四千~五千匹、また多い時で一万匹以上もの沢山のホタルが見られる。二十時~二十一時くらいが狙い目とされていた。

入場して直ぐ、沢山の淡い光が舞っている。公園内は真っ暗で淡い光がとても映える。
柵から少し身を乗り出した。

「綺麗だね」
「どれくらい飛んでるんだろうな……」

まるで宇宙にいるような感覚になる程だ。宵闇を漂う、ほんわりとしたあたたかなホタルの光。その姿は幻想的で、言葉に出来ないほど美しく、見入ってしまう。



「この光景を1番分かってたんだろうな、昊は。だから最期アイツは笑顔だったんだ」

その言葉は螢の心に響いた。彼は一体何故笑顔だったのか、良く分からなかった。しかし信乃が言った言葉でやっと、胸のつかえが取れた気がする。

「それに、言ってただろ?嫌いになれなかったって。俺達は俺達にしか出来ない事がある。いつまでも、暗い顔でいたら、昊が可哀想だろ」

信乃は螢に笑いかけた。当たりは暗いがそれでも眩しいと感じる笑顔に螢は目を細める。

「……今更だけど、信乃ありがとう」
「急だな」
「うん。でもあの時、信乃がいてくれなければ、私はきっと全部諦めてた。……何も思い出すこともしないで。今もそう」

気にしなくて良いと彼は笑う。しかし、お礼くらい言わせろと、彼女は言った。

「あと……私、信乃と一緒に来れて良かったっ……! 私ここが好きだよ……あの時と同じくらい凄く綺麗で……」

堪えきれなくなり嗚咽が漏れる。信乃は鞄に入れてあるハンカチを取り出すと螢に渡した。この景色を守るために自分達に出来ることは限られているが、その限られた中で精一杯守って行きたい。

「そっか、だから水無月様は消え行く妖怪達のために、あのヒトなりに、幽明ヶ原を創ったんだね」
「ああ、似てるな」

螢は頷いた。やり方は違えど、守りたい気持ちは同じだった。

「来年もこの景色を見たい。だから、小さな事でも俺達が出来ることをやっていこう」
「うん。そう、だね」

同じ空の下、清涼と幻想が感じられる中約束する。また、来年も共にここに来るために。
もう、逢魔時になっても、幽明ヶ原へ訪れる事は二度と無いだろう。だがそれで良いのかもしれない。

二人は手を繋ぐと、無数に舞う光へ足を進めた。これから夏が訪れ、四季は止まることなく巡って行く。
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