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3章 続く日常と続かない平穏

18話 説明しますって…

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●18話 

ガタガタと揺れる馬車。わたくしがさっき飛んだ時に見た景色を頼りに屋敷の方に案内する。
「話の分かる大人がいてよかったわ。わたくし達の行動についてきてくれるオーリがいて助かったわ、ありがとう。」
道中、何気なく感謝を述べる。
「俺をまぜるな。主に変な行動してるのはシアだろ。」
「あはは…もう慣れたというか、ね。確かに、イリスはエル様の行動に振り回されてるだけな気もするな。」
「まったくだ。もっとちゃんと教育しておけよな、オーリ。」
「失礼ねぇ。」
誘拐犯が近くに転がっているのにのんびりと会話をしながら屋敷に向かう。

ガタン、という音がして馬車が停車する。貴族の馬車と違って結構ぼろぼろの幌馬車なので、衝撃も少し大きい。まぁ雲を座布団がわりにしてるからわたくし達にはあまり被害はないのだけれど。
「さ、つきましたよ。セバスさんを呼んでくるのでここで待っててくださいね。」
玄関前に馬車をとめ、先に中に入っていくオーリ。
わたくし達は馬車から降り、もう汚れることはないだろう、とクリーンの魔法を自身にかけながら待つ。
「お待たせいたしました、お嬢様、イリス様。
旦那様ももうすぐ帰ってくるとのことです。」
しばらくすると、オーリがセバスさんを連れて玄関まででてくる。
「そう…父様帰ってくるのね。めんどくさいわねぇ…。」
「シア、本音がもれてるぞ。」
「エル様、ちゃんと全部説明すると言ったんですからちゃんと話してもらいますよ。」
「分かってますわ。何度もするのは時間の無駄だし、父様が帰って来てからでいいわよね。」
言い終わると同時くらい、ちょうど1台の馬車がこちらに来るのが見えた。
「ちょうどいいみたいですね。」
静かにとまった馬車から慌ただしくでてくる父様。
「エル!?何かあったって…。」
「落ち着いて下さい父様。今からお話いたしますわ。」
はぁ、とため息をつきながら父様をたしなめる。
「エル様、リュド様も心配してるんですよ。ほとんど何も説明せずに俺を連れ出したんですから。」
「わ、分かってるわよ…。」
オーリにとがめられ、思わずぷいっとそっぽを向いてしまう。
「まぁシアらしいだろ。
それで、説明するんだろ。ここでするのか?」
イリスくんが助け船を出してくれたので、されに乗っかり説明をすることにする。
「そうね、まずこっち。」
わたくし達が乗ってきた幌馬車の荷台の幕をあげる。そこには未だ気絶した誘拐犯が積まれている。
「えー、何から話せばいいかしら。まずこの人達だけど、わたくしとイリスくんを誘拐した人達ね。」
「誘拐!?」
「ええ。イリスくんと街を歩いてる時、いきなり路地裏に引っ張りこまれて抵抗する暇なく頭を殴られて連れていかれてしまったわ。」
淡々と分かる範囲で説明していく。
「目が覚めたら知らない部屋で……がんばって出てきたわ。」
色々とはしょったけど伝わるだろう。うん。伝われ。
「それで…」
「いやいやいや、それだけか?」
オーリが思わずと言った感じで素のまま突っ込んでくる。
「何よ。がんばったのよ。それともこう言えばいい?イリスくんと協力してこいつら全員を伸して出てきたわ。」
「協力って…。おいリュド、オーリ。こいつ教育どうなってるんだよ。初め何て言ったか分かるか?俺を先に逃がしてから自分1人で倒そうとしてたんだぞ。」
思い出したかのように苦言を呈する。
「エル様…?俺言いましたよね?ちゃんと頼って1人でどうにかしようとするなって。」
「あ、あの時はそれが最善だと思ったのよ!いいじゃない、結果的に協力したもの!」
「そういうことじゃないんですよ!全く…。後でまたそれについてお話しましょうね。」
にっこりと笑ったオーリに思わず頷いてしまう。だって目が笑ってなかった。
「まぁそちらは後で話すとして、それで?」
わたくしの反応に満足したように先を促す。

経緯を粗方話終え、あとはここじゃ何だから、と家の警備の人達に誘拐犯達を預かってもらい屋敷に入る。
「えー、後は…魔法のことでしたっけ…。」
これが1番めんどくさい。半分くらい感覚でやってるし、イリスくんに教える時も苦労したものだ。
「見てもらいながらの方が良いかもな。」
「そうですわね。」
イリスくんのアドバイス通り、見てもらおうと立ち上がる。テーブルも椅子もない少し空いた場所にいく。
「まずオーリを迎えに行ったものね。
自分に軽量化の魔法をかけます。軽くなれ!って感じですわね。ここは感覚になりますわ。そして飛行フライですわね。自分を浮かせて飛び回るイメージですわ。」
説明しながら魔法をかけていく。
「そしてミラー。これは、まぁ見れば分かるでしょう。迷彩の役割を果たします。」
全ての魔法を解き、次の説明にうつる。
「次に馬車で使ったものですわね。これは本当に感覚ですわ。固めた綿、かしら。雲って乗れたらいいな、と思ったことありませんか?その発想からね。もふもふで気持ちいいでしょう?」
こんなもんかしら、と見ていた人達を振り返れば、呆気にとられたような顔をしていた。
「エル、それを知っているのは?」
いち早く立ち直った父様が訪ねてくる。
「わたくしとイリスくん、それからブランシュだけですわ。使えるのもわたくしとイリスくんだけですわね。」
「そうか…。それなら特許をとって…。」
「父様?」
「エル様、魔法に特許があるのはお教えしましたよね?つまりそういうことです。」
魔法にも特許がある、のは知っている。日本の特許と同じ感じだ。
「わたくしがやると騒ぎになりそうだから嫌ですわ。オーリでも父様でもイリスくんでもいいのでやってくださいまし。」
めんどくさいのも相まって全て丸投げだ。小遣い稼ぎにはなるかもしれないが手続きとかもめんどくさいしね。
「オーリ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
父様がオーリに一言。オーリの功績にもなるしちょうどいいだろう。

そして色々あったお出かけは一応幕を閉じた。
そしてこれから少し、忙しくなりそうだった。



 
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