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2章 魔導院で働いてみましょう

15話 お願い

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『エリューシア、そなたに我の子を頼みたいのだ。』
…え?
『我はな、我の子に色んなものを見聞きしてほしいと思っているのだ。そなたなら、悪いようにはしないだろう。』
わたくしが混乱して何も言えずにいるのに気づかずに話をすすめるウィトラス様。
『それでな、これから生まれる我が子を預かってほしいのだ。』
「え、えーと…?ウィトラス様がこれから産む予定の子を預かってほしい、と。それがお願いで間違いありませんか?」
頭を整理するのも兼ねて一度口にだして確認する。
『うむ。どうだろうか?』
どうだろうかって言われても…。白翼狼って幻獣だよ?そんな簡単に預かれるもの?
『だめか?』
そんなシュンとした顔されたら断れじゃないか!!
「分かりました…。しかし、良いのですか?」
『おお!預かってくれるか!では数日後には生まれるだろうから連れてくる。』
わたくしの良いのかという質問はスルーされる。たぶん良いのだろう。わたくしが頷くと、一度帰ると言い、ウィトラス様は飛びたっていった。
後ろからオーリの呼び声が聞こえてくる。
「エル様!!?無事?」
「オーリ…。どうしましょう、わたくし…。」
後から後悔しても遅いのは分かっている。いや後悔は後からするから後悔なのか…。いやそうではなくてだなぁ。
「エル様?」
「はぁ…。とりあえず、わたくしは無事よ。他の人達は?」
予測もしていなかった乙女ゲームのミニイベントに出てくる白翼狼と会ってしまったことに加え、とんでもないお願いをうけてしまい、精神的につかれ説明するのもめんどくさかったので先に状況を聞く。
「…?こっちも、皆無事だよ。護衛の人達にはマシュー様を任せて俺がエル様の様子を見に戻ってきたんだけど、白翼狼がちょうど去っていくところだった、って感じかな。」
オーリ1人で来てくれたのはきっと彼なりの配慮だろう。
「そう、良かったわ。はぁ…一旦屋敷に戻りましょうか。父様は今日こちらにいたかしら。それても領土の本邸か魔導院だったかしら?」
何度も説明するのはめんどくさかったので父様への報告とオーリ達への説明を一緒にしてしまおうと思う。
「確かリュド様は今日魔導院だったと思うよ。」
「ならちょうどいいわね。あなたの説明も父様と一緒にまとめてするわ。」
「了解。マシュー様も心配してるだろうし早く戻ろうか。」
そこら辺に置いてあった荷物を手分けして持って屋敷の方に戻る。
「ねぇさ…姉様!!!姉様!!」
戻ると顔を涙でぬらしたマシューがとびついてくる。倒れそうになるのを何とかこらえ…きれずに後ろに倒れてしまう。
「あ!すみませっ!」
焦って起き上がるマシューの涙を拭い頭を撫でてやる。
「わたくしは大丈夫よ。落ち着きなさい。心配してくれたのよね、ありがとう。」
ぐすっと鼻をならしながら頷くマシューは、もう涙は流していなかった。
「エリューシア様、本当にお怪我はありませんか?」
護衛の人が念のためにと聞いてくる。この人達にも酷なことをしてしまったかもしれない。
「ええ、大丈夫よ。あなた達も、大丈夫かしら?それと、ごめんなさいね、仕事をとってしまって。」
「滅相もありません!エリューシア様がご無事なら私達はそれで良いのです。私達の心配まで、ありがとうございます。全員無事です。」
「それなら良かったわ。わたくしは父様が帰ってくるまで休ませて貰うわね。」
「了解いたしました!」
わたくしはマシューを立たせ、自分も立ち上がりスカートのほこりを簡単にはらうと部屋に戻る。部屋で軽くシャワーをあび、部屋着に着替えてからソファーに座る。
「お嬢様、紅茶をお持ちいたしました。」
侍女が紅茶と茶菓子を持ってきてくれたので、ありがたくいただき、本を広げる。
「下がっていいわよ。父様が帰ってきたら呼んでちょうだい。」
人払いをしてから考えにふける。
「なんで、こんな報告しにくいことが起こるのかしら…。下手に伊織の意識が入ってる分余計に悩んでしまうじゃない…。」
とりあえず、ウィトラス様の子供を預かることになったのは言わなきゃいけないわよね。護衛を先に帰したりウィトラス様の怪我を治したりしたことは言わなきゃいけないかしら…。
誤魔化し方を考えていると、いつの間にか夕方になったらしく、父様が帰宅したということを告げに侍女が来てしまった。
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