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4章 ついに始まる乙女ゲーム
8話 彼女と想い sideオリヴァー
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大変お待たせいたしました。
申し訳ありません。
詳しくは近況ボードをご覧ください。
─────────────────────
この気持ちに気づいたのはいつだっただろうか。
この気持ちを持ったのはいつだっただろうか。
妹のよう、と言い聞かせて
頑なに呼び方を変えなかったのは
きっと、ずっと前からあの子のことが
好きだったからなのだろう。
親愛でも、友愛でもなく、恋情として、
1人の、女の子として。
「レオルド先生!今時間いいですか?」
廊下を歩いていると、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのはベイナージ先生。
「どうかしましたか?」
ゆっくりと問いかける。ベイナージ先生は近くまで来て止まると、手に持っていたプリントを1枚、差し出してくる。
「あの、時間があればでいいんですけど、これをエリューシアさんに届けていただけませんか?」
「イルファスさんに、ですか?」
受け取ったプリントに書かれている文字をみると生徒会の今後の予定が書かれていた。
つい先日、エル様が生徒会にはいったのは知っている。…といっても本人から聞いたのではなく、全校集会ではじめて知らされたのだが。
私これから会議があって…と言っているベイナージ先生に作った笑顔をむける。
「分かりました、いいですよ。」
「ほんとですか?ありがとうございます」
エル様と話すきっかけができる、と内心喜んでしまった俺は悪くないはず。
最近避けられているのは分かっていた。
まともに会話らしい会話もできていない。
俺だけじゃなく、義弟のマシューや、イリス、フレディ殿下でさえも。
ではまた、とベイナージ先生と別れエル様を探す。
「オー...レオルド先生。」
キョロキョロしながら廊下を歩いていると、前から3人の男子生徒と女子生徒が歩いてくる。
「クライストくん、イルファスくん、フィストラルくん、それにダズフストさんも。どうかしましたか?」
カバンをもってこちらに歩いてくる4人に微笑むも、エル様がいないのが気になり、軽く首を傾げる。
「レオルド先生、姉さんを見かけませんでしたか?」
「イルファスさんを、ですか。私も彼女に用があったのですが…。」
あなた達と一緒だと思っていたので、と語尾をにごせば、苦笑がかえってくる。
「…エル、書き置き残してどっか行っちゃったんですよ。」
そのフレディ殿下の言葉に、マシューがかばんから小さなメモを取り出す。
「『用事があるので先に帰ってて下さい』ですか。」
「はい。帰ろうか迷ったんですけど…最近あいつ様子がおかしいから、気になって。」
「ああ、それならついでに様子をみてきますよ。
あなた達のことも言っておきましょう。
私も彼女に用事がありますから。
帰ってと言ったのに、とまた怒られてしまいますよ。」
冗談混じりにそう告げれば、しぶしぶといった感じに頷く彼ら。
「そう、ですね…。お願いします、レオルド先生。」
マシューの言葉に、静かに頷く。
「それではまた明日。」
「はい、さようならレオルド先生。」
彼らと別れ、再び歩きだす。
廊下を歩きながら何とはなしに外を見ると、見覚えのある銀髪が裏庭をふわりと横切るのが見えた。
「エル、様…?」
誰もいない廊下でポツリと呟く。
裏庭なんて滅多に使われない、人が少ない場所だ。庭とは名ばかりで、林のようになっている。
別棟にある生徒会室は裏庭に面しているが、教室棟との間に渡り廊下があり、さらに3階にあるため裏庭を通ることもない。
エル様に用事があるので、とりあえず追おうと裏庭への出口へ向かう。
エル様が向かった方に少し歩くと、別棟の壁のむこうから何やら複数人の声が聞こえてきた。
「エリューシア様、ご自分の立場をもう少し考えてみてはいかがです?」
「公爵令嬢で殿下の婚約者候補といいましても殿下とイリス様とマシュリッド様の3人も侍らせて、あまつさえ光の精霊様に愛されているリリアンネ様をいじめるだなんて、言語道断ですわ。」
「殿下方を自分の物だとでも思っていらっしゃるの?貴方にまとわりつかれて殿下方もきっと迷惑していますわ。」
「ご自分が邪魔をしていると気づいていまして?」
それは、すべてエル様を蔑むものだった。
最近の彼女の顔色をみて何も思わないのか、何も考えないのか。
事実なんて知りもしないくせに、一方的にエル様を貶めるような発言に、俺は思わず駆け出し飛び出そうとした。
しかし俺は、次の言葉でピタリと動きをとめてしまった。
「そんなこと、わたくしが一番分かっていましてよ。
この世界に、皆の幸せに、わたくしは、要らない。」
その声には、不自然なほど、感情がなかった。
申し訳ありません。
詳しくは近況ボードをご覧ください。
─────────────────────
この気持ちに気づいたのはいつだっただろうか。
この気持ちを持ったのはいつだっただろうか。
妹のよう、と言い聞かせて
頑なに呼び方を変えなかったのは
きっと、ずっと前からあの子のことが
好きだったからなのだろう。
親愛でも、友愛でもなく、恋情として、
1人の、女の子として。
「レオルド先生!今時間いいですか?」
廊下を歩いていると、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこにいたのはベイナージ先生。
「どうかしましたか?」
ゆっくりと問いかける。ベイナージ先生は近くまで来て止まると、手に持っていたプリントを1枚、差し出してくる。
「あの、時間があればでいいんですけど、これをエリューシアさんに届けていただけませんか?」
「イルファスさんに、ですか?」
受け取ったプリントに書かれている文字をみると生徒会の今後の予定が書かれていた。
つい先日、エル様が生徒会にはいったのは知っている。…といっても本人から聞いたのではなく、全校集会ではじめて知らされたのだが。
私これから会議があって…と言っているベイナージ先生に作った笑顔をむける。
「分かりました、いいですよ。」
「ほんとですか?ありがとうございます」
エル様と話すきっかけができる、と内心喜んでしまった俺は悪くないはず。
最近避けられているのは分かっていた。
まともに会話らしい会話もできていない。
俺だけじゃなく、義弟のマシューや、イリス、フレディ殿下でさえも。
ではまた、とベイナージ先生と別れエル様を探す。
「オー...レオルド先生。」
キョロキョロしながら廊下を歩いていると、前から3人の男子生徒と女子生徒が歩いてくる。
「クライストくん、イルファスくん、フィストラルくん、それにダズフストさんも。どうかしましたか?」
カバンをもってこちらに歩いてくる4人に微笑むも、エル様がいないのが気になり、軽く首を傾げる。
「レオルド先生、姉さんを見かけませんでしたか?」
「イルファスさんを、ですか。私も彼女に用があったのですが…。」
あなた達と一緒だと思っていたので、と語尾をにごせば、苦笑がかえってくる。
「…エル、書き置き残してどっか行っちゃったんですよ。」
そのフレディ殿下の言葉に、マシューがかばんから小さなメモを取り出す。
「『用事があるので先に帰ってて下さい』ですか。」
「はい。帰ろうか迷ったんですけど…最近あいつ様子がおかしいから、気になって。」
「ああ、それならついでに様子をみてきますよ。
あなた達のことも言っておきましょう。
私も彼女に用事がありますから。
帰ってと言ったのに、とまた怒られてしまいますよ。」
冗談混じりにそう告げれば、しぶしぶといった感じに頷く彼ら。
「そう、ですね…。お願いします、レオルド先生。」
マシューの言葉に、静かに頷く。
「それではまた明日。」
「はい、さようならレオルド先生。」
彼らと別れ、再び歩きだす。
廊下を歩きながら何とはなしに外を見ると、見覚えのある銀髪が裏庭をふわりと横切るのが見えた。
「エル、様…?」
誰もいない廊下でポツリと呟く。
裏庭なんて滅多に使われない、人が少ない場所だ。庭とは名ばかりで、林のようになっている。
別棟にある生徒会室は裏庭に面しているが、教室棟との間に渡り廊下があり、さらに3階にあるため裏庭を通ることもない。
エル様に用事があるので、とりあえず追おうと裏庭への出口へ向かう。
エル様が向かった方に少し歩くと、別棟の壁のむこうから何やら複数人の声が聞こえてきた。
「エリューシア様、ご自分の立場をもう少し考えてみてはいかがです?」
「公爵令嬢で殿下の婚約者候補といいましても殿下とイリス様とマシュリッド様の3人も侍らせて、あまつさえ光の精霊様に愛されているリリアンネ様をいじめるだなんて、言語道断ですわ。」
「殿下方を自分の物だとでも思っていらっしゃるの?貴方にまとわりつかれて殿下方もきっと迷惑していますわ。」
「ご自分が邪魔をしていると気づいていまして?」
それは、すべてエル様を蔑むものだった。
最近の彼女の顔色をみて何も思わないのか、何も考えないのか。
事実なんて知りもしないくせに、一方的にエル様を貶めるような発言に、俺は思わず駆け出し飛び出そうとした。
しかし俺は、次の言葉でピタリと動きをとめてしまった。
「そんなこと、わたくしが一番分かっていましてよ。
この世界に、皆の幸せに、わたくしは、要らない。」
その声には、不自然なほど、感情がなかった。
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