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第七章 二人の聖女
次元の狭間で
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夜空から星を消し去ったような真っ暗な空間。
時折、雲のような物質が流れ、得体の知れない漂流物が漂う。
「ここは?」
エルシーは不安げに辺りを見回した。
「次元の狭間です。他の世界から排除された魂が迷い込む所ですね」
「元の世界に帰れるの?」
「私達だけでは無理でしょう。何か呼びかけが無いと……。ここにいる間は年も取らず、喉が渇いたり空腹になったりということも無いので、慌てる必要はないですが、することがなくて退屈ですね」
「…………」
足元に地面の感触が無い。宙に浮いているような奇妙な感覚だった。
近くにいたはずの人々が見えない。ただルビィだけが、近くにいた。
「向こうに声を届けることはできないの?」
「聖女の力があれば別ですが、今は疲れるだけですよ。もう少し待ってください。何とか連絡が取れないか試してみます」
暑さも寒さも感じないはずなのに、エルシーは寒気を感じて縮こまった。
何もできないのがもどかしかった。
どれほど時間が経ったのか、突然、ルビィが声を上げた。
「あっ、見えますよ、そこです!」
真っ黒な空間におぼろげに浮かび上がる映像。
目を凝らしてみると、そこは先程のバルコニーだった。
「彼女をどこにやった!」
「結界が何の役にも立たないとは……!」
王太子らがヴィクトリーヌに詰め寄る。
「おほほほ!見つかりっこないですわ!これでヒロインは貴女一人!覚悟はよろしくて!?」
「ふざけんな、ドリル妖怪!!」
菜々美が叫んだかと思うと、轟音が響き、映像が波打つように揺らいだ。
「聖女の力が……!」
「こっちですよ、聞こえますか、菜々美!」
「えっ?」
ふっと映像がかき消すように消えた。
「二人共、そこにいたの!?今呼び出すから……邪魔すんなー!!!」
再び轟音が響く。
「大丈夫なの!?」
「私達よりそっちが大事だよ、いい?今、一番会いたい人のことを考えて」
「えっ?」
バートランドの顔が脳裏に浮かびドキリとするエルシー。
「そうそう、会いたいって強く念じるの。…………」
音が曇り、聞こえにくくなった。
風の音が耳を打つ。
ごうごうとうなる音の合間に、小さな声がいくつも聞こえてきたが、やがてそれも風の音に飲み込まれていく。
黒い空間に、いくつもの映像が現れては消える。
雪の降り積もる母の墓。
白い雪に埋もれた故郷の屋敷。
無人の聖堂で一人祈りを捧げる銀髪の淑女。
山に囲まれた野原で、黙々と剣を振る黒髪の若者。
エルシーは声を上げたが、風の音に紛れて何も聞こえない。
若者が振り返った。深い青の瞳が空に向けられる。
一瞬目が合ったかのように見えたが、すぐに映像は消え、黒い空間だけが残る。
「彼を想って、会いたいと念じて……」
耳元に聞こえたのは、いつもそばにいる小妖精の声。
「お願い……!」
ミスリルの腕輪を握って、エルシーは必死に祈る。
唸りを上げる風の音は徐々に大きくなり、彼女の意識もその中へと飲み込まれていった。
時折、雲のような物質が流れ、得体の知れない漂流物が漂う。
「ここは?」
エルシーは不安げに辺りを見回した。
「次元の狭間です。他の世界から排除された魂が迷い込む所ですね」
「元の世界に帰れるの?」
「私達だけでは無理でしょう。何か呼びかけが無いと……。ここにいる間は年も取らず、喉が渇いたり空腹になったりということも無いので、慌てる必要はないですが、することがなくて退屈ですね」
「…………」
足元に地面の感触が無い。宙に浮いているような奇妙な感覚だった。
近くにいたはずの人々が見えない。ただルビィだけが、近くにいた。
「向こうに声を届けることはできないの?」
「聖女の力があれば別ですが、今は疲れるだけですよ。もう少し待ってください。何とか連絡が取れないか試してみます」
暑さも寒さも感じないはずなのに、エルシーは寒気を感じて縮こまった。
何もできないのがもどかしかった。
どれほど時間が経ったのか、突然、ルビィが声を上げた。
「あっ、見えますよ、そこです!」
真っ黒な空間におぼろげに浮かび上がる映像。
目を凝らしてみると、そこは先程のバルコニーだった。
「彼女をどこにやった!」
「結界が何の役にも立たないとは……!」
王太子らがヴィクトリーヌに詰め寄る。
「おほほほ!見つかりっこないですわ!これでヒロインは貴女一人!覚悟はよろしくて!?」
「ふざけんな、ドリル妖怪!!」
菜々美が叫んだかと思うと、轟音が響き、映像が波打つように揺らいだ。
「聖女の力が……!」
「こっちですよ、聞こえますか、菜々美!」
「えっ?」
ふっと映像がかき消すように消えた。
「二人共、そこにいたの!?今呼び出すから……邪魔すんなー!!!」
再び轟音が響く。
「大丈夫なの!?」
「私達よりそっちが大事だよ、いい?今、一番会いたい人のことを考えて」
「えっ?」
バートランドの顔が脳裏に浮かびドキリとするエルシー。
「そうそう、会いたいって強く念じるの。…………」
音が曇り、聞こえにくくなった。
風の音が耳を打つ。
ごうごうとうなる音の合間に、小さな声がいくつも聞こえてきたが、やがてそれも風の音に飲み込まれていく。
黒い空間に、いくつもの映像が現れては消える。
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若者が振り返った。深い青の瞳が空に向けられる。
一瞬目が合ったかのように見えたが、すぐに映像は消え、黒い空間だけが残る。
「彼を想って、会いたいと念じて……」
耳元に聞こえたのは、いつもそばにいる小妖精の声。
「お願い……!」
ミスリルの腕輪を握って、エルシーは必死に祈る。
唸りを上げる風の音は徐々に大きくなり、彼女の意識もその中へと飲み込まれていった。
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