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第四章 異世界荒らし
異世界荒らしに勝つには
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「異世界荒らしに勝つ方法、その1!」
ルビィは声を張り上げた。
「ヒロインがハイスペイケメンと結婚すること!」
「え!?そんなことなの!?」
「えぇ、悪役令嬢物では、ヒロインが主人公の婚約者を 略奪するのがお約束ですが、普通ヒロインが結婚するところまでは書きません」
ヒロインざまぁする悪役令嬢に限って言えば、ヒロインの不幸は悪役令嬢の幸せ。
裏を返せば、ヒロインの幸せは悪役令嬢の不幸ということだ。
ヒロインがハイスペイケメンと結婚して幸せになるところなど見たくない。
それが、ヒロインの敵である悪役令嬢の心理である。
「もし、貴女が王太子と結婚できていたら、『異世界荒らし』は精神的に大きな打撃を受けていました。そうなれば戦う意欲を失くして 撤退せざるを得なかったでしょう」
ルビィはすまし顔で解説する。
「だから、何としてもそれを阻止したかったのね」
「そうです。王太子でなくとも、『聖女の盾』の誰かと結ばれればいいのですが、実現する前に『異世界荒らし』の 妨害が入るのは確実です」
ルビィは吐息をついた。
「先に異世界荒らしを追い返さなければいけないのね。他に方法は無いの?」
「ありますとも!」
ルビィは自信ありげに答えた。
「異世界荒らしに勝つ方法、その2!」
小妖精の声が静かな部屋に響き渡る。
「悪役令嬢とヒロインが和解すること!」
エルシーは頷いた。
「お姉様と和解するのね。悪役令嬢ではないけど」
「異世界荒らしがアイリーンを 依り 代として世界に 干渉しているのは明らかです。彼女との対立関係を解消し、味方につけることができれば、奴はこの世界に存在する意味を失います」
「……お姉様は、私を敵と思っているのかしら」
「悪役令嬢本人に敵意がなくても、周りの人間がヒロインを攻撃している話は多いですよ」
「…………」
エルシーは考えた。
「今はお姉様に近づくことはできそうにないわ」
「がっちり保護されてますからね。それで、味方を増やす必要があります」
「誰を味方にするの?」
「前の聖女に会いに行きましょう」
エルシーは大きく目を見開いた。
「見つかったの!?」
「いえ、まだ現れてはいませんが、そのうちこの世界に戻ってきます。女神様から聞きました」
本物の聖女ナナミ―――彼女とこの世界の縁は切れていない。いずれは帰って来るだろう。
彼女には聞きたいこと、言いたいことがたくさんあった。謝らなければいけない事も。
「ナナミに会い、味方になってもらえば『聖女の盾』の皆とも和解できるかもしれません」
エルシーは『聖女の盾』の皆を思い浮かべた。
ヒロインをからかうことが多いが、何かと気遣ってくれた遊び人の 伯爵セドリック。
聖女の力の使い方や心構えを教え、厳しく指導しつつ見守ってくれた大司教パーシヴァル。
明るくヒロインを励まし、魔法の知識で支援してくれた宮廷魔術師レジナルド。
意外と情に厚く有益な情報を集めて聖女の活動を支えた元盗賊団首領のチェスター。
そして、違う生活を夢見ながらも真面目に職務に 励み、聖女を大事にして、いつも守ってくれていた王太子アルフレッド。
皆にも謝罪と感謝の気持ちを伝えなければとエルシーは決心した。
「『聖女の盾』を通せば、アイリーンと話をする機会を作ってもらえるでしょう」
「そうね、皆ともう一度話し合わなければ」
「では、それでいきましょうか。実は、もう一つ異世界荒らしに勝つ方法はありますが……」
「あるの?」
「異世界荒らしに勝つ方法、その3!」
ルビィは星の杖を振りかざした。さらさらと星が流れる。
「戦って倒す!!」
ルビィは星を振りまきつつ杖を振り下ろし、きっぱりと断言した。
「倒すの……?」
あっけにとられるエルシー。
「そうして力づくで追い出した神様もいました。ここの女神様は戦いが苦手なので、無理ですが」
「私達ではまともに戦えそうもないわね」
「『聖女の盾』の皆でも駄目でしょう。このゲームには、超人的な戦闘能力の持ち主がいませんからね。戦闘重視の物語ではありませんから」
「聖女ナナミと和解、それしかないのね」
「はい、彼女が帰ってくるまで大人しく待ちましょう」
エルシーは考えた。自分が来るまで、聖女として大切にされていた少女。
彼女から見ると、自分は立場を奪った人間かもしれない。協力してくれるだろうか?
「女神様から聖女に相応しいと認められた人です。エルシーを受け入れるだけの 度量はきっとありますよ」
ルビィは自信ありげに答えた。
エルシーは戻って来た彼女と和解したい、そして、彼女にも幸福になって欲しいと願った。
「しばらくの間ここで生活するとして……」
ルビィは、エルシーをじっと見た。
「最後に聞いておきます。王太子のことは……」
「もう大丈夫よ。何も 未練は無いわ」
先程の会話で、今のアルフレッドは、自分が恋した相手とは別人だと確信した。
変わったのは、聖女だけではなかったのだ。
「もうそのことは終わったわ。それに、今は恋愛どころじゃないでしょう」
「むむ」
ルビィは顔をしかめた。
「乙女ゲームの案内人としては、ヒロインの恋愛成就も大事な使命の一つなんですけどね」
「悪いけど、『異世界荒らし』を撃退することに集中した方がいいわ。また恋を始めても 邪魔されそうだもの」
ルビィはがっくりと肩を落とした。
「私の力不足ですね。まだまだ女神への道は遠い……」
案内役として実績を積み、世界を 統べる女神に 昇格するのがルビィの野望……あるいは夢だった。
エルシーはなだめるように言った。
「『異世界荒らし』を撃退するのも、大きな手柄じゃない?そうしたら、ゆっくり新しい恋を探しましょう」
「そうですね!」
ルビィは顔を上げた。頭の中でまた、新しい計画を練り始める。
エルシーは思案した。
「と言っても、しばらくここに 籠るしかないのよね。誰も押しかけて来ないといいけど」
「とりあえず、結界を強化しましょう!そして、もっと凶悪な罠を作るんですよ!」
ルビィが人の悪い笑みを浮かべる。エルシーは苦笑した。
「それもいいような気がしてきたわ。……私達以外、誰もいないもの」
外を 徘徊する魔物達を見ながら、エルシーは呟く。
「生きているものはね」
ルビィは声を張り上げた。
「ヒロインがハイスペイケメンと結婚すること!」
「え!?そんなことなの!?」
「えぇ、悪役令嬢物では、ヒロインが主人公の婚約者を 略奪するのがお約束ですが、普通ヒロインが結婚するところまでは書きません」
ヒロインざまぁする悪役令嬢に限って言えば、ヒロインの不幸は悪役令嬢の幸せ。
裏を返せば、ヒロインの幸せは悪役令嬢の不幸ということだ。
ヒロインがハイスペイケメンと結婚して幸せになるところなど見たくない。
それが、ヒロインの敵である悪役令嬢の心理である。
「もし、貴女が王太子と結婚できていたら、『異世界荒らし』は精神的に大きな打撃を受けていました。そうなれば戦う意欲を失くして 撤退せざるを得なかったでしょう」
ルビィはすまし顔で解説する。
「だから、何としてもそれを阻止したかったのね」
「そうです。王太子でなくとも、『聖女の盾』の誰かと結ばれればいいのですが、実現する前に『異世界荒らし』の 妨害が入るのは確実です」
ルビィは吐息をついた。
「先に異世界荒らしを追い返さなければいけないのね。他に方法は無いの?」
「ありますとも!」
ルビィは自信ありげに答えた。
「異世界荒らしに勝つ方法、その2!」
小妖精の声が静かな部屋に響き渡る。
「悪役令嬢とヒロインが和解すること!」
エルシーは頷いた。
「お姉様と和解するのね。悪役令嬢ではないけど」
「異世界荒らしがアイリーンを 依り 代として世界に 干渉しているのは明らかです。彼女との対立関係を解消し、味方につけることができれば、奴はこの世界に存在する意味を失います」
「……お姉様は、私を敵と思っているのかしら」
「悪役令嬢本人に敵意がなくても、周りの人間がヒロインを攻撃している話は多いですよ」
「…………」
エルシーは考えた。
「今はお姉様に近づくことはできそうにないわ」
「がっちり保護されてますからね。それで、味方を増やす必要があります」
「誰を味方にするの?」
「前の聖女に会いに行きましょう」
エルシーは大きく目を見開いた。
「見つかったの!?」
「いえ、まだ現れてはいませんが、そのうちこの世界に戻ってきます。女神様から聞きました」
本物の聖女ナナミ―――彼女とこの世界の縁は切れていない。いずれは帰って来るだろう。
彼女には聞きたいこと、言いたいことがたくさんあった。謝らなければいけない事も。
「ナナミに会い、味方になってもらえば『聖女の盾』の皆とも和解できるかもしれません」
エルシーは『聖女の盾』の皆を思い浮かべた。
ヒロインをからかうことが多いが、何かと気遣ってくれた遊び人の 伯爵セドリック。
聖女の力の使い方や心構えを教え、厳しく指導しつつ見守ってくれた大司教パーシヴァル。
明るくヒロインを励まし、魔法の知識で支援してくれた宮廷魔術師レジナルド。
意外と情に厚く有益な情報を集めて聖女の活動を支えた元盗賊団首領のチェスター。
そして、違う生活を夢見ながらも真面目に職務に 励み、聖女を大事にして、いつも守ってくれていた王太子アルフレッド。
皆にも謝罪と感謝の気持ちを伝えなければとエルシーは決心した。
「『聖女の盾』を通せば、アイリーンと話をする機会を作ってもらえるでしょう」
「そうね、皆ともう一度話し合わなければ」
「では、それでいきましょうか。実は、もう一つ異世界荒らしに勝つ方法はありますが……」
「あるの?」
「異世界荒らしに勝つ方法、その3!」
ルビィは星の杖を振りかざした。さらさらと星が流れる。
「戦って倒す!!」
ルビィは星を振りまきつつ杖を振り下ろし、きっぱりと断言した。
「倒すの……?」
あっけにとられるエルシー。
「そうして力づくで追い出した神様もいました。ここの女神様は戦いが苦手なので、無理ですが」
「私達ではまともに戦えそうもないわね」
「『聖女の盾』の皆でも駄目でしょう。このゲームには、超人的な戦闘能力の持ち主がいませんからね。戦闘重視の物語ではありませんから」
「聖女ナナミと和解、それしかないのね」
「はい、彼女が帰ってくるまで大人しく待ちましょう」
エルシーは考えた。自分が来るまで、聖女として大切にされていた少女。
彼女から見ると、自分は立場を奪った人間かもしれない。協力してくれるだろうか?
「女神様から聖女に相応しいと認められた人です。エルシーを受け入れるだけの 度量はきっとありますよ」
ルビィは自信ありげに答えた。
エルシーは戻って来た彼女と和解したい、そして、彼女にも幸福になって欲しいと願った。
「しばらくの間ここで生活するとして……」
ルビィは、エルシーをじっと見た。
「最後に聞いておきます。王太子のことは……」
「もう大丈夫よ。何も 未練は無いわ」
先程の会話で、今のアルフレッドは、自分が恋した相手とは別人だと確信した。
変わったのは、聖女だけではなかったのだ。
「もうそのことは終わったわ。それに、今は恋愛どころじゃないでしょう」
「むむ」
ルビィは顔をしかめた。
「乙女ゲームの案内人としては、ヒロインの恋愛成就も大事な使命の一つなんですけどね」
「悪いけど、『異世界荒らし』を撃退することに集中した方がいいわ。また恋を始めても 邪魔されそうだもの」
ルビィはがっくりと肩を落とした。
「私の力不足ですね。まだまだ女神への道は遠い……」
案内役として実績を積み、世界を 統べる女神に 昇格するのがルビィの野望……あるいは夢だった。
エルシーはなだめるように言った。
「『異世界荒らし』を撃退するのも、大きな手柄じゃない?そうしたら、ゆっくり新しい恋を探しましょう」
「そうですね!」
ルビィは顔を上げた。頭の中でまた、新しい計画を練り始める。
エルシーは思案した。
「と言っても、しばらくここに 籠るしかないのよね。誰も押しかけて来ないといいけど」
「とりあえず、結界を強化しましょう!そして、もっと凶悪な罠を作るんですよ!」
ルビィが人の悪い笑みを浮かべる。エルシーは苦笑した。
「それもいいような気がしてきたわ。……私達以外、誰もいないもの」
外を 徘徊する魔物達を見ながら、エルシーは呟く。
「生きているものはね」
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