バケモノ姫の○○騒動

長野 雪

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バケモノ姫の嫁入り騒動

3.囚人は無様に叫ぶ

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「よぉ、半日ぶりだな。元王子殿下?」

 澱んだ空気の地下牢で、まるで旧知の仲のように、リカッロは鉄格子の向こうにいる人物に声をかけた。

「……何しに来た」

 房内に一脚だけ置かれたイスに、その牢の主は座っていた。朝にリカッロが見に来た時から、微動だにしていないような印象を受ける。

「今朝の話、そろそろ決心ついた頃かと思っただけさ」
「ふざけるな! 誰が貴様のような野蛮な人間の下につくものか!」
「別に悪い待遇じゃねぇと思うがな。オレの領地の一部を任せてやろうってんだし。オレの部下だったら、泣いて喜ぶぜ?」
「このセクリアの地を遠く離れてか? 冗談も大概にしろ!」

 今朝も似たようなやり取りを聞いたばかりの副官ボタニカは、ハルベルトの視界に入らない位置で眉間をもみほぐした。その隣に立つ姫君は、唇を真一文字に引き結び、まっすぐ前を見つめている。声だけしか聞こえないだろうに、まるで壁を通してかつての婚約者を凝視しているようだ。
 そんな姫君の乗る箱馬車を取り囲んだ騎馬隊の中には、使用人を守ろうという彼女の態度に好感を覚えた者は少なくない。ボタニカ自身もその一人だ。

(ウチの殿下も何考えてんだか知らないが)

 さすがに、元婚約者と牢で再会させる、なんてショッキングなことを、良心の呵責なく容認できるほど、彼は神経が図太くはない。しかも相手は、深窓の姫君だ。
 その心中は測れないが、よくもまぁ気丈に立っていられるもんだ、と感心した。
 そんな風に同情されているとは夢にも思わないユーディリアは、目の前から聞こえる二人のやり取りを懸命に聞き取っていた。将軍がいちいち合いの手を入れたり、リッキーが牢の中というめったに来られない場所に来て、あちこち細かく見てはぶつぶつと呟いているため、集中していないと会話をきちんと聞き取れないのだ。

「なぁ、元王子殿下。自分の立場分かってんのか?」
「卑劣な輩に闇討ちされて牢の中に押し込められ、さらに愚劣な提案を聞いてやっているところだろう?」
(自分の命すら危ういということを分かってんのか、このタコ)

 そんな悪態を心の中に吐き捨て、リカッロは「そんなステキな元王子に、いいもん見せてやるよ」と視線をユーディリアに移した。
 ボタニカにも促され、彼女は、一歩ずつ、慎重に歩を進めた。この花嫁衣裳のために新調した靴は、カカトが高い上にヒールが細く、石畳の牢は非常に歩きにくい。

カツ、カツ、カツ

 牢の中のハルベルトには、まだ靴音しか聞こえない。
 だが、白いドレスをまとった彼女の姿を見た途端、彼は思わずイスから立ち上がった。
 リカッロから一歩離れたところで足を止め、まっすぐにハルベルトを見たユーディリアは、思わずその両手で口元を覆った。

「ハルベルト、様……」

 いつもきれいに整えられている銀髪は乱れ、全体的に薄汚れた印象を受ける。だが、間違いなく、ユーディリアの婚約者本人であった。

「ユーリ……」

 彼女に愛称で呼びかけたハルベルトは、茫然としていた。なぜ、こんなところに彼女がいるのか、なぜ、こんな形での再会になったのか、頭は理解していても、感情が追いつかない。

「どうした? 久しぶりの婚約者殿との再会だろう?」

 からかうようなリカッロの声に、傍目にも分かるほど、ハルベルトの顔が赤く染まる。

「貴様! なぜこんな所にユーリがいる!」
「最初にそれ聞くのかよ? お前の国はオレのものになった。結婚を控えたお前の婚約者が、オレの妻になるのも道理だろ?」
「……いったい、どれだけ僕のものを奪えば気が済むんだ」

 悔しげに顔を歪ませたハルベルトは、ギリリ、と奥歯を噛みしめる。

「別にお前が憎いわけじゃねぇ。ちょうどいい場所に、ちょうどいい国があって、上手く事が運んだ結果だ。―――だから、こうやって提案してるだろ?」
「……」

 ハルベルトは額に手をやると、倒れ込むようにイスに座った。そのまま肘掛に肘を置き、顔を隠すように額の前で手を組む。

「ようやく納得したか?」

 リカッロの声に返事こそしなかったが、ハルベルトの肩が小さく小刻みに揺れていた。それは含み笑いになり、最後には高らかな哄笑にまで変わっていく。
 不吉なものを感じて、腰が引けたユーリディアだったが、笑っているハルベルトの目の前で、牢の鍵穴を一心不乱に調べているリッキーの姿を見て、少しだけ心が落ち着いた。
 リッキーは日頃臆病だが、興味を引くものが目の前にあれば、周囲は見えなくなる。新しいことを知るのが楽しくてたまらない、好奇心の塊なのだ。

(そんなリッキーを見て、心が和むっていうのもシャクだけど)

 彼女は視線をハルベルトに戻す。いつの間にか笑いは止まっていた。

「何がおかしい?」
「おかしい? いいや、僕は喜んでいただけだ。僕から色んなものを奪っていく貴様が、こんなプレゼントをくれるとはね!」

 ハルベルトは、ちらりとユーディリアを一瞥した。

「こんなバケモノが将来の王妃になるなんて、ぞっとしてたんだ。バケモノの国から来たバケモノ姫が!」

 元婚約者の言葉に、ユーディリアの口元を押さえていた手がカタカタと震える。

「貴様も物好きだな。こんなバケモノを自分から妻に迎えるなんて……! ありがとう、貴様に感謝の意を述べるなんてこと、あるとは思っていなかった」

 ユーディリアの瞳に涙がたまっていく。隣でベリンダが何とか慰めようとするが、その声も、姿も、耳には入らない。

「どうしたんだ、ユーリ。そのバケモノの力を、この男にも見せてやればいい! お前がバケモノだって思い知らせてやれよ!」

 続けざまに浴びせかけられた罵声に、とうとうユーディリアの目じりから涙がこぼれた。

「し、失礼、させて、いただきますっ」

 ユーディリアは、豹変した婚約者に背を向けて逃げ出した。
 後ろから「ボタニカ、部屋まで送ってやれ」というリカッロの声がしたが、そんなこと、どうでもよかった。
 薄暗い牢の中、彼女は顔を見られまいとヴェールを下した。


 ◇  ◆  ◇


 部屋へと逃げ戻ったユーディリアの目からは、既に涙は消えていた。

『めそめそ泣き伏すかと思ったが、大人になったもんじゃのぅ』
『将軍! ねぇ、ユーリ。あんまりガマンしなくてもいいんだよ? 泣いちゃってもいいんだから』

 彼女は二人の声を無視すると、意匠のほどこされた鏡台の前に立った。目元が赤くなっていないことを確認し、そして、鏡越しに自分の背中を確認する。

「やっぱり、ダメみたいね」

 ユーディリアはため息をつくと、壁の高いところから垂れ下がっている紐をぐいっと引っ張った。同じ階の控えの間にいる使用人を呼ぶための紐だ。最初にこの仕組みを知った時にはびっくりしたが、ここへ訪れるたびに使っているため、もう慣れてしまった。

『泣いて、腹でも減ったか』
「違うわ、将軍。いい加減、この動きにくい衣装を脱ぎたいだけよ」

 ほどなくして、やって来たマギーに着替えたい旨を伝えると、その言葉に、彼女の顔が明るくなった。

『どうせ、結婚しないとでも思っとるんじゃろ。まったく、浅はかな娘よのぅ』

 将軍の言葉に苦笑いを返すユーディリアに気付かず、マギーは腰でぎゅっと絞められたリボンを、慣れた手つきでほどいていった。

「あの、ユーディリア様」
「なぁに?」
「庭園にでも行かれました? 裾が少々、汚れているようなのですが……」

 あぁ、とユーディリアの口からため息のような返事が洩れた。

「ハルベルト様に、お会いしたわ」
「えっ? ハルベルト殿下に?」
「マギー、声が高いわ。扉の外には見張りが立っているのでしょう?」
「は、はい、申し訳ございません」

 ようやくリボンをほどき終えたメイドは、深々と頭を下げる。

「殿下のご様子は……」
「リカッロ殿下と口論できるぐらいには、お元気でしたわ」

 ドレスを脱皮するように脱ぎ捨て、下着姿になったユーディリアは、コルセットの腰ひもを緩めてもらうと、マギーの用意した深緑色の服に着替える。余計な装飾もなく、ふわりと広がって足の邪魔にならないスカートに、ユーディリアは満足した。

「この城の地下牢に、捕らわれていましたわ」

 ウェディングドレスの汚れを落とそうと、両手に抱えたマギーは、感激の涙すら浮かべ「ありがとうございます」と何度も頭を下げた。

「もう、戻っていいわ。あなた一人ではないんでしょう? 知らせてあげなくてはね」
「はい! 失礼いたします!」

 マギーははやる心を抑えられず、小走りで部屋から出て行った。

『あの娘に協力するつもりか?』
「別に。情報を提供しただけよ」

 斜め前に立つ将軍に、小声で答えたユーディリアは、鏡の前に立つと、きれいに結い上げられた髪から、小さなピンを一本ずつ取り出して行った。

『ねぇ、ユーリ。アタシはヤだよ? あんな男、助けてやる必要なんてないじゃん』
「そうね、ベリンダ。それは同感よ」
『本当に、あの王子の言葉を鵜呑みにしてもいいのかのぅ』
「将軍、それはどういう意味?」

 小声ながらも、怒気を孕んだ声で相手を突き刺したユーディリアに、将軍は軽く肩をすくめて見せた。

『儂には、そのバケモノの力で助けてくれ、とも聞こえたが』
「どういうこと?」
『あの手合いの人間は、とにかく物事を自分の都合が良いように解釈する。自分だけは死なないはずだ。婚約者は自分の味方になってくれるはずだ。婚約者が異能を発揮すれば、自分は助かるはずだ。……正直、そんな人間は見飽きたが』

 全てのピンを抜いたことを確認すると、最後に、髪紐をほどいた。解放された金の髪が、ふわりと波打つ。

『あれがウソだって言うワケ? でも、ウソだとしても、アタシ許せないんだけどー』
『これだから、物事を感情でしか見られない女は困るんじゃ』
『なんでもかんでも、理屈っぽく考える将軍に言われたくないし』

 将軍とベリンダのくだらない言い合いを聞き流しながら、鏡台の引き出しから櫛を探し当てたユーディリアは、波打った髪をほどくように櫛を入れた。

「ねぇ、リッキー」
『は、はい、お嬢様』
「あなたは、どう思う?」
『え、自分、……ですか? 自分は、あまりハルベルト王子の話も聞いていなかったので、分かりません』
「じゃぁ、あそこで熱心に見ていたものの感想を聞かせて?」

 少なくとも、将軍とベリンダのいつもの口論を聞いているよりはいいはずだと思いながら、櫛を鏡台の上に置いて、今度はバルコニーの方へ足を運んだ。

『あの牢はですね、築城当初から変わっていないように思います。百年ほど前に流行したセポン様式そのままの造りでしたし。あ、セポン様式というのはですね、そもそも……』
「そこは説明しなくてもいいわ」
『あ、はい、すみません。えぇと、まぁ、いくらお金があっても、牢にまで改修は入れなかったみたいですね。そもそも、そんなに使われていなかったようですし。城下で出た犯罪人については、城下にある警備隊の牢に入れられるわけですから』

 立て板に水のごとくまくしたてるリッキーの言葉に、ちょっと失敗したかしら、とユーディリアは思った。リッキーの口から淀みなく紡がれる内容は、彼女が求めていた話題転換よりもずっと深くまで考察されていく。

『鉄格子についた錠前も確認しましたけど、あれは前世紀の遺物ですね。化石レベルですよ。自分でしたら、数分で開錠できる自信があります』

 バルコニーへ踏み出したユーディリアの頬を、強い風が打ち付けた。

『あ、あとですね、気になることがあったんですよ。自分、目が悪いし、遠目だし、暗かったので、自信はないですが、隣の房に、銀色の長い髪の毛のようなものがあったんです』
「銀色の、長い……?」
『確証はありませんが、状況から鑑みるに、王妃様のものである確率が七割、八割ってところでしょうか』
「それは、……ハルベルトの居た隣の部屋で、マギーの言っていた悲劇が怒ったということ?」
『確証はないです。推測だけです。すみません……』
「あ、いいのよ。ごめんなさい、ありがとう」

 しょぼんと肩を落とすリッキーに、ねぎらいの言葉をかけたユーディリアは、バルコニーから遠く城下を見下ろした。今頃、住民に動揺が広がっているだろうが、ここからではそんな異変を感じ取ることもできない。いつも通りの街並みに見えた。

『町に被害はないようじゃのぅ』
「将軍?」
『城ひとつ攻め落とすのに、町の連中に気が付かれないなんということがあるのか。ふむ、興味深い』

 いつの間に口論を切り上げたのか知らないが、ベリンダもバルコニーに出てきて、真ん中に置かれたテーブルとイスを興味津々で眺めていた。

「元々、小高い丘の上に建てられているもの、遠くて気付かなかったとかじゃないの?」
『四方を町に囲まれているのに、あの騎馬隊が通るのを気付かなかったわけではなかろう』
「……騎馬で乗り込まなかったんじゃない?」

 これだけ風が吹いていれば、声も散らされるだろうと、ユーディリアは少しだけ声のボリュームを上げた。

「この城には、いくつもの脱出用抜け道があるって、王妃様から伺ったことがあるわ。場所までは知らないけど。内通者がそこから引き入れたと考えれば―――」
『なるほど、それならば、たった一晩で城が陥落するのも納得がいく。じゃが、そうすると……』

 将軍は、ふむ、とヒゲを撫でた。

「そうすると?」
『金か、権力か、弱みか。少しずつ内側からこの国を溶かしていった上での城攻めよ。輿入れの日程も計算の上でな。……庶子に生まれた乱暴な王子の独断専行とも思っていたが、なかなかどうして、本国も了承の上での謀略と見た』
「庶子に生まれた乱暴な王子って……」
『他の王子からは格下に扱われ、色々と不遇の道を歩いて来たようです。軍を組織し、功を重ねてからも、難癖をつけられたみたいですね。あ、すみません。自分、会話の邪魔でしたか?』

 口を挟んできたリッキーが慌てて後ろに下がる。

「本国も了承なら、突然の侵攻に対する周辺諸国の反感なんかも、本国が処理する可能性があるってことよね。……それってもう、詰んでるじゃない、この国は」
『あくまでも推測でしかないわい。まぁ、それが分かったからと言って、「悲運の王女」とやらに、何かができるわけでもないじゃろう?』

 からかうような将軍の言葉に、ユーディリアは大きくため息をついた。将軍のおかげで、自分の置かれている状況や相手のことはうっすらと見えてきたが、だからと言って、動けるわけでもないし、動かなきゃいけないわけでもない。

「……不毛だわ」

 空しく呟いた言葉も風にさらわれていく。

『ねぇ、そんな暗い顔して、深刻な話なんてしてないでさ、ぱぁっと歌おうよ』

 それは、よくベリンダの口から出る言葉だったが、なんとなく、それも良い案の気がして、ユーディリアは少しだけ笑った。

「そうね、あまり難しく考え過ぎても、疲れちゃうものね」

 その了承の言葉に、ベリンダの顔が輝き、ついで、いたずらを思いついたような表情に変わる。

『ねぇ、折角だしさ、……っていうのはどう?』

 彼女のその突飛な申し出に、一瞬、驚いた顔を浮かべたユーディリアだったが、ちょっと考えて「いいわよ」と快い返事を口にした。
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