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毒殺騒動・後日談
【小話】バケモノ姫の浮気騒動
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「リカッロが、浮気しているかもしれないと、いう話を聞いたのだけれど」
ポツリ、と呟いてみると、丁寧にユーディリアの金色の髪を梳いていたメイド、ハンナがピクリと指を強張らせた。
「あなたも聞いているのね、ハンナ。……としたら、随分と噂も広まっているのかしら」
「ユーディリア様……」
憂いた表情を見せる年かさのメイド、ハンナだが、その心配をよそに、初めてその噂を耳にしたユーディリアの感想は(また面倒な)という、どこか判で押したような冷静なものだった。
「心配しないで。婚約者に愛人がいるのも、もう2回目ということになるもの。大して問題ではないわ。でも、貴族の方々や、国民に噂が流れないように手は打っておかないといけないかしら?」
サイドの髪を複雑に編みこむハンナは、どこかホッとしたような、それでもまだ懐疑的な眼差しで「それがよろしいかと存じます」と形式的な返答をする。
突然の政変でセクリアが属国となって浮き足立った国内にも、ようやく落ち着きのような雰囲気が出るようになっていた。夜会という貴族特有の情報交換もぼちぼち催されるようになったというのに、ここに来て絶好の噂話を提供するわけにはいかない。
ユーディリアはコバルトブルーの部屋着に着替え終わると、昨夜、刺しかけていた刺繍の木枠を手に取った。
『ちょ、そんな落ち着いている場合なのっ!?』
突如、現れたのはタレ目に泣きぼくろが印象的な女性だ。
「おはよう、ベリンダ。ハンナがいなくなるのを待っててくれてありがとう」
昨日、リカッロの部下であるザッカード青年から「失言」という形で情報を得た時には、辺りを構わず喚き散らしていた彼女だったが、一晩経って、ある程度落ち着いたようだった。
『あんなに好きなリカッロ王子が、浮気なんかしてるのに、どーして、どーしてそんなに落ち着いていられるって言うのよ~』
おそらく、自分よりも先にベリンダが取り乱したからこそ、平静を保っているような気がするが、それを口にするのは憚られた。
「それは、その、お互い好き合って結婚するわけでもないし、愛人は男の甲斐性だから、正妻としては大らかな気持ちで、っていうのが、政略結婚のたしなみだ、って教わっているし」
『それが間違いよ! 好きな男が、他の女の腰に手を回したり、耳元で愛を囁いたりしちゃうのよ?』
ベリンダの挙げる具体例に、ユーディリアの胸の奥が凍ってしまったかのように、すぅっと冷える。
『胸ばっかり大きくて頭スカスカな女に、ねぇ、奥さんはいいの? とか聞かれて、あいつとは、どうせ家同士が決めた間柄だからな。とか言っちゃうのよ! それが浮気ってもんよ?』
やたらと実感のこもったセリフに、恋に生きるベリンダは浮気されたのか浮気相手になったのかどっちだろう、と思わなくもない。
『それなのに、奥さんのところに帰ってきたら、オレにはお前だけだよハニーとか言っちゃうのよ! 男ってそういうもんよ!』
『そのあたりに、してもらえんか』
止まることのないベリンダのヒトリ浮気劇場に、やれやれといった調子で声をかけたのは将軍だった。
『世の中、そういう男もいることは認めるが、全てではないぞ?』
『でも、現に噂になってるじゃない!』
ぎゃんぎゃんと更に言い募るベリンダの声を聞き流しながら、ユーディリアはいつの間にか落としていた刺繍の木枠を拾おうと腰をかがめた。途端に、目からぽろり、と雫がこぼれ落ちる。
「っ」
いつの間に、涙をためていたのだろうか。
『お嬢様……?』
その様子に気付いたのか、リッキーがおそるおそる声をかけてくる。
『え、ちょっと、ユーリ?』
ベリンダが浮気男全般に対する毒を吐いていた口を閉じ、近づいて来る気配があった。
「……ごめんなさい。一人にしてもらえる?」
ユーディリアの声は、いつの間にか震えていた。
3人は反論することなく、その姿を消した。ベリンダだけは何かを言いかけていたようだが、将軍がその口を塞いで連れて行ってしまった。
ユーディリアは大きくため息をつくと、今度こそ木枠を拾い上げ、テーブルに乗せた。とても、刺繍の続きをするような気分ではない。
「噂なんて、信じたくないけど―――」
火のないところに煙は立たないと言う。
浮気相手とされているのは、城下で大きな力を持つ宝石商フェントンの後妻だった。最近、足しげく通っているという話である。
「自分の目で、確かめてみればいいのかしら」
確かめれば、気が済むだろうか。
もし、本当だったとしたら、自分は物分かりの良い正妻として振舞えるだろうか。
自信はない、けれど―――
「噂がこれ以上、無責任に広がらないためにも、真偽は確かめておくべきだわ」
自分を鼓舞するように声に出したユーディリアの胸が、ずきり、と悲鳴をあげた。
◇ ◆ ◇
『まったく、無茶をするのぅ』
頭の上の方でくくった金髪が揺れるたび、ユーディリアの首筋をくすぐった。
城下町に来るのは初めてではない。リカッロに露見しているかどうかは知らないが、何度か変装して城下に忍んで来たことはあった。
かつての婚約者ハルベルトが残した抜け道の情報と、将軍による巡回兵回避能力を使って。目的はささやかな気晴らしと、小遣い稼ぎと、視察だ。自国にいた頃のクセで、つい小物に刺繍を施してしまった彼女は、せっかくだから引き取ってくれる商人はいないかと城下の小間物屋を訪ね、リカッロに見咎められた時の言い訳のために噂話を集めているのである。
今日もついでとばかりに、仕上がったばかりの小物入れを5つばかし持ってきていた。
「おや、リディアちゃん、久しぶりだね」
「こんにちわ、ソーンさん。今日は小物入れなんだけど、どうかしら?」
何度か顔を合わせている店主は、「リディア」という女性をどこぞの男爵家のご令嬢と思い込んでいる。嫁入りの持参金やらに事欠くからという理由で持ち込みをしているが、それを信じてあげているふりだ。
(どうせ、おいしいお菓子なんかに消えているんだろう)
実際、何度か買い食いしている所を目撃している店主は、それでも黙っていようと決めた。
彼女の持ち込む品は、そこそこ目を惹くようで3日も経たずに売れてしまうのだ。時間が余っているからこその精緻な針遣いは、正直、自分の店で出すのは勿体無い気もするが、本人が納得しているようだから良いのだろう。
「こりゃまた、きれいなもんだね。1つあたり、このぐらいでどうだい?」
店主が指を3本立てて見せると、「それでいいわ」と彼女は頷く。いつもだったら、両手を叩いて喜ぶはずなのだが、今日はちょっと気分が沈んでいるようだ。
「今度は、春告げ鳥の意匠とかどうかな。結構人気があるんだ」
「春告げ鳥? そんな季節でもないのに?」
店主は彼女の前にいくつかの商品を並べて見せた。そこには大なり小なりエメラルドブルーの鳥が描かれている。
「こいつを入れた小物を見に付けてると、恋が実るってんで人気なんだよ。リディアちゃんは知らなかったのかい?」
「……恋が、実る。知らなかったわ」
少しだけ顔を歪めたが、すぐに「分かった。今度は春告げ鳥ね」と笑みを浮かべて見せた。
店主から硬貨を受け取り、ポーチにしまった「リディア」は、コーラルピンクのドレスを翻して店主の視界から去って行った。
『ねぇ、ほんとに行くの?』
ユーディリアに付き添って動くベリンダの言葉に、確かめに行くだけよ、と雑踏にまぎれるほどの小さな声で答える。
目指すのは、宝石商フェントンの邸だ。今日も一人で出かけてしまったと(ユーディリアに対しては)口が軽いザッカードから聞いている。
◇ ◆ ◇
露天が立ち並ぶ市場から歩いて半刻のところにその邸はあった。
裏通りからぐるり、と回って来たユーディリアは、リカッロの馬がいることを将軍に確認してある。
(ここに、いるのね)
フェントンの邸に通って来ているのは間違いない。問題はその目的だ。
どうやって出て来るのを待とうかと正門のある表通りに出たところで、玄関の大扉が開く音がしたと将軍から報告があった。
『見ない方が良いと思うがの』
将軍も心配をしているのだろう。そんな助言をしてくる。
『ちょ、女と一緒に出てきたわよ!』
塀の内側を覗くベリンダが、頼んでもいないのに実況を始めた。残念ながら、ユーディリアの位置からはとても見えない。だが、ベリンダの言葉を疑う理由もなかった。
『何か、親密そうに話して、あ、あの女、リカッロ王子の肩に手なんか置いて、何よあんなスカした微笑なんて浮かべちゃって、タラす気まんまんじゃないの?』
他人に男を取られたことがあるのか、やたらと私情を含んだ実況を聞きながら、ユーディリアの心臓がバクバクと踊り出した。
何かがあって欲しいのか、何もなく終わって欲しいのか、どっちなのか分からない。
『ここからリカッロ王子の表情が見えないのが痛いわねー。もっと近くまで寄ろうかしら……あぁぁーっ!』
突然の悲鳴に、ユーディリアの肩が大きく震えた。
『あの女、リカッロの襟元掴んで、唇、奪いやがったー!』
怒りのあまり、ベリンダの口調が荒々しいものになっている。
『この泥棒猫! 確定ね! かくなる上は、アタシがあの女にポルターガイストして脅して―――』
ベリンダの口から出てくる復讐方法はありきたりな物から、とてもおぞましいものまであって、傍らに居たリッキーが(半透明の幽霊だと言うのに)真っ青になるほどだった。
当のユーディリアと言えば、ベリンダの悪口雑言も耳に入らず、ただ立ち尽くしていた。
『ちょ、リカッロ王子が出てくるわよ、ユーリ!』
ベリンダに急かされ、ユーディリアは慌てて走り出した。
(まさか、本当だったなんて―――)
握った拳に冷たい汗がにじむ。
とりあえず、旦那の宝石商がこのことを承知なのか確認して、その上でしかるべき身分を与えて城にも出入りできるようにした方がいいのかしら。
いや、そもそもリカッロが夫人をどのぐらい愛してるのかによって、対処方法も変わってくるから―――
(愛し、て……)
そこまで考えて、ぱたり、と足が止まった。
浮かんで来た涙を乱暴に拭う。
心を落ち着けようと弾んだ息を整える。
いつの間にか露店街の端まで戻って来てしまった。
(とりあえず、帰ろう)
自室にいないことがバレたら、リカッロにどんな嫌味を言われるか分からない。
(リカッロ、に……)
喉の奥がくん、となるのを堪え、もう一度深呼吸をする。
「お嬢ちゃん、だいじょうぶか?」
目の前を遮るように、3人の男が立っていた。知らない顔だ。
「イヤなことがあったなら、愚痴でも聞こうか?」
「あっちに、いいカフェがあるんだよ」
『ちょ、やっばー』
ベリンダが、あちゃー、と額に手の甲を当てた。どの時代も、こういう手合いは変わらないのね、と呟く。
『やるか?』
将軍が待ってました、と脇に立った。ぶちのめす気満々で、殺気すら放っていた。
「ごめんなさい、戻らなければならないので、失礼します」
できるだけ穏便に終わらせたいユーディリアの気持ちと裏腹に、3人は彼女の行く手を通せんぼして遮る。見下ろす表情は、にやにやとしてしまりがない。完全になめられている。
ユーディリアは、大きく溜め息をついた。
人目はあるが、仕方がないと、将軍に許可を出そうとして―――
「オレの連れに何か用か? あぁ?」
すぐ後ろから聞こえた救い手の声に、―――逃げ出したくなった。
「なんだ、男が居たのかよ」
「面倒だな」
男達が目で相談をしている間に、後ろの声の主がユーディリアの腰に手を回した。
「とっとと去れよ。オレのオンナに色目使うな」
おそらく本気で威嚇したのだろう、3人の男がたじろぐ。
どうして、この人はこんなにガラが悪いんだろう。あぁ、下町で育ったとか言っていたっけ。そうか、このぐらいはお手のものなんだ。
ユーディリアは、もはやオオカミに食いつかれたエモノのようにぴくりとも動けないでいた。諦めの境地である。
ほどなく、ユーディリアに声をかけて来た3人組が追い払われた。
「―――で、お前は何やってんだ?」
腰に手を回されたまま、硬直したユーディリアはとても彼の顔を見ることができず、目を逸らした。
「こんな所で会うとは思いませんでしたわ。それも、そんな格好で」
「そりゃこっちのセリフだ。―――来い」
商家の子息と言われて違和感のない格好のリカッロに手首を掴まれ、男爵令嬢の格好をしたユーディリアが従う。力比べをして勝てるわけもないし、無理に逃げても、最終的に逃げ場はない。
人の少ない通りまで出て、リカッロの黒い軍馬に乗せられる。
「どこに、向かっていますの?」
「城に決まってんだろ。城下じゃぁ、どこに耳があるか分かんねぇからな。―――ん、目が赤いな。誰に泣かされた?」
「気のせいです」
まさか目の前の男に泣かされたとは言えず、ユーディリアは知らぬ存ぜぬを通す。
とりあえず虚勢は張っているが、この後はどう言い逃れるのが良いか、内心は大慌てだった。
◇ ◆ ◇
リカッロはともかく、ユーディリアの姿に目を丸くした門番がいたことを除けば、概ね問題なく部屋まで戻って来れた。
「……で?」
定位置となったカウチに尊大に腰をかけたリカッロは、ユーディリアに隣に座るよう手振りで示す。
視界の端で「ファイト!」と声をかけるベリンダは、どうやら手出し口出しをしてくれる気はないらしい。がっくりと落ち込みながら、とりあえずリカッロの指示に従う。
(な、何をどう話せばいいのか……)
目を泳がせていると、ベリンダが『先手必勝!先にキレたもん勝ち!』とアドバイスを叫ぶ。だが、この件について、あまり感情的に振舞うのもどうかと思う。政略結婚の正妻としては、やはり愛人には寛容にならないと、と教わっているからだ。
(そ、そう。寛容に)
ユーディリアは、上半身をねじってリカッロの方に向けた。心臓はバクバクと高鳴るどころか爆発しそうで、絶対に身体によくない鼓動を刻んでいる。
「わたしの方から先に話をさせてもらっても良いでしょうか?」
決意を込めて口にしたのに、これから始まる余興を楽しみにするような、そんな余裕の表情で「どうぞ」と答えが戻って来る。
「兵やメイドの間で、宝石商フェントンの後妻に通っていると噂になっているのはご存知ですか?」
「あぁ?」
怪訝な表情を浮かべ、ガラの悪い声に怯みそうになるのをぐっと堪えて続ける。
「もし、本気で通っているのでしたら、こちらとしても適当な身分を用意しないといけません。フェントンは豪商と言えば豪商ですが、王が通うとなれば、せめて男爵夫人ぐらいの地位を用意しなければ―――」
「ちょっと待て」
「そもそも、フェントン氏本人はご存知なのかしら。それによっても対応が変わってきます。場合によってはフェントン氏と交渉して―――」
「だから待て、話を進めるな!」
大声に、ユーリが思わず口を閉じた。
「くそ、誰だそんな噂流したヤツは……! いいか、ユーリ。それはデマだ。流言だ。一握りの真実も含んじゃいねぇ」
「でも、リカッロ。先ほど、フェントン氏のお邸にいらしたでしょう?」
ベリンダの実況を思い出し、ずきん、とユーディリアの胸が痛む。
(だめ、思い出しちゃだめ!)
震えそうになる唇に力を込め、涙を湛《たた》えそうになる瞳を押し留める。
「それは別件だ」
(―――別件)
淡々と答えるリカッロに、怒りにも似た感情が湧きあがる。
「玄関口で親しそうにお話をされたあげく、き、キスまでしても、別件と言いますの!」
ダメだ。もう限界だ。
立ち上がったユーディリアの手首を、リカッロが掴んだ。
「放してください」
「阿呆、誰が放すか」
力づくで引き戻され、顎を掴まれる。上げようとした悲鳴が、リカッロの唇で塞がれた。
「ふっ、ん、んんっ」
肩を掴み、胸板を叩くも、2度、3度と唇を食べられてしまう。さらに深く口付けられたところで、ユーディリアの反抗の手が止まった。
「落ち着いたか?」
「……卑怯です」
小声で反抗した途端、瞳からぽろり、と涙がこぼれた。
まったく、とリカッロがユーディリアの顔を自分の胸に押し付ける。
「尾行でもしてきたのか?」
「……いいえ、邸から出て来る所に居合わせただけです」
「どこから見ていた?」
「ベリンダが、門の上から覗いて、教えてくれました」
リカッロは、はぁ、と聞こえるようにため息をついた。
「あれは、あっちが仕掛けて来ただけだ」
リカッロは腕の中からユーディリアを解放すると、自分の胸ポケットを探った。
「まったく、驚かせようと思っていたんだがな」
取り出した小さな箱をパカリと開ける。そこには円形にカットされた大粒のサファイアが入っていた。上質のものらしく、その色の深みに吸い込まれそうだった。
「これ……は?」
「交渉が難航して、何度も足を運ぶことになっちまった」
リカッロは一度言葉を切って、あー、と決まり悪そうに呻く。
「この間の夜会でつけてた耳飾りがあったろ? お前にはあんな毒々しいルビーじゃなく、こっちの方が似合うと思ったんだ。お前の瞳の色と同じ、な。ちょうどフェントンの所に丁度いいのがあるって聞いたから、こっそり交渉に行ったら、夫人が気に入ってるものだからって、渋りやがって……」
「わたし、の、ですか?」
「当たり前だろ。オレには似合わねぇ」
ありがとうございます、と立ち尽くすユーディリアの頭を、軽くぽんぽんと撫でるリカッロの顔に、珍しく優しい笑みが浮かぶ。
(わたしったら、何て誤解を……!)
ユーディリアは顔を真っ赤に染めた。穴があったら入ってしまいたい。いや、むしろ自分で穴を掘りたい。
「―――さて」
ユーディリアの頭を撫でる手に、僅かに力がこもった。
「お前の話はこれで終わりだな。じゃぁ、聞かせてもらおうか。―――どうやって、あの場所まで行った?」
赤くなっていたユーディリアの顔が、一気に青ざめる。
「え、っと……」
恐る恐る視線を上げれば、そこにはいつもの、からかうような笑み。
「馬のしっぽみてぇに髪を結い上げて、こんな服も城内じゃ見たことねぇなぁ?」
どこか剣呑な響きの声が「逃がさねぇぞコラ」と告げていた。
(きゃ―――っ!)
ユーディリアは絶叫し、助け手はないかと室内を見回すが、もう面白いものは見終わったとばかりに3人の姿はなかった。
ポツリ、と呟いてみると、丁寧にユーディリアの金色の髪を梳いていたメイド、ハンナがピクリと指を強張らせた。
「あなたも聞いているのね、ハンナ。……としたら、随分と噂も広まっているのかしら」
「ユーディリア様……」
憂いた表情を見せる年かさのメイド、ハンナだが、その心配をよそに、初めてその噂を耳にしたユーディリアの感想は(また面倒な)という、どこか判で押したような冷静なものだった。
「心配しないで。婚約者に愛人がいるのも、もう2回目ということになるもの。大して問題ではないわ。でも、貴族の方々や、国民に噂が流れないように手は打っておかないといけないかしら?」
サイドの髪を複雑に編みこむハンナは、どこかホッとしたような、それでもまだ懐疑的な眼差しで「それがよろしいかと存じます」と形式的な返答をする。
突然の政変でセクリアが属国となって浮き足立った国内にも、ようやく落ち着きのような雰囲気が出るようになっていた。夜会という貴族特有の情報交換もぼちぼち催されるようになったというのに、ここに来て絶好の噂話を提供するわけにはいかない。
ユーディリアはコバルトブルーの部屋着に着替え終わると、昨夜、刺しかけていた刺繍の木枠を手に取った。
『ちょ、そんな落ち着いている場合なのっ!?』
突如、現れたのはタレ目に泣きぼくろが印象的な女性だ。
「おはよう、ベリンダ。ハンナがいなくなるのを待っててくれてありがとう」
昨日、リカッロの部下であるザッカード青年から「失言」という形で情報を得た時には、辺りを構わず喚き散らしていた彼女だったが、一晩経って、ある程度落ち着いたようだった。
『あんなに好きなリカッロ王子が、浮気なんかしてるのに、どーして、どーしてそんなに落ち着いていられるって言うのよ~』
おそらく、自分よりも先にベリンダが取り乱したからこそ、平静を保っているような気がするが、それを口にするのは憚られた。
「それは、その、お互い好き合って結婚するわけでもないし、愛人は男の甲斐性だから、正妻としては大らかな気持ちで、っていうのが、政略結婚のたしなみだ、って教わっているし」
『それが間違いよ! 好きな男が、他の女の腰に手を回したり、耳元で愛を囁いたりしちゃうのよ?』
ベリンダの挙げる具体例に、ユーディリアの胸の奥が凍ってしまったかのように、すぅっと冷える。
『胸ばっかり大きくて頭スカスカな女に、ねぇ、奥さんはいいの? とか聞かれて、あいつとは、どうせ家同士が決めた間柄だからな。とか言っちゃうのよ! それが浮気ってもんよ?』
やたらと実感のこもったセリフに、恋に生きるベリンダは浮気されたのか浮気相手になったのかどっちだろう、と思わなくもない。
『それなのに、奥さんのところに帰ってきたら、オレにはお前だけだよハニーとか言っちゃうのよ! 男ってそういうもんよ!』
『そのあたりに、してもらえんか』
止まることのないベリンダのヒトリ浮気劇場に、やれやれといった調子で声をかけたのは将軍だった。
『世の中、そういう男もいることは認めるが、全てではないぞ?』
『でも、現に噂になってるじゃない!』
ぎゃんぎゃんと更に言い募るベリンダの声を聞き流しながら、ユーディリアはいつの間にか落としていた刺繍の木枠を拾おうと腰をかがめた。途端に、目からぽろり、と雫がこぼれ落ちる。
「っ」
いつの間に、涙をためていたのだろうか。
『お嬢様……?』
その様子に気付いたのか、リッキーがおそるおそる声をかけてくる。
『え、ちょっと、ユーリ?』
ベリンダが浮気男全般に対する毒を吐いていた口を閉じ、近づいて来る気配があった。
「……ごめんなさい。一人にしてもらえる?」
ユーディリアの声は、いつの間にか震えていた。
3人は反論することなく、その姿を消した。ベリンダだけは何かを言いかけていたようだが、将軍がその口を塞いで連れて行ってしまった。
ユーディリアは大きくため息をつくと、今度こそ木枠を拾い上げ、テーブルに乗せた。とても、刺繍の続きをするような気分ではない。
「噂なんて、信じたくないけど―――」
火のないところに煙は立たないと言う。
浮気相手とされているのは、城下で大きな力を持つ宝石商フェントンの後妻だった。最近、足しげく通っているという話である。
「自分の目で、確かめてみればいいのかしら」
確かめれば、気が済むだろうか。
もし、本当だったとしたら、自分は物分かりの良い正妻として振舞えるだろうか。
自信はない、けれど―――
「噂がこれ以上、無責任に広がらないためにも、真偽は確かめておくべきだわ」
自分を鼓舞するように声に出したユーディリアの胸が、ずきり、と悲鳴をあげた。
◇ ◆ ◇
『まったく、無茶をするのぅ』
頭の上の方でくくった金髪が揺れるたび、ユーディリアの首筋をくすぐった。
城下町に来るのは初めてではない。リカッロに露見しているかどうかは知らないが、何度か変装して城下に忍んで来たことはあった。
かつての婚約者ハルベルトが残した抜け道の情報と、将軍による巡回兵回避能力を使って。目的はささやかな気晴らしと、小遣い稼ぎと、視察だ。自国にいた頃のクセで、つい小物に刺繍を施してしまった彼女は、せっかくだから引き取ってくれる商人はいないかと城下の小間物屋を訪ね、リカッロに見咎められた時の言い訳のために噂話を集めているのである。
今日もついでとばかりに、仕上がったばかりの小物入れを5つばかし持ってきていた。
「おや、リディアちゃん、久しぶりだね」
「こんにちわ、ソーンさん。今日は小物入れなんだけど、どうかしら?」
何度か顔を合わせている店主は、「リディア」という女性をどこぞの男爵家のご令嬢と思い込んでいる。嫁入りの持参金やらに事欠くからという理由で持ち込みをしているが、それを信じてあげているふりだ。
(どうせ、おいしいお菓子なんかに消えているんだろう)
実際、何度か買い食いしている所を目撃している店主は、それでも黙っていようと決めた。
彼女の持ち込む品は、そこそこ目を惹くようで3日も経たずに売れてしまうのだ。時間が余っているからこその精緻な針遣いは、正直、自分の店で出すのは勿体無い気もするが、本人が納得しているようだから良いのだろう。
「こりゃまた、きれいなもんだね。1つあたり、このぐらいでどうだい?」
店主が指を3本立てて見せると、「それでいいわ」と彼女は頷く。いつもだったら、両手を叩いて喜ぶはずなのだが、今日はちょっと気分が沈んでいるようだ。
「今度は、春告げ鳥の意匠とかどうかな。結構人気があるんだ」
「春告げ鳥? そんな季節でもないのに?」
店主は彼女の前にいくつかの商品を並べて見せた。そこには大なり小なりエメラルドブルーの鳥が描かれている。
「こいつを入れた小物を見に付けてると、恋が実るってんで人気なんだよ。リディアちゃんは知らなかったのかい?」
「……恋が、実る。知らなかったわ」
少しだけ顔を歪めたが、すぐに「分かった。今度は春告げ鳥ね」と笑みを浮かべて見せた。
店主から硬貨を受け取り、ポーチにしまった「リディア」は、コーラルピンクのドレスを翻して店主の視界から去って行った。
『ねぇ、ほんとに行くの?』
ユーディリアに付き添って動くベリンダの言葉に、確かめに行くだけよ、と雑踏にまぎれるほどの小さな声で答える。
目指すのは、宝石商フェントンの邸だ。今日も一人で出かけてしまったと(ユーディリアに対しては)口が軽いザッカードから聞いている。
◇ ◆ ◇
露天が立ち並ぶ市場から歩いて半刻のところにその邸はあった。
裏通りからぐるり、と回って来たユーディリアは、リカッロの馬がいることを将軍に確認してある。
(ここに、いるのね)
フェントンの邸に通って来ているのは間違いない。問題はその目的だ。
どうやって出て来るのを待とうかと正門のある表通りに出たところで、玄関の大扉が開く音がしたと将軍から報告があった。
『見ない方が良いと思うがの』
将軍も心配をしているのだろう。そんな助言をしてくる。
『ちょ、女と一緒に出てきたわよ!』
塀の内側を覗くベリンダが、頼んでもいないのに実況を始めた。残念ながら、ユーディリアの位置からはとても見えない。だが、ベリンダの言葉を疑う理由もなかった。
『何か、親密そうに話して、あ、あの女、リカッロ王子の肩に手なんか置いて、何よあんなスカした微笑なんて浮かべちゃって、タラす気まんまんじゃないの?』
他人に男を取られたことがあるのか、やたらと私情を含んだ実況を聞きながら、ユーディリアの心臓がバクバクと踊り出した。
何かがあって欲しいのか、何もなく終わって欲しいのか、どっちなのか分からない。
『ここからリカッロ王子の表情が見えないのが痛いわねー。もっと近くまで寄ろうかしら……あぁぁーっ!』
突然の悲鳴に、ユーディリアの肩が大きく震えた。
『あの女、リカッロの襟元掴んで、唇、奪いやがったー!』
怒りのあまり、ベリンダの口調が荒々しいものになっている。
『この泥棒猫! 確定ね! かくなる上は、アタシがあの女にポルターガイストして脅して―――』
ベリンダの口から出てくる復讐方法はありきたりな物から、とてもおぞましいものまであって、傍らに居たリッキーが(半透明の幽霊だと言うのに)真っ青になるほどだった。
当のユーディリアと言えば、ベリンダの悪口雑言も耳に入らず、ただ立ち尽くしていた。
『ちょ、リカッロ王子が出てくるわよ、ユーリ!』
ベリンダに急かされ、ユーディリアは慌てて走り出した。
(まさか、本当だったなんて―――)
握った拳に冷たい汗がにじむ。
とりあえず、旦那の宝石商がこのことを承知なのか確認して、その上でしかるべき身分を与えて城にも出入りできるようにした方がいいのかしら。
いや、そもそもリカッロが夫人をどのぐらい愛してるのかによって、対処方法も変わってくるから―――
(愛し、て……)
そこまで考えて、ぱたり、と足が止まった。
浮かんで来た涙を乱暴に拭う。
心を落ち着けようと弾んだ息を整える。
いつの間にか露店街の端まで戻って来てしまった。
(とりあえず、帰ろう)
自室にいないことがバレたら、リカッロにどんな嫌味を言われるか分からない。
(リカッロ、に……)
喉の奥がくん、となるのを堪え、もう一度深呼吸をする。
「お嬢ちゃん、だいじょうぶか?」
目の前を遮るように、3人の男が立っていた。知らない顔だ。
「イヤなことがあったなら、愚痴でも聞こうか?」
「あっちに、いいカフェがあるんだよ」
『ちょ、やっばー』
ベリンダが、あちゃー、と額に手の甲を当てた。どの時代も、こういう手合いは変わらないのね、と呟く。
『やるか?』
将軍が待ってました、と脇に立った。ぶちのめす気満々で、殺気すら放っていた。
「ごめんなさい、戻らなければならないので、失礼します」
できるだけ穏便に終わらせたいユーディリアの気持ちと裏腹に、3人は彼女の行く手を通せんぼして遮る。見下ろす表情は、にやにやとしてしまりがない。完全になめられている。
ユーディリアは、大きく溜め息をついた。
人目はあるが、仕方がないと、将軍に許可を出そうとして―――
「オレの連れに何か用か? あぁ?」
すぐ後ろから聞こえた救い手の声に、―――逃げ出したくなった。
「なんだ、男が居たのかよ」
「面倒だな」
男達が目で相談をしている間に、後ろの声の主がユーディリアの腰に手を回した。
「とっとと去れよ。オレのオンナに色目使うな」
おそらく本気で威嚇したのだろう、3人の男がたじろぐ。
どうして、この人はこんなにガラが悪いんだろう。あぁ、下町で育ったとか言っていたっけ。そうか、このぐらいはお手のものなんだ。
ユーディリアは、もはやオオカミに食いつかれたエモノのようにぴくりとも動けないでいた。諦めの境地である。
ほどなく、ユーディリアに声をかけて来た3人組が追い払われた。
「―――で、お前は何やってんだ?」
腰に手を回されたまま、硬直したユーディリアはとても彼の顔を見ることができず、目を逸らした。
「こんな所で会うとは思いませんでしたわ。それも、そんな格好で」
「そりゃこっちのセリフだ。―――来い」
商家の子息と言われて違和感のない格好のリカッロに手首を掴まれ、男爵令嬢の格好をしたユーディリアが従う。力比べをして勝てるわけもないし、無理に逃げても、最終的に逃げ場はない。
人の少ない通りまで出て、リカッロの黒い軍馬に乗せられる。
「どこに、向かっていますの?」
「城に決まってんだろ。城下じゃぁ、どこに耳があるか分かんねぇからな。―――ん、目が赤いな。誰に泣かされた?」
「気のせいです」
まさか目の前の男に泣かされたとは言えず、ユーディリアは知らぬ存ぜぬを通す。
とりあえず虚勢は張っているが、この後はどう言い逃れるのが良いか、内心は大慌てだった。
◇ ◆ ◇
リカッロはともかく、ユーディリアの姿に目を丸くした門番がいたことを除けば、概ね問題なく部屋まで戻って来れた。
「……で?」
定位置となったカウチに尊大に腰をかけたリカッロは、ユーディリアに隣に座るよう手振りで示す。
視界の端で「ファイト!」と声をかけるベリンダは、どうやら手出し口出しをしてくれる気はないらしい。がっくりと落ち込みながら、とりあえずリカッロの指示に従う。
(な、何をどう話せばいいのか……)
目を泳がせていると、ベリンダが『先手必勝!先にキレたもん勝ち!』とアドバイスを叫ぶ。だが、この件について、あまり感情的に振舞うのもどうかと思う。政略結婚の正妻としては、やはり愛人には寛容にならないと、と教わっているからだ。
(そ、そう。寛容に)
ユーディリアは、上半身をねじってリカッロの方に向けた。心臓はバクバクと高鳴るどころか爆発しそうで、絶対に身体によくない鼓動を刻んでいる。
「わたしの方から先に話をさせてもらっても良いでしょうか?」
決意を込めて口にしたのに、これから始まる余興を楽しみにするような、そんな余裕の表情で「どうぞ」と答えが戻って来る。
「兵やメイドの間で、宝石商フェントンの後妻に通っていると噂になっているのはご存知ですか?」
「あぁ?」
怪訝な表情を浮かべ、ガラの悪い声に怯みそうになるのをぐっと堪えて続ける。
「もし、本気で通っているのでしたら、こちらとしても適当な身分を用意しないといけません。フェントンは豪商と言えば豪商ですが、王が通うとなれば、せめて男爵夫人ぐらいの地位を用意しなければ―――」
「ちょっと待て」
「そもそも、フェントン氏本人はご存知なのかしら。それによっても対応が変わってきます。場合によってはフェントン氏と交渉して―――」
「だから待て、話を進めるな!」
大声に、ユーリが思わず口を閉じた。
「くそ、誰だそんな噂流したヤツは……! いいか、ユーリ。それはデマだ。流言だ。一握りの真実も含んじゃいねぇ」
「でも、リカッロ。先ほど、フェントン氏のお邸にいらしたでしょう?」
ベリンダの実況を思い出し、ずきん、とユーディリアの胸が痛む。
(だめ、思い出しちゃだめ!)
震えそうになる唇に力を込め、涙を湛《たた》えそうになる瞳を押し留める。
「それは別件だ」
(―――別件)
淡々と答えるリカッロに、怒りにも似た感情が湧きあがる。
「玄関口で親しそうにお話をされたあげく、き、キスまでしても、別件と言いますの!」
ダメだ。もう限界だ。
立ち上がったユーディリアの手首を、リカッロが掴んだ。
「放してください」
「阿呆、誰が放すか」
力づくで引き戻され、顎を掴まれる。上げようとした悲鳴が、リカッロの唇で塞がれた。
「ふっ、ん、んんっ」
肩を掴み、胸板を叩くも、2度、3度と唇を食べられてしまう。さらに深く口付けられたところで、ユーディリアの反抗の手が止まった。
「落ち着いたか?」
「……卑怯です」
小声で反抗した途端、瞳からぽろり、と涙がこぼれた。
まったく、とリカッロがユーディリアの顔を自分の胸に押し付ける。
「尾行でもしてきたのか?」
「……いいえ、邸から出て来る所に居合わせただけです」
「どこから見ていた?」
「ベリンダが、門の上から覗いて、教えてくれました」
リカッロは、はぁ、と聞こえるようにため息をついた。
「あれは、あっちが仕掛けて来ただけだ」
リカッロは腕の中からユーディリアを解放すると、自分の胸ポケットを探った。
「まったく、驚かせようと思っていたんだがな」
取り出した小さな箱をパカリと開ける。そこには円形にカットされた大粒のサファイアが入っていた。上質のものらしく、その色の深みに吸い込まれそうだった。
「これ……は?」
「交渉が難航して、何度も足を運ぶことになっちまった」
リカッロは一度言葉を切って、あー、と決まり悪そうに呻く。
「この間の夜会でつけてた耳飾りがあったろ? お前にはあんな毒々しいルビーじゃなく、こっちの方が似合うと思ったんだ。お前の瞳の色と同じ、な。ちょうどフェントンの所に丁度いいのがあるって聞いたから、こっそり交渉に行ったら、夫人が気に入ってるものだからって、渋りやがって……」
「わたし、の、ですか?」
「当たり前だろ。オレには似合わねぇ」
ありがとうございます、と立ち尽くすユーディリアの頭を、軽くぽんぽんと撫でるリカッロの顔に、珍しく優しい笑みが浮かぶ。
(わたしったら、何て誤解を……!)
ユーディリアは顔を真っ赤に染めた。穴があったら入ってしまいたい。いや、むしろ自分で穴を掘りたい。
「―――さて」
ユーディリアの頭を撫でる手に、僅かに力がこもった。
「お前の話はこれで終わりだな。じゃぁ、聞かせてもらおうか。―――どうやって、あの場所まで行った?」
赤くなっていたユーディリアの顔が、一気に青ざめる。
「え、っと……」
恐る恐る視線を上げれば、そこにはいつもの、からかうような笑み。
「馬のしっぽみてぇに髪を結い上げて、こんな服も城内じゃ見たことねぇなぁ?」
どこか剣呑な響きの声が「逃がさねぇぞコラ」と告げていた。
(きゃ―――っ!)
ユーディリアは絶叫し、助け手はないかと室内を見回すが、もう面白いものは見終わったとばかりに3人の姿はなかった。
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