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14.ロイヤルな茶会(後)
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「その『土の栄養』の話なのだけれど、詳しく研究させてもいいかしら?」
「? 許可が必要なものなのでしょうか?」
「えぇ、経緯はどうあれ、貴女が――子爵領が発見した有益な情報でしょう? それなら情報に見合う褒章を贈りたいわ」
「あー……その、辞退させていただきます」
「どうして? こう言っては失礼でしょうけど、ギース子爵領は決して栄えているとは言えないでしょう?」
「研究結果を国全体に広めていただけたら、収穫量はきっと上がりますよね? そうしたらうちの領だけでなく、孤児院でお腹空かせる子も少しは減るかなぁ、と」
別に偽善でそういうことを言ってるんじゃない。お腹が減るのって悲しいし、お腹を減らしている子どもを見るのはもっと悲しい。そんな子を見たくないというエゴだ。あと、下手に功績とか言われて褒章貰ったら、目立つじゃん。私とかうちの領が。やっかみとかされても困るじゃん。これもエゴ。
「そんなに無欲だと、逆に心配になるわ」
「いえ、欲はございます。下手に目立ちたくないという欲ですけれど」
私の言葉に、妃殿下がふんわりと笑った。やばい。美女の微笑みとか破壊力半端ないんですけどー!
「権力が嫌いかしら?」
「いえいえ、ただ、権力を持つことのデメリットを受け入れる余裕がないだけの小心者です」
身の程をわきまえているとも言う。
「リリアン嬢は、利口なのね?」
「あまり、頭は良くないです」
「そういうのではないのよ? 王族ほど不自由なものはないと思うし、高位貴族も色々とがんじがらめなものよ。それが分からない人の、なんて多いこと……」
ふ、と遠い目をした妃殿下の拳がぐっと握られた。
(あー……、権力に目が眩んだ人とか殴り倒したくて仕方がないんだろうなぁ……)
高位貴族に生まれて王太子に嫁いだ運命というやつなのだろうか。もしかしたら、妃殿下も不幸な人なのかもしれない。心の中でこっそり涙する。
「そんなおバカさんたちを上から見下ろせる地位を、手放すつもりはないのだけれど」
違った。私の心の涙の行き場が消える。
「ふふ、本当に正直な人ね。そんな姿を見せられたら、庇護しないわけにいかないじゃない」
「お、おそれおおいことでございます」
「いいのよ。わたくしの庇護下にあると示さなければ、良からぬ考えの人がまとわりつきそうだもの。ヨナ・パークスの怒りを買うわけにはいかないわ」
今度は私が遠い目をしたくなった。
「やっぱり、現状がバレたら嫉妬とかやっかみとか多い、でしょうか……?」
「そうね。あの顔で、あの年齢で、ずば抜けた才能を持っている。ずっとどんな女性も寄せ付けなかったというのに、鄙びた領地の子爵令嬢がポッと出てきたら……想像つくでしょう?」
「想像したくありません……」
私の泣き言に、妃殿下がふふふ、と優雅に笑う。
「大丈夫よ。ステフ個人も、王家としても、彼の不興を買いたくないの。少なくとも彼が執着している間は庇護するから安心して」
「ありがとうございます……!」
妃殿下の優しさに涙が出るかと思った。有能な人材を無碍にできないという打算があるのは分かっているけれど、それでもこうして明言してくれる妃殿下には、五体投地で拝むしかない。だって、貴族のやっかみとか考えただけで怖すぎる。
「早速、侍女を呼ぶわね。あぁ、筆記の速い者がいるの。侍女が来てから、さっきの畑の話をもう少し詳しく聞かせてもらってもいいかしら?」
これがトップに立つ女の行動力か……。すごい。見習いたいけど多分むり。
この後、めっちゃ喋らされた。
「? 許可が必要なものなのでしょうか?」
「えぇ、経緯はどうあれ、貴女が――子爵領が発見した有益な情報でしょう? それなら情報に見合う褒章を贈りたいわ」
「あー……その、辞退させていただきます」
「どうして? こう言っては失礼でしょうけど、ギース子爵領は決して栄えているとは言えないでしょう?」
「研究結果を国全体に広めていただけたら、収穫量はきっと上がりますよね? そうしたらうちの領だけでなく、孤児院でお腹空かせる子も少しは減るかなぁ、と」
別に偽善でそういうことを言ってるんじゃない。お腹が減るのって悲しいし、お腹を減らしている子どもを見るのはもっと悲しい。そんな子を見たくないというエゴだ。あと、下手に功績とか言われて褒章貰ったら、目立つじゃん。私とかうちの領が。やっかみとかされても困るじゃん。これもエゴ。
「そんなに無欲だと、逆に心配になるわ」
「いえ、欲はございます。下手に目立ちたくないという欲ですけれど」
私の言葉に、妃殿下がふんわりと笑った。やばい。美女の微笑みとか破壊力半端ないんですけどー!
「権力が嫌いかしら?」
「いえいえ、ただ、権力を持つことのデメリットを受け入れる余裕がないだけの小心者です」
身の程をわきまえているとも言う。
「リリアン嬢は、利口なのね?」
「あまり、頭は良くないです」
「そういうのではないのよ? 王族ほど不自由なものはないと思うし、高位貴族も色々とがんじがらめなものよ。それが分からない人の、なんて多いこと……」
ふ、と遠い目をした妃殿下の拳がぐっと握られた。
(あー……、権力に目が眩んだ人とか殴り倒したくて仕方がないんだろうなぁ……)
高位貴族に生まれて王太子に嫁いだ運命というやつなのだろうか。もしかしたら、妃殿下も不幸な人なのかもしれない。心の中でこっそり涙する。
「そんなおバカさんたちを上から見下ろせる地位を、手放すつもりはないのだけれど」
違った。私の心の涙の行き場が消える。
「ふふ、本当に正直な人ね。そんな姿を見せられたら、庇護しないわけにいかないじゃない」
「お、おそれおおいことでございます」
「いいのよ。わたくしの庇護下にあると示さなければ、良からぬ考えの人がまとわりつきそうだもの。ヨナ・パークスの怒りを買うわけにはいかないわ」
今度は私が遠い目をしたくなった。
「やっぱり、現状がバレたら嫉妬とかやっかみとか多い、でしょうか……?」
「そうね。あの顔で、あの年齢で、ずば抜けた才能を持っている。ずっとどんな女性も寄せ付けなかったというのに、鄙びた領地の子爵令嬢がポッと出てきたら……想像つくでしょう?」
「想像したくありません……」
私の泣き言に、妃殿下がふふふ、と優雅に笑う。
「大丈夫よ。ステフ個人も、王家としても、彼の不興を買いたくないの。少なくとも彼が執着している間は庇護するから安心して」
「ありがとうございます……!」
妃殿下の優しさに涙が出るかと思った。有能な人材を無碍にできないという打算があるのは分かっているけれど、それでもこうして明言してくれる妃殿下には、五体投地で拝むしかない。だって、貴族のやっかみとか考えただけで怖すぎる。
「早速、侍女を呼ぶわね。あぁ、筆記の速い者がいるの。侍女が来てから、さっきの畑の話をもう少し詳しく聞かせてもらってもいいかしら?」
これがトップに立つ女の行動力か……。すごい。見習いたいけど多分むり。
この後、めっちゃ喋らされた。
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