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16.星雲の想い人
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「別役さんは美術部だっけ。やっぱり作品展示とか?」
「そうなるかな。美術部って、今の1年がいないから、新入生次第になるかもしれないけど」
「そうか。でも、作品展示だけだと楽でいいよね」
「その、星好きの人は、プラネタリウムから譲らなそう?」
「うーん、他の高校の天文部が力入れてやってるのを見ちゃったらしくて、燃えてるんだよね」
うわぁ、それは大変そうだ。その人が全部ぐいぐい引っ張ってくれるならまだ楽だろうけど、それでも一人で全部はできないだろうしね。
「だから、なんか上手く反論できる材料ないかなって」
「プラネタリウムに反対?」
「うーん、ちょっと今から始めても準備にかかる時間が読めないからさ。後輩の負担も大きいだろうし」
「……その人が、どうしてプラネタリウムをしたいのかってところから攻めるといいと思う」
「別役さん?」
あ、いけない。これって口を突っ込み過ぎだよね。あんまり自分の意見を押し付けるのはよくないよくない。押しが強いことで感じる不快感は、丹田くんで十分味わったんだ。反面教師ってやつ。
「なんか、いい方法あるの?」
「あー……、その、私、部外者だから、あんまり口出しはよくない、よね」
「いや、正直煮詰まってるから、なんでも言ってくれると助かる」
七ツ役くんを助けるためなら、そりゃ一肌でも二肌でも脱がないと! 俄然燃えてきた。
「うーん、あくまで私個人の意見だからね。期待しないでね」
誰かの意見に反論するなら、相手が何をどう考えているのかを知る必要がある……というのはお母さんのセリフだ。ただし、感情論で言っている場合はその限りではないらしいけど。
「純粋にやりたいというだけなら、反論っていうのは難しいかもしれないけど、文化祭の出し物なら、狙いを絞った上で説得するのがいいかな」
「狙い?」
「うん。たとえば、出し物を見た人に、もっと星に興味を持ってもらいたい、とか? 興味の入口なら星座にまつわる神話とか、深く興味を持ってもらいたいなら、星座の見つけ方、とか?」
「うんうん」
どうしよう。七ツ役くんが、私の話に興味を持って聞いてくれてる! ちょっと神様時間止めて! この七ツ役くんの顔を堪能するから! 心のスクショに永久保存だから!
「プラネタリウムって、えーと、手軽なのだったら穴開けるあれだよね」
「たぶん」
「そうすると、星雲とかって無理だよね。そこから攻められたりしない? 星座よりも星雲ってそれほどメジャーでないけど、分かりやすい形してるのもあるじゃない」
「おおー、なるほど」
七ツ役くんに天文の話をして『なるほど』いただきました! え、ちょっと待って。もしかして、私、今日死ぬの? それぐらい嬉しいんだけど!
「ちなみに別役さんって、星雲って言われたら何知ってる?」
「え? えぇと、バラ星雲ってあったよね? あと、馬頭星雲ぐらい、かな?」
「もえるき星雲は?」
「萌える気?」
私は首を傾げた。どうしよう。もしかして有名な星雲だったりするのかな。萌える……萌え系? 萌え系の星雲なの?
「あ、やっぱり知らないもんなんだね。ちょっと待って。確か、ここのあたりに――――」
七ツ役くんは重たそうな星の写真集を下の方の棚から引っ張り出すと、パラパラとめくり出した。もしかして、このあたりの本棚を把握してたりするんだろうか。立ち読み歴長いの?
「あぁ、これこれ」
「燃える木星雲?」
「さっき別役さんが言った馬頭観音の近くにあるんだ。同じように光の部分じゃなくて影の部分が木の幹っぽく見えるでしょう」
「うん、幹の周囲が光ってるから、確かに木が燃えてるように見えるかも。面白いね」
私の感想に、七ツ役くんは少し笑って頷いてくれた。
「星雲は確かにあまり知られてないし、そっちで攻めてみてもいいかもしれない。面白い形のもあるしね。ありがとう、参考になったよ」
「どういたしまして?」
ありがとう! 七ツ役くんから「ありがとう」いただきましたー! きゃふー! ドンドンパフパフ! 今日はお赤飯だー! いや、しないけど。
「教えてくれた|星検のおかげで、私も星には詳しくなったし、これぐらいお返ししなきゃ」
「お返しって、もともと星に興味がなかったらうちの部の展示なんて来ないでしょ」
「あはは……」
ごめんなさい。最初はちょっと時間つぶしのために行ったなんて言えないわ、これ。言っても七ツ役くんなら笑って許してくれそうだけどさ。
「なぁ、七ツ役。ホントにユズが来たりするわけー? ……って、うぉ! ホントに居た!」
言っていい? なんでここにいるのかな?
ねぇ、神様? 実は私のこと嫌いでしょ? これだけ七ツ役くんと楽しく語らってるっていうのに、完全お邪魔虫がいるとかさ、どういうこと? 上げて落とす作戦なの? 神てめぇ!
「そうなるかな。美術部って、今の1年がいないから、新入生次第になるかもしれないけど」
「そうか。でも、作品展示だけだと楽でいいよね」
「その、星好きの人は、プラネタリウムから譲らなそう?」
「うーん、他の高校の天文部が力入れてやってるのを見ちゃったらしくて、燃えてるんだよね」
うわぁ、それは大変そうだ。その人が全部ぐいぐい引っ張ってくれるならまだ楽だろうけど、それでも一人で全部はできないだろうしね。
「だから、なんか上手く反論できる材料ないかなって」
「プラネタリウムに反対?」
「うーん、ちょっと今から始めても準備にかかる時間が読めないからさ。後輩の負担も大きいだろうし」
「……その人が、どうしてプラネタリウムをしたいのかってところから攻めるといいと思う」
「別役さん?」
あ、いけない。これって口を突っ込み過ぎだよね。あんまり自分の意見を押し付けるのはよくないよくない。押しが強いことで感じる不快感は、丹田くんで十分味わったんだ。反面教師ってやつ。
「なんか、いい方法あるの?」
「あー……、その、私、部外者だから、あんまり口出しはよくない、よね」
「いや、正直煮詰まってるから、なんでも言ってくれると助かる」
七ツ役くんを助けるためなら、そりゃ一肌でも二肌でも脱がないと! 俄然燃えてきた。
「うーん、あくまで私個人の意見だからね。期待しないでね」
誰かの意見に反論するなら、相手が何をどう考えているのかを知る必要がある……というのはお母さんのセリフだ。ただし、感情論で言っている場合はその限りではないらしいけど。
「純粋にやりたいというだけなら、反論っていうのは難しいかもしれないけど、文化祭の出し物なら、狙いを絞った上で説得するのがいいかな」
「狙い?」
「うん。たとえば、出し物を見た人に、もっと星に興味を持ってもらいたい、とか? 興味の入口なら星座にまつわる神話とか、深く興味を持ってもらいたいなら、星座の見つけ方、とか?」
「うんうん」
どうしよう。七ツ役くんが、私の話に興味を持って聞いてくれてる! ちょっと神様時間止めて! この七ツ役くんの顔を堪能するから! 心のスクショに永久保存だから!
「プラネタリウムって、えーと、手軽なのだったら穴開けるあれだよね」
「たぶん」
「そうすると、星雲とかって無理だよね。そこから攻められたりしない? 星座よりも星雲ってそれほどメジャーでないけど、分かりやすい形してるのもあるじゃない」
「おおー、なるほど」
七ツ役くんに天文の話をして『なるほど』いただきました! え、ちょっと待って。もしかして、私、今日死ぬの? それぐらい嬉しいんだけど!
「ちなみに別役さんって、星雲って言われたら何知ってる?」
「え? えぇと、バラ星雲ってあったよね? あと、馬頭星雲ぐらい、かな?」
「もえるき星雲は?」
「萌える気?」
私は首を傾げた。どうしよう。もしかして有名な星雲だったりするのかな。萌える……萌え系? 萌え系の星雲なの?
「あ、やっぱり知らないもんなんだね。ちょっと待って。確か、ここのあたりに――――」
七ツ役くんは重たそうな星の写真集を下の方の棚から引っ張り出すと、パラパラとめくり出した。もしかして、このあたりの本棚を把握してたりするんだろうか。立ち読み歴長いの?
「あぁ、これこれ」
「燃える木星雲?」
「さっき別役さんが言った馬頭観音の近くにあるんだ。同じように光の部分じゃなくて影の部分が木の幹っぽく見えるでしょう」
「うん、幹の周囲が光ってるから、確かに木が燃えてるように見えるかも。面白いね」
私の感想に、七ツ役くんは少し笑って頷いてくれた。
「星雲は確かにあまり知られてないし、そっちで攻めてみてもいいかもしれない。面白い形のもあるしね。ありがとう、参考になったよ」
「どういたしまして?」
ありがとう! 七ツ役くんから「ありがとう」いただきましたー! きゃふー! ドンドンパフパフ! 今日はお赤飯だー! いや、しないけど。
「教えてくれた|星検のおかげで、私も星には詳しくなったし、これぐらいお返ししなきゃ」
「お返しって、もともと星に興味がなかったらうちの部の展示なんて来ないでしょ」
「あはは……」
ごめんなさい。最初はちょっと時間つぶしのために行ったなんて言えないわ、これ。言っても七ツ役くんなら笑って許してくれそうだけどさ。
「なぁ、七ツ役。ホントにユズが来たりするわけー? ……って、うぉ! ホントに居た!」
言っていい? なんでここにいるのかな?
ねぇ、神様? 実は私のこと嫌いでしょ? これだけ七ツ役くんと楽しく語らってるっていうのに、完全お邪魔虫がいるとかさ、どういうこと? 上げて落とす作戦なの? 神てめぇ!
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