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02.地学天文部の想い人
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「はぁ……。今日は散々だったよ」
帰宅して自分の部屋にカバンを置いた私は、脱力してベッドに倒れ込んだ。
数学の苦手な私が理系コースを志望する理由……まぁ、その、気になる相手が理系コースを志望することが分かりきってるから、なんだけど。
我ながら不純な動機だとは思う。でも、うちの親は「子供を(自分がなれなかった)理系に育てたい」と豪語する人間なので、私が理系コースを選択したいと言ったら、万歳で応えてくれた。
いや、うちの親のことなんてどうでもいい。
気になる相手、いや、もうぶっちゃけてしまおう。片想いの相手は同じクラスの七ツ役玲央くん。
思い出せば、1年目の文化祭で私は初めて彼を意識した。
あのとき、私は時間潰しのために地学天文部による惑星の解説展示をぼんやり眺めていたんだった。いや、木星の模様ってマーブリング使って描けたりしないかなぁ、なんてどうでもいいことを考えていたかもしれない。
展示を見ていた私に声を掛けてきたのが、同じ1年の七ツ役くんだった。
「惑星に興味があるの? 詳しい説明いる?」
もしかしたら、同じく当番のために教室にいた先輩から背中を押されただけかもしれない。そのぐらいぶっきらぼうな声だったから。
そのときの私は、まだクラスに馴染んでいなくて、同じ美術部の梓ちゃんとしかつるんでいなかった。だから、梓ちゃんのクラス当番が終わるまでまだ時間があった。それだけの理由で頷いた。今思えば、グッジョブだったと思う。
そのときは別に惑星なんてそんなに興味のなかった私だけど、七ツ役くんの丁寧な……というより、熱のこもった解説で、すっかり虜になってしまった。もちろん、七ツ役くんのだ。あんない目をキラキラさせて惑星のことを教えてくれて、ちょっと私が首を傾げたのも見逃さずに質問を促してくれて、それも分かりやすく身近な例を使って説明してくれて……なんていうか、分かりやすく言うと落ちちゃったんだよねぇ。
ちなみにあの後、地学天文部に美術部と兼部で入ろうかめちゃくちゃ迷った。結局、活動曜日がかぶってたから断念したけど。
「さすがに梓ちゃんと別れるのは無理だったんだよねぇ」
ぽつりと呟いて、私は制服を脱いでハンガーに掛けた。この制服を着始めてからもう1年半、肘の部分やスカートのお尻の部分がちょっとテカり始めているのが分かるようになってきた。
最初に七ツ役くんと会ったのが6月にやった1年目の文化祭だから、あの頃はまだ制服も綺麗だったんだよね。思い出すだけで懐かしいし、あの時の七ツ役くんの真面目な顔は今でも鮮明に瞼に焼き付いてる。
2年のときに同じクラスになったときは、マジで神様に感謝した。五体投地してもいいぐらいだった。
もちろん2年目の文化祭だって、ちゃんと地学天文部の展示に行ったよ。フェーン現象をきりっと解説する七ツ役くんの横顔はばっちり心のスクショにとってある。本当なら引き延ばして現像したいぐらいだけど、残念ながら今の技術でそれはできないんだ。
七ツ役くんは同じクラスになった私のことをちゃんと認識してくれていて、「去年も確か来てたよな? 別役さんも興味あるの?なんて……、なんて……!
ついクッションをバシバシと叩いてしまった。いや、数少ない七ツ役くんから話しかけてくれた想い出だし。
同じクラスになって分かったことは、男同士でつるむことが多くて女の影がないことと、気象予報士を目指していることぐらい。
だから私はできるだけ近くにいたいと思って、同じ気象予報士を目指そうと思っているんだけど、そこから先がまた問題で……。
「柚香―? そろそろご飯だから下りてらっしゃい」
「はーい!」
お母さんの声に、私はリビングへと向かった。この匂いから察するに、今日の夕飯のメインはハンバーグ!
「お皿ならべて、自分のご飯は自分でよそいなさいね」
「はーい」
お父さんはまだ帰宅してないし、お兄ちゃんは遠くの大学に通ってる一人暮らし生活なので、だいたい私とお母さんの二人で夕食だ。お兄ちゃんがいなくなってからしばらくは何か寂しかったけど、今はもう慣れた。
「そういえば、あんた、進路の紙は出したの?」
「う~ん、実は、まだ迷ってるよいうか」
「理系コースって言ってたじゃない」
「ぐ、それが、美術部の先輩に理系コースの話を聞いたら、その、ちょっと尻込みしたというか……」
そうなのだ。
あれから青木先輩に数Ⅲ、数C、物理の教科書を見せてもらったのだけど、どうにも頭痛がする内容だったのだ。
そもそも私は物理という教科が好きになれない。どうしてボールを投げて跳ね返っただけのことを、わざわざ公式を使って小難しくしなければならないのか、さっぱり理解できない。
高校受験のときだって、理科は物理分野が鬼門だった。同中の友人は「公式にあてはめればいいだけじゃん。楽勝、楽勝」と言っていたし、読解力には自信があるからどの数値が公式のどの部分に当てはめるのか判断することもできた。だけど、そもそも公式そのものに納得していないせいで、どうしたって考え込んでしまうのだ。そんな私を友人は「むしろ物理学者に向いてるんじゃない?」と評価していたけれど、そもそも好きになれない分野を専門にするなんて無理な話でしょ。それを高校になっても繰り返すなんてとてもとても。
数学だって、青木先輩の話では、とっつきにくいという話だ。これも先輩に教科書を見せてもらいながら聞いた話だけど、二乗してマイナスになる値とか、行列とかいう謎の()も理解しがたい。どうして3行×4列とかに数字が並んでるのか。何に使うのかさっぱり不明な数値だの形だのを操るなんて、考えただけでも頭痛が痛い。ベクトルだって、中学のときにやった力の合成だの分解だのを思い出して何とか乗り越えたというのに、これ以上意味不明なことを追加するなんてもっての他だ。
「調べたら、気象予報士を目指すだけなら、無理に理学部とか行く必要がないんだって」
「そうなの? だって、地学って理科なんでしょ?」
これだ。
数学と理科を避けて通ったと自分で言っているお母さんは、私を理系に育てたいと言ったわりには放任なんだ。まぁ、この年になって色々調べてサポートしてもらわないと進路決められない、なんて甘えたことは言わないけどさ。でも、ちょっと調べてもらえたら、話がスムーズに進むのにな、って思わなくもない。
「大学によっては文学部の中にそういうコースがあるところもあるんだって」
「でも、国家試験のことを考えたら、しっかり高校のうちから勉強しておいた方が有利なんじゃないの?」
「う、ん、そうかもしれないけど……」
「それに、例の大学目指すって言ってたじゃない」
「目指してもいいかな、って言っただけだよ」
そうなのだ。「気象予報士になるには」なんて検索をかけたときに、一番最初に出てくるエリート国家公務員養成大学のことを口にしてしまったのだ。
だって仕方がないじゃない。そんな難しい大学だなんて知らなかったし、何より、その、七ツ役くんがそこを目指してるって知って浮かれてたんだから。
「うまく入れたら、給料だってもらえるんでしょ? ダメ元で頑張ってみればいいじゃない」
「簡単に言うけどさ……」
ちゃんと成績表は見せてるんだから、お母さんだって私の数学の成績を知ってるはずなのに、厳しいんじゃないかと思う。
「まぁ、あんたの将来なんだから、あんたがちゃんと考えなさい。――――それより、今日の職場での話なんだけど」
これ以上この話題を続けても進まないと分かったのか、お母さんは全然違う話を持ち出した。
その後は、お母さんの職場であったコワい話~お局と新人のジェネレーションギャップと無理解と嫉妬のごった煮?課長は見た!帳簿管理の引継ぎの裏に潜む女のバトル!~を聞いて、思わずハンバーグが美味しくなくなったりもしたけれど、なかなか面白かったのでよしとする。でも怖いから、あんまりそういう確執の少ないところで働きたいと思った。いや、本当に。
帰宅して自分の部屋にカバンを置いた私は、脱力してベッドに倒れ込んだ。
数学の苦手な私が理系コースを志望する理由……まぁ、その、気になる相手が理系コースを志望することが分かりきってるから、なんだけど。
我ながら不純な動機だとは思う。でも、うちの親は「子供を(自分がなれなかった)理系に育てたい」と豪語する人間なので、私が理系コースを選択したいと言ったら、万歳で応えてくれた。
いや、うちの親のことなんてどうでもいい。
気になる相手、いや、もうぶっちゃけてしまおう。片想いの相手は同じクラスの七ツ役玲央くん。
思い出せば、1年目の文化祭で私は初めて彼を意識した。
あのとき、私は時間潰しのために地学天文部による惑星の解説展示をぼんやり眺めていたんだった。いや、木星の模様ってマーブリング使って描けたりしないかなぁ、なんてどうでもいいことを考えていたかもしれない。
展示を見ていた私に声を掛けてきたのが、同じ1年の七ツ役くんだった。
「惑星に興味があるの? 詳しい説明いる?」
もしかしたら、同じく当番のために教室にいた先輩から背中を押されただけかもしれない。そのぐらいぶっきらぼうな声だったから。
そのときの私は、まだクラスに馴染んでいなくて、同じ美術部の梓ちゃんとしかつるんでいなかった。だから、梓ちゃんのクラス当番が終わるまでまだ時間があった。それだけの理由で頷いた。今思えば、グッジョブだったと思う。
そのときは別に惑星なんてそんなに興味のなかった私だけど、七ツ役くんの丁寧な……というより、熱のこもった解説で、すっかり虜になってしまった。もちろん、七ツ役くんのだ。あんない目をキラキラさせて惑星のことを教えてくれて、ちょっと私が首を傾げたのも見逃さずに質問を促してくれて、それも分かりやすく身近な例を使って説明してくれて……なんていうか、分かりやすく言うと落ちちゃったんだよねぇ。
ちなみにあの後、地学天文部に美術部と兼部で入ろうかめちゃくちゃ迷った。結局、活動曜日がかぶってたから断念したけど。
「さすがに梓ちゃんと別れるのは無理だったんだよねぇ」
ぽつりと呟いて、私は制服を脱いでハンガーに掛けた。この制服を着始めてからもう1年半、肘の部分やスカートのお尻の部分がちょっとテカり始めているのが分かるようになってきた。
最初に七ツ役くんと会ったのが6月にやった1年目の文化祭だから、あの頃はまだ制服も綺麗だったんだよね。思い出すだけで懐かしいし、あの時の七ツ役くんの真面目な顔は今でも鮮明に瞼に焼き付いてる。
2年のときに同じクラスになったときは、マジで神様に感謝した。五体投地してもいいぐらいだった。
もちろん2年目の文化祭だって、ちゃんと地学天文部の展示に行ったよ。フェーン現象をきりっと解説する七ツ役くんの横顔はばっちり心のスクショにとってある。本当なら引き延ばして現像したいぐらいだけど、残念ながら今の技術でそれはできないんだ。
七ツ役くんは同じクラスになった私のことをちゃんと認識してくれていて、「去年も確か来てたよな? 別役さんも興味あるの?なんて……、なんて……!
ついクッションをバシバシと叩いてしまった。いや、数少ない七ツ役くんから話しかけてくれた想い出だし。
同じクラスになって分かったことは、男同士でつるむことが多くて女の影がないことと、気象予報士を目指していることぐらい。
だから私はできるだけ近くにいたいと思って、同じ気象予報士を目指そうと思っているんだけど、そこから先がまた問題で……。
「柚香―? そろそろご飯だから下りてらっしゃい」
「はーい!」
お母さんの声に、私はリビングへと向かった。この匂いから察するに、今日の夕飯のメインはハンバーグ!
「お皿ならべて、自分のご飯は自分でよそいなさいね」
「はーい」
お父さんはまだ帰宅してないし、お兄ちゃんは遠くの大学に通ってる一人暮らし生活なので、だいたい私とお母さんの二人で夕食だ。お兄ちゃんがいなくなってからしばらくは何か寂しかったけど、今はもう慣れた。
「そういえば、あんた、進路の紙は出したの?」
「う~ん、実は、まだ迷ってるよいうか」
「理系コースって言ってたじゃない」
「ぐ、それが、美術部の先輩に理系コースの話を聞いたら、その、ちょっと尻込みしたというか……」
そうなのだ。
あれから青木先輩に数Ⅲ、数C、物理の教科書を見せてもらったのだけど、どうにも頭痛がする内容だったのだ。
そもそも私は物理という教科が好きになれない。どうしてボールを投げて跳ね返っただけのことを、わざわざ公式を使って小難しくしなければならないのか、さっぱり理解できない。
高校受験のときだって、理科は物理分野が鬼門だった。同中の友人は「公式にあてはめればいいだけじゃん。楽勝、楽勝」と言っていたし、読解力には自信があるからどの数値が公式のどの部分に当てはめるのか判断することもできた。だけど、そもそも公式そのものに納得していないせいで、どうしたって考え込んでしまうのだ。そんな私を友人は「むしろ物理学者に向いてるんじゃない?」と評価していたけれど、そもそも好きになれない分野を専門にするなんて無理な話でしょ。それを高校になっても繰り返すなんてとてもとても。
数学だって、青木先輩の話では、とっつきにくいという話だ。これも先輩に教科書を見せてもらいながら聞いた話だけど、二乗してマイナスになる値とか、行列とかいう謎の()も理解しがたい。どうして3行×4列とかに数字が並んでるのか。何に使うのかさっぱり不明な数値だの形だのを操るなんて、考えただけでも頭痛が痛い。ベクトルだって、中学のときにやった力の合成だの分解だのを思い出して何とか乗り越えたというのに、これ以上意味不明なことを追加するなんてもっての他だ。
「調べたら、気象予報士を目指すだけなら、無理に理学部とか行く必要がないんだって」
「そうなの? だって、地学って理科なんでしょ?」
これだ。
数学と理科を避けて通ったと自分で言っているお母さんは、私を理系に育てたいと言ったわりには放任なんだ。まぁ、この年になって色々調べてサポートしてもらわないと進路決められない、なんて甘えたことは言わないけどさ。でも、ちょっと調べてもらえたら、話がスムーズに進むのにな、って思わなくもない。
「大学によっては文学部の中にそういうコースがあるところもあるんだって」
「でも、国家試験のことを考えたら、しっかり高校のうちから勉強しておいた方が有利なんじゃないの?」
「う、ん、そうかもしれないけど……」
「それに、例の大学目指すって言ってたじゃない」
「目指してもいいかな、って言っただけだよ」
そうなのだ。「気象予報士になるには」なんて検索をかけたときに、一番最初に出てくるエリート国家公務員養成大学のことを口にしてしまったのだ。
だって仕方がないじゃない。そんな難しい大学だなんて知らなかったし、何より、その、七ツ役くんがそこを目指してるって知って浮かれてたんだから。
「うまく入れたら、給料だってもらえるんでしょ? ダメ元で頑張ってみればいいじゃない」
「簡単に言うけどさ……」
ちゃんと成績表は見せてるんだから、お母さんだって私の数学の成績を知ってるはずなのに、厳しいんじゃないかと思う。
「まぁ、あんたの将来なんだから、あんたがちゃんと考えなさい。――――それより、今日の職場での話なんだけど」
これ以上この話題を続けても進まないと分かったのか、お母さんは全然違う話を持ち出した。
その後は、お母さんの職場であったコワい話~お局と新人のジェネレーションギャップと無理解と嫉妬のごった煮?課長は見た!帳簿管理の引継ぎの裏に潜む女のバトル!~を聞いて、思わずハンバーグが美味しくなくなったりもしたけれど、なかなか面白かったのでよしとする。でも怖いから、あんまりそういう確執の少ないところで働きたいと思った。いや、本当に。
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