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18.俺、ツンツンされる
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「だいたい、どうして誰も何も言わないのよ……。たとえ殿下のためだからって、やっていいことと悪いことがあるわよね……」
マルチアはぶつぶつと文句を呟くが、しっかり手が動いているので、俺は擂ってもらったリンゴを鍋に投入してオーツ麦とミルクと一緒に煮る。いい感じにドロっとしてきた。シナモンも振っておこう。
「ねぇ、本当にそれ美味しいの?」
「好き嫌いはあるかもしれないが、普通に美味しいぞ? まぁ見た目は微妙に思えるかもしれないけどな」
蜂蜜で味を調えると、俺は器にポリッジを盛り、スライスしたリンゴとナッツバターを添えてマルチアに差し出す。
「何?」
「何って、味見するか?」
味見って量じゃない、とかぶつぶつ言いながら器を受け取ったマルチアは、匙ですくって一口食べると、その濃紺の瞳を瞬かせた。そのまま二度、三度と口に匙を動かす。
「どうだろう?」
「……! ま、まぁ、悪くないんじゃないの?」
悪くないとか言ったその口で、もぐもぐし続けているので問題ない出来だというのは重々理解できた。味覚に大きな違いがあったらどうしようかと思ったが、魔族も人間も美味しいと感じる尺度はあまり違わないらしい。……というか、今まで聞いた食事当番の作った数々の料理(?)の話を総合すれば、俺程度でも美味しいと思ってくれるレベルだろう。だって、じゃがいもを茹でただけ(+お好みで塩どうぞ)を料理と言っていいのか悩むし。
「それじゃ、俺は魔力測定に行ってくるな。食べ終わった皿は洗っておいてくれ」
「え、うん、……え?」
なんだか困惑した様子だったが、「うん」という了承は含まれていたから問題ないだろう。あのまま厨房に残っていたら絶対になにがしかのイチャモンをつけられそうだったから、俺はさっさと逃げた。
――――まぁ、逃げた先でジジさんの「どうしてこうなるんだっ!?」ていう罵倒が待っていたんだけど。
§ § §
「それにしても、ジャガイモ多いよなぁ……」
使い勝手が良いのか、はたまた保存が利くからなのかは知らないが、やたらとジャガイモが目につく。もしかしたら安価なのか?
人参とジャガイモを蒸しながら、トマトを湯むきする。そういえば氷室の食材が増えていたのはなんだったんだと思いつつ、肉は何を使おうかと考える。
「ちょ、ちょっと、もう作り始めてるわけ!?」
厨房の入り口に姿を見せたのは、マルチアだ。実験の最中に何かあったらしく、その青銀の髪先が焦げていた。
「厨房の掃除が丁度一段落したから作り始めようと思って……。マルチアは研究もあるんだろうし、別に最初から手伝わなくても大丈夫だぞ?」
「アタシが食事当番なんだから、作るのが当たり前じゃない! むしろ手伝いはアンタの方でしょ!」
「いや、なんか、俺がこの先ずっと料理担当になりそうなんだ。ここの設備とか決まり事に慣れるまでは食事当番の人と一緒に作業するが、そこから先は俺一人の予定らしい」
「予定って、誰がそんなの決めたのよ。アタシは聞いてないわよ!」
「殿下にそう言われたんだが」
「……」
すごいな、殿下。研究員とそれほど密にコミュニケーションとってる雰囲気じゃないのに、マルチアが黙った。
マルチアはぶつぶつと文句を呟くが、しっかり手が動いているので、俺は擂ってもらったリンゴを鍋に投入してオーツ麦とミルクと一緒に煮る。いい感じにドロっとしてきた。シナモンも振っておこう。
「ねぇ、本当にそれ美味しいの?」
「好き嫌いはあるかもしれないが、普通に美味しいぞ? まぁ見た目は微妙に思えるかもしれないけどな」
蜂蜜で味を調えると、俺は器にポリッジを盛り、スライスしたリンゴとナッツバターを添えてマルチアに差し出す。
「何?」
「何って、味見するか?」
味見って量じゃない、とかぶつぶつ言いながら器を受け取ったマルチアは、匙ですくって一口食べると、その濃紺の瞳を瞬かせた。そのまま二度、三度と口に匙を動かす。
「どうだろう?」
「……! ま、まぁ、悪くないんじゃないの?」
悪くないとか言ったその口で、もぐもぐし続けているので問題ない出来だというのは重々理解できた。味覚に大きな違いがあったらどうしようかと思ったが、魔族も人間も美味しいと感じる尺度はあまり違わないらしい。……というか、今まで聞いた食事当番の作った数々の料理(?)の話を総合すれば、俺程度でも美味しいと思ってくれるレベルだろう。だって、じゃがいもを茹でただけ(+お好みで塩どうぞ)を料理と言っていいのか悩むし。
「それじゃ、俺は魔力測定に行ってくるな。食べ終わった皿は洗っておいてくれ」
「え、うん、……え?」
なんだか困惑した様子だったが、「うん」という了承は含まれていたから問題ないだろう。あのまま厨房に残っていたら絶対になにがしかのイチャモンをつけられそうだったから、俺はさっさと逃げた。
――――まぁ、逃げた先でジジさんの「どうしてこうなるんだっ!?」ていう罵倒が待っていたんだけど。
§ § §
「それにしても、ジャガイモ多いよなぁ……」
使い勝手が良いのか、はたまた保存が利くからなのかは知らないが、やたらとジャガイモが目につく。もしかしたら安価なのか?
人参とジャガイモを蒸しながら、トマトを湯むきする。そういえば氷室の食材が増えていたのはなんだったんだと思いつつ、肉は何を使おうかと考える。
「ちょ、ちょっと、もう作り始めてるわけ!?」
厨房の入り口に姿を見せたのは、マルチアだ。実験の最中に何かあったらしく、その青銀の髪先が焦げていた。
「厨房の掃除が丁度一段落したから作り始めようと思って……。マルチアは研究もあるんだろうし、別に最初から手伝わなくても大丈夫だぞ?」
「アタシが食事当番なんだから、作るのが当たり前じゃない! むしろ手伝いはアンタの方でしょ!」
「いや、なんか、俺がこの先ずっと料理担当になりそうなんだ。ここの設備とか決まり事に慣れるまでは食事当番の人と一緒に作業するが、そこから先は俺一人の予定らしい」
「予定って、誰がそんなの決めたのよ。アタシは聞いてないわよ!」
「殿下にそう言われたんだが」
「……」
すごいな、殿下。研究員とそれほど密にコミュニケーションとってる雰囲気じゃないのに、マルチアが黙った。
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