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07.俺、驚かれる
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「無属性? 何も属性を帯びてないのか?」
「魔力量は普通以下、いや、人間にしては多いのか? 誰か人間の平均データ覚えてるヤツいるか?」
「どの属性も帯びてないなんて……人間はみんなそうなのか?」
「貧弱な結果だな」
最後の辛辣なセリフは置いておくとして、概ね研究員たちが気になっているのは、俺の魔力量と属性らしい。
俺の居た国では、一定の年齢になると魔力量を測り、申告することになっている。魔法の才がある者は、平民であればその時点で国の機関に引き取られ、魔法使いとして徹底的に修行させられる。俺も、6歳になったときに魔法の才がないかと期待したが、結果は人並。延々とこき使われるルートが決まったわけだ。
「魔力量ってどのぐらいだったんだ?」
「あぁ、123だな」
「123!?」
魔力量が100を超えれば、いっぱしの魔法使いとして通用するレベルだと聞いたことがある。俺はいつの間にか隠された才能を開花させて……
「そんなに驚くことか? 100など大した魔法も使えずに枯渇するだろうに」
「い、いや、魔族はどうか知らないが、俺の居た国じゃ、100もあれば魔法使いとして十分に生計を立てていけるって聞いたことがあるぞ? そもそも、俺は6歳のときに測ったときは、15だったと聞いているんだが」
俺の発言に、研究員たちが目を丸くするのが見えた。口々に囁かれるのは、100程度で、と人間の基準に驚くものと、子供の頃にたった15しかなかったという事実についてだ。
「ねー、ってことは、ミケが魔晶石を作ったらー、全くの無属性のができるってことー?」
見学に来ていた白髪ツインテールのお嬢さんの言葉に、エンツォが厳しい目を向けた。
「シンシア、午前中は測定だけだぞ」
「って言ったってー、魔晶石作るぐらいいいじゃん? 10ぐらいだったら誤差でしょー?」
「それは魔族にとって、だろう。100のうちの10では大きいぞ」
「でも、魔力の回復速度だって測定した方がいいじゃん?」
「……それは、そうだが」
エンツォはボードを持ったままの小柄な研究員をちらりと窺う。ミモという名前のその研究員が頷くのを見て、「10だけなら」と許可を出した。
もしかして、あのちっこい子供みたいな方が上司だったりするのか? いやいやまさか。
「ミケーレ、こっちに来てくれ」
「あ、あぁ」
エンツォに言われ、壁際に置いてあった謎のオブジェの前まで歩く。手で掴めるぐらいの大きな黒い球が丸い筒で下から支えられ、筒の反対側には受け皿のようなものがある、そんな謎物体だ。いや、この研究室にはそんな謎物体がたくさんあるんだけど。
エンツォは筒にある目盛りを操作すると、俺に向き直った。
「この玉を握ってくれ。もし、気持ち悪いとかそういう症状が出たら遠慮なく言ってくれて構わない」
「そういう症状が出るものなのか?」
「いや、人間が使うのは初めてだからな。魔力が10吸われる程度だから問題ないはずだが、万が一のこともある」
「お。おぅ……」
万が一、なんて言われてしまうとかえって緊張してしまうが、123あるうちの10なら、確かに問題ないだろう。1割にも満たないんだし。
俺が玉に手を置くと、筒からころり、と透明なガラス玉がこぼれ出た。途端に、おぉ、というどよめきが。今日はこんなんばっかりだな。
「すごー! 濁りもない本当に透明な魔晶石ができたー!」
一番声が大きいのは、あの白髪ツインテール――シンシアだ。全くの無属性というのは珍しいらしく、「欲しいなー、欲しいなー」とボヤいてはエンツォに窘められていた。
こんな感じで午前の基礎データ収集とやらは終わったんだが、午後から始まる個別の実験が怖くて仕方ない俺だった。
「魔力量は普通以下、いや、人間にしては多いのか? 誰か人間の平均データ覚えてるヤツいるか?」
「どの属性も帯びてないなんて……人間はみんなそうなのか?」
「貧弱な結果だな」
最後の辛辣なセリフは置いておくとして、概ね研究員たちが気になっているのは、俺の魔力量と属性らしい。
俺の居た国では、一定の年齢になると魔力量を測り、申告することになっている。魔法の才がある者は、平民であればその時点で国の機関に引き取られ、魔法使いとして徹底的に修行させられる。俺も、6歳になったときに魔法の才がないかと期待したが、結果は人並。延々とこき使われるルートが決まったわけだ。
「魔力量ってどのぐらいだったんだ?」
「あぁ、123だな」
「123!?」
魔力量が100を超えれば、いっぱしの魔法使いとして通用するレベルだと聞いたことがある。俺はいつの間にか隠された才能を開花させて……
「そんなに驚くことか? 100など大した魔法も使えずに枯渇するだろうに」
「い、いや、魔族はどうか知らないが、俺の居た国じゃ、100もあれば魔法使いとして十分に生計を立てていけるって聞いたことがあるぞ? そもそも、俺は6歳のときに測ったときは、15だったと聞いているんだが」
俺の発言に、研究員たちが目を丸くするのが見えた。口々に囁かれるのは、100程度で、と人間の基準に驚くものと、子供の頃にたった15しかなかったという事実についてだ。
「ねー、ってことは、ミケが魔晶石を作ったらー、全くの無属性のができるってことー?」
見学に来ていた白髪ツインテールのお嬢さんの言葉に、エンツォが厳しい目を向けた。
「シンシア、午前中は測定だけだぞ」
「って言ったってー、魔晶石作るぐらいいいじゃん? 10ぐらいだったら誤差でしょー?」
「それは魔族にとって、だろう。100のうちの10では大きいぞ」
「でも、魔力の回復速度だって測定した方がいいじゃん?」
「……それは、そうだが」
エンツォはボードを持ったままの小柄な研究員をちらりと窺う。ミモという名前のその研究員が頷くのを見て、「10だけなら」と許可を出した。
もしかして、あのちっこい子供みたいな方が上司だったりするのか? いやいやまさか。
「ミケーレ、こっちに来てくれ」
「あ、あぁ」
エンツォに言われ、壁際に置いてあった謎のオブジェの前まで歩く。手で掴めるぐらいの大きな黒い球が丸い筒で下から支えられ、筒の反対側には受け皿のようなものがある、そんな謎物体だ。いや、この研究室にはそんな謎物体がたくさんあるんだけど。
エンツォは筒にある目盛りを操作すると、俺に向き直った。
「この玉を握ってくれ。もし、気持ち悪いとかそういう症状が出たら遠慮なく言ってくれて構わない」
「そういう症状が出るものなのか?」
「いや、人間が使うのは初めてだからな。魔力が10吸われる程度だから問題ないはずだが、万が一のこともある」
「お。おぅ……」
万が一、なんて言われてしまうとかえって緊張してしまうが、123あるうちの10なら、確かに問題ないだろう。1割にも満たないんだし。
俺が玉に手を置くと、筒からころり、と透明なガラス玉がこぼれ出た。途端に、おぉ、というどよめきが。今日はこんなんばっかりだな。
「すごー! 濁りもない本当に透明な魔晶石ができたー!」
一番声が大きいのは、あの白髪ツインテール――シンシアだ。全くの無属性というのは珍しいらしく、「欲しいなー、欲しいなー」とボヤいてはエンツォに窘められていた。
こんな感じで午前の基礎データ収集とやらは終わったんだが、午後から始まる個別の実験が怖くて仕方ない俺だった。
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