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Ep.3 ファーストコンタクト(12)
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何かに噛まれたりするかもしれない、そんな恐怖は無かった。勢いしか無かった。
だがこの場面ではそれが幸いした。
喉奥で予想通りの手ごたえを感じたと同時にジョシュはそれを掴み、そして引き抜いた。
「うげえぇっ!」
そして通信士はこれまで感じたことの無い嘔吐感と激痛と共に、それを吐き出した。
それは蛇のような頭にクラゲのような下半身をもった幼虫であった。
ジョシュはそれを床に叩き付けた後、踏み殺した。
幼虫が悲鳴を上げて絶命する。
その悲鳴が合図となった。
巣の隙間から、影から、次々とムカデのような虫が這い出し、ジョシュのほうに向かってきた。
「逃げるぞ!」
ジョシュはまだ意識が覚醒していない通信士を肩に担ぎ、走り出した。
だが、その走りは迫る脅威と比べれば明らかに遅いものであった。
ジョシュは片足をひきずっている。早く走れるわけが無い。
このままだとドアに辿り着く前に追いつかれる。
(神様――ッ!)
だからジョシュは心の中で叫んだ。
しかしそれに応えたのは意外な者だった。
「っ!」
直後、耳に痛いほどの絶叫がブリッジを揺らした。
それは彼女が放った叫び声だった。
まるで獣が威嚇する時のような咆哮。
その叫びに、ブリッジにいた全ての虫の動きが止まった。
彼を傷付けることは許さない、ジョシュには彼女がそう叫んだように聞こえた。
だが、ジョシュは振り返らず、ドアを駆け抜けた。
だがこの場面ではそれが幸いした。
喉奥で予想通りの手ごたえを感じたと同時にジョシュはそれを掴み、そして引き抜いた。
「うげえぇっ!」
そして通信士はこれまで感じたことの無い嘔吐感と激痛と共に、それを吐き出した。
それは蛇のような頭にクラゲのような下半身をもった幼虫であった。
ジョシュはそれを床に叩き付けた後、踏み殺した。
幼虫が悲鳴を上げて絶命する。
その悲鳴が合図となった。
巣の隙間から、影から、次々とムカデのような虫が這い出し、ジョシュのほうに向かってきた。
「逃げるぞ!」
ジョシュはまだ意識が覚醒していない通信士を肩に担ぎ、走り出した。
だが、その走りは迫る脅威と比べれば明らかに遅いものであった。
ジョシュは片足をひきずっている。早く走れるわけが無い。
このままだとドアに辿り着く前に追いつかれる。
(神様――ッ!)
だからジョシュは心の中で叫んだ。
しかしそれに応えたのは意外な者だった。
「っ!」
直後、耳に痛いほどの絶叫がブリッジを揺らした。
それは彼女が放った叫び声だった。
まるで獣が威嚇する時のような咆哮。
その叫びに、ブリッジにいた全ての虫の動きが止まった。
彼を傷付けることは許さない、ジョシュには彼女がそう叫んだように聞こえた。
だが、ジョシュは振り返らず、ドアを駆け抜けた。
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