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Ep.2 基地から回収された記録(11)

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   ◆◆◆

 ヤードと呼ばれる倉庫の近くにある植物園で、二人の男女が作業を行っていた。

「こっちは終わったぞ」

 先に仕事を終えた男が女に向かって口を開く。
 青々をしたその空間は『ガーデン』と呼ばれていた。
 そして男は女のほうに歩み寄って尋ねた。

「手伝おうか?」

 これに女は首を振った。

「大丈夫。あとはここに大理石を敷き詰めていくだけだから」

 その言葉で気付いた男は再び尋ねた。

「その大理石が見当たらないが?」
「ヤードに注文してるんだけど、まだ来てないの」

 これに男は薄く笑みを浮かべながら言った。

「あそこの仕事が遅いのはいつものことだからな。ろくに在庫が管理されていないらしい。もしかしたら今日はもう届かないかもしれないぞ?」
「かもね。もう少し待っても来なかったら私も帰ることにするわ」
「そうか。じゃあお先に。お疲れ様」
「お疲れ様」

 そんなやり取りの後、男は女の前から去っていった。

「……」

 そして一人残ることになった女は携帯端末をいじり始めた。
 くだらない動画を見て時間をつぶす。
 そうして時間の感覚が無くなりかけた頃、

「……うん?」

 近づいてくる機械音に、女は顔を上げた。
 それは運搬用の小型トラックの音であった。
 見ると、運転しているのはヤードで働いている女であった。
 やっと来たか、女はやれやれと立ち上がり、手を上げて声をかけた。

「こっちよ。ここに止めてちょうだい」

 そして女は挨拶もほどほどに、トラックの荷台のほうへと回りこんだ。
 そこには注文通りの大理石の平石が積まれていた。
 が、

「? なにこれ?」

 そこにはあの『丸石』もあった。

「こんなの注文してないけど? 他の人からの注文?」

 しかし返事は無い。
 そして女は気付いていなかった。
 ヤードの女が音も無く背後に忍び寄っているのを。
 そして口内を見せつけようとしているかのように、その口を大きく開き始めたのを。
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