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Ep.2 基地から回収された記録(9)

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   ◆◆◆

 男はすぐに現場で作業を開始した。
 慣れた手つきで作業をこなす。
 しかしその表情は沈んだものであった。
 ここは狭くて暗い上に空気まで悪い。好きになれるわけが無い。
 だから男は音楽を聴きながら作業をやっていた。

「I LOVE YOU ~♪」

 そして男は気分をごまかすために、耳から流れ込んでくるその歌詞を復唱した。

「PLEASE LOVE ME ~♪」

 だから気付けなかった。
 何かが這うような音に。
 その何かが足元に近づいていたことに。

   ◆◆◆

「おつかれさーん」

 男が水道管の修理に向かってから数十分後、別の男が部屋に入ってきた。
 その男は同じ作業員であった。
 だから事務の女はその男に対して口を開いた。

「来てから早速で悪いんだけど、問題が起きている現場に向かってくれないかしら?」

 男は勘が良かったゆえに、その現場がどこか気付いた。

「その現場っていうのは、最近何度も問題を起こしているやつか?」

 まさに正解であった。だから女は頷きと共に口を開いた。

「そうよ。既に一人が作業しているはず。あなたも行ってきてちょうだい」

   ◆◆◆

 二人もいらないだろう、とは反論しなかった。
 どうして何度も壊れるのか興味があったからだ。
 だから場所までよく知っていた。
 だから現場にはすぐに辿り着けた。
 が、

「……」

 そこで先に作業しているはずの者はいなかった。
 問題の水道管は作業が途中で中断されていた。
 トイレだろうか? 男はそう思った。
 だから男は気にせず、作業を引き継ごうとしたが、

「!?」

 直後、背後から聞こえた音に、男は振り返った。
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