26 / 53
Ep.2 基地から回収された記録(8)
しおりを挟む◆◆◆
「またよ」
端末の画面に分かりやすい音と色で表示された警告に対し、女はうんざりした表情で口を開いた。
「この前と同じ箇所の水道管がダメになってる」
そしてその言葉はそばにいる男に対してのものだった。
だから男もうんざりした表情で口を開いた。
「またか?」
聞き返されても警告が間違っているとは思えない。事実、今まで一度もこの警告は外れたことが無い。
だから女は逆に尋ねた。
「ちゃんと直してるのよね? まさか、サボったりしてる?」
これに男は即座に反論した。
「まさか。そんなことするわけが無いだろう」
しかしその答えに納得出来なかった女はさらに不躾な質問をした。
「じゃあ、あなたが下手糞だってこと?」
これに男は首を振った。
「それもノーだ。今までの破損はどれも似たような壊れ方で、その修理は難しいものじゃなかった。俺以外の誰がやっても同じだよ」
だが、その破損について男は一つ気になっていたことがあった。
心の中でずっと引っ掛かっていたそれを、男は直後に吐き出した。
「でもなあ……その壊れ方はちょっと、なんて言うか……変なんだ」
「変って、どういうこと?」
女の心に沸いたその好奇心に、男は即座に応えた。
「まるで『何か強い力で引きちぎられた』みたいな、そんな壊れ方なんだ」
その言葉に、女は一つの推測を立てた。
「じゃあ、誰かが壊してるってこと?」
それはありえないことでは無かったが、あまり現実的な答えでは無かった。
だから男は曖昧な答えを返した。
「いや、どうだろうなあ……ちょっとよくわからない。証拠が何も無い。そもそも、鍵が無いと作業員用の通路には入れないしなあ」
誰かがやったとは思えない、その意見には女も賛成であった。
だから女は別の可能性を提示した。
「そこの部分だけ異常に圧力が高くなってるとか?」
これにも男は首を振った。
「その可能性も低いと思う。近くの水圧計は壊れる直前までずっと正常値だった」
「……」
そう返されてしまっては、もう女に言えることは何も無かった。
そしてそれは男も同じであった。ゆえに、
「まあ、とりあえず直しに行くよ。もし、また同じことが起きたら、その時はみんなで相談しよう」
男は話を一旦棚上げにし、工具を持って部屋から出て行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
いつもと違う日常
k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
ホラー
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる