Please Love Me

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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Ep.2 基地から回収された記録(6)

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 虫か? 女はそう思った。
 鉱石は搬入時に洗浄される。だが、それは完璧では無い。未知の生物が生きたまま倉庫に搬入されてしまうことは稀にある。
 そしてその中には危険な生物もいる。
 ゆえに女は少し離れたところから注意深く観察した。
 が、

「……」

 何も出てこない。何も動かない。
 そして女は気付いた。
 少し変わった丸石があることに。
 形は少しでこぼこした卵型。
 そしてヒビが入っている。
 そういえば、動いたのはこの石だったような――女はそう思った。
 だから女は調べるために近づこうととしたが、

「きゃあっ!」

 瞬間、突如足の上を何かが這った感触に、女は悲鳴を上げた。
 見ると、足元には一匹の虫が走っていた。
 しかしそれは女がよく知っている、ありふれた虫であった。
 だから女は驚かされたことに対しての苛立ちをぶつけるように、

「シット!」

 その虫を踏み潰した。
 それで気分が晴れた女はその場から離れた。離れてしまった。
 女は確認すべきだったのだ。

 女の視線が離れた後、その丸石は再び「ぐらり」と揺れるように動いていた。
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