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Ep.2 基地から回収された記録(5)
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同時刻――
「えーと、大理石、大理石」
ヤードと呼ばれる石造倉庫の中を一人の女が歩いていた。
スタジアムのような広さの倉庫。
その途方も無い広さの中に、様々な石が分別されて山積みにされていた。
単純な種類だけで無く、形状でも分けられている。
その形状も未加工のものから、用途に応じて加工されたものまで様々だ。
だが、この倉庫には一つずさんなところがあった。
それは管理。
どこに何の石があるかくらいは分かるが、どれくらいの数があるかまでは誰も把握していなかった。
だからこうしてわざわざ人間が直接見に来るという、非効率なことをしている。
ゆえに女はこの仕事が好きでは無かった。
しかしそれでも何度もやった仕事であるため、女の足には迷いが無く、慣れが見てとれた。
そして御影石のエリアを抜けたところで女の足は一度止まった。
携帯用の端末をいじって地図を確認する。
探している大理石のエリアには到着したが、大理石ならばなんでもいいわけでは無いからだ。
ご指名のものは、
「百平方以上の大きさで、3センチ以上の厚みを持つ板は、えーと……」
であったが、その検索に時間はさほどかからなかった。
止まった両足が再び軽快に動き出す。
そして女の足は山積みにされた大理石の丸石の横を通り過ぎ始めた。
その時、
「ん?」
女の足はまた止まった。
丸石の中で何かが動いたような気がしたからだ。
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