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Ep.2 基地から回収された記録(4)
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「あー、もしもし? 失礼するよ?」
自動では無いドアをノックしたが、返事が無かったゆえに、清掃員はおそるおそるドアを開けてみた。
「誰かいないのか?」
室内に声を響かせる。
しかしやはり返事は無い。
それほど広い部屋では無い。誰もいないことは見ればわかる。
「ハロー?」
だが、なにかがおかしい、そう思った男は呼びかけながら足を前に進ませた。
そして直後に男はそれを見つけた。
壁に背を預けるように、男が倒れていた。
それは帰ったはずの受付の男だった。
「おい、どうした!?」
駆け寄って声をかけてみる。
だが、やはり反応は無い。
肩を掴んで揺すってみる。
すると、まるで糸の切れた人形であるかのように、「ぐにゃり」と壁に預けられていた上半身は前に倒れた。
体に力がまったく無い。
まるで筋肉が異常にゆるんでいるような、そんな柔らかさ。
何かの突発的な病気だろうか? なんにしてもこれは自分にはどうにも出来ない、そう思った男は立ち上がり、
「待ってろ」
後ろポケットに入っている携帯端末に手を伸ばそうとしたが、
「!」
驚きに、男の手は止まった。
いつのまにかドアが開いており、そこに知らない男が立っていたからだ。
何の音もしなかったからびっくりした。だが助かった、そう思った清掃員はそいつに声をかけた。
「おいあんた! 人が倒れてたんだ、手を貸してくれ!」
が、
「……」
その男は反応を示さなかった。
「……おい、どうした?」
怖くなりながら、清掃員が再び声をかける。
「……」
しかし男はやはり何も答えない。
直後、清掃員は気付いた。
男の目線が変なのだ。
こっちを視界の中心にとらえていない、焦点が合っていない、そのように見えた。
そもそも、この異常事態を前にしてなぜなにも言わない?!
清掃員の恐怖は頂点に達しようとしていた。
ゆえに清掃員はその恐怖に抗うように叫びだした。
「おい、あんた! いったい、」
が、
「! うあぁっ!?」
直後に突然体当たりを仕掛けてきたそれに対し、清掃員の精一杯の虚勢はただの悲鳴に変わった。
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