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Ep.1 調査隊の船から回収した記録(14)
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レイモンドと共にまだ半開きの隔壁をくぐる。
が、
「あなたも早く!」
隊員はついてこなかった。
なぜか、隊員は答えた。
「先に行け! 俺はたぶんもうダメだ!」
どうして!? シェリーがそう叫ぶよりも早く、隊員は叫んだ。
「俺は噛まれたんだ! 体が痺れてきてる!」
そう叫びながら隊員はボタンのほうに歩み寄り、
「だから行け! 出来るだけ食い止める!」
そう言ってボタンを押した。
上がっていた隔壁が再び閉まり始める。
「行け!」
そして何度目かになるその命令に、シェリーは従った。
背を向け、走り出す。
「来いよ、クソッタレ!」
隊員の覚悟の叫びがシェリーとレイモンドの背中に響き、
「うおおおおおぉっ!」
直後に隊員の気勢と銃声が二人の耳を打った。
が、
「ああああああっ!」
その気勢は間も無く悲鳴に変わった。
その悲鳴から逃げるようにシェリーとレイモンドは走った。
そして二人はそこに辿り着いた。辿り着いてしまった。
「なんだよ、これは……」
思わず、レイモンドが言葉を漏らす。
そこはブリッジだと思われた。大きな窓と数多くの端末から、そう思えた。
だがそこはおぞましい場所に変貌していた。
壁には一面に巣のようなものが出来ていた。
ハチの巣に似ている、シェリーはそう思った。
大きなムカデのような生き物がその巣の上を這いまわっている。
そして床には、ここの従業員や住人達であったと思われる人達が寝かされていた。
それを見たレイモンドはアレに似ていると思った。
直後、その中から一人が立ち上がった。
そいつもうつろな目をしていた。
そしてそいつはシェリーとランベルトのことなど眼中に無いかのようによろよろと歩いて端末に座り、そして操作を始めた。
それはかつての仕事ぶりが思い起こされるほどに、慣れた手つきであった。
思わず、レイモンドは後ろからそれを覗き込んだ。
見ると、そいつは船の状態などの安全管理をしているようであった。
(こいつは……)
知識を残したまま操られているのか? レイモンドがそんなことを考えた直後、
「「!」」
後ろから生じた足音らしき音に、二人は同時に振り返った。
とうとう追いつかれた。
だが見えない。ブリッジの自動扉は開いていない。
しかし感じる。それはドアのすぐ後ろにいる!
逃げないと――しかしどこに?! そんな恐怖に二人の思考が半狂乱に陥りかけた直後、
「「っ!」」
ドアは開き、
「うわああああっ!」「きゃああああっ!」
姿を現すと同時に突進してきた『大きなそれ』に対し、二人は狂乱の悲鳴を上げた。
が、
「あなたも早く!」
隊員はついてこなかった。
なぜか、隊員は答えた。
「先に行け! 俺はたぶんもうダメだ!」
どうして!? シェリーがそう叫ぶよりも早く、隊員は叫んだ。
「俺は噛まれたんだ! 体が痺れてきてる!」
そう叫びながら隊員はボタンのほうに歩み寄り、
「だから行け! 出来るだけ食い止める!」
そう言ってボタンを押した。
上がっていた隔壁が再び閉まり始める。
「行け!」
そして何度目かになるその命令に、シェリーは従った。
背を向け、走り出す。
「来いよ、クソッタレ!」
隊員の覚悟の叫びがシェリーとレイモンドの背中に響き、
「うおおおおおぉっ!」
直後に隊員の気勢と銃声が二人の耳を打った。
が、
「ああああああっ!」
その気勢は間も無く悲鳴に変わった。
その悲鳴から逃げるようにシェリーとレイモンドは走った。
そして二人はそこに辿り着いた。辿り着いてしまった。
「なんだよ、これは……」
思わず、レイモンドが言葉を漏らす。
そこはブリッジだと思われた。大きな窓と数多くの端末から、そう思えた。
だがそこはおぞましい場所に変貌していた。
壁には一面に巣のようなものが出来ていた。
ハチの巣に似ている、シェリーはそう思った。
大きなムカデのような生き物がその巣の上を這いまわっている。
そして床には、ここの従業員や住人達であったと思われる人達が寝かされていた。
それを見たレイモンドはアレに似ていると思った。
直後、その中から一人が立ち上がった。
そいつもうつろな目をしていた。
そしてそいつはシェリーとランベルトのことなど眼中に無いかのようによろよろと歩いて端末に座り、そして操作を始めた。
それはかつての仕事ぶりが思い起こされるほどに、慣れた手つきであった。
思わず、レイモンドは後ろからそれを覗き込んだ。
見ると、そいつは船の状態などの安全管理をしているようであった。
(こいつは……)
知識を残したまま操られているのか? レイモンドがそんなことを考えた直後、
「「!」」
後ろから生じた足音らしき音に、二人は同時に振り返った。
とうとう追いつかれた。
だが見えない。ブリッジの自動扉は開いていない。
しかし感じる。それはドアのすぐ後ろにいる!
逃げないと――しかしどこに?! そんな恐怖に二人の思考が半狂乱に陥りかけた直後、
「「っ!」」
ドアは開き、
「うわああああっ!」「きゃああああっ!」
姿を現すと同時に突進してきた『大きなそれ』に対し、二人は狂乱の悲鳴を上げた。
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