上 下
13 / 53

Ep.1 調査隊の船から回収した記録(11)

しおりを挟む
 何が起きているのか、まだ誰も把握していなかったが、レイモンドが発したその叫びは的確な指示であった。
 だから即座に別の隊員が声を上げることが出来た。

「そいつを撃て!」

 全員がほぼ同時に銃口を向ける。
 暴れているせいで狙いにくい。が、比較的良い位置にいたある隊員だけは、上に乗っているそいつだけに上手く照準を合わせることが出来た。
 隊員の銃口が火を吹き、生存者の体からいくつもの赤い華が咲く。
 狙え、から発射までおよそ数秒。
 であったが、ランベルトの顔面は既にズタズタだった。
 その傷は首にまで及んでおり、噴水のように出血している。
 苦痛の声を上げようとしているが、ゴボゴボという気泡の音が漏れるのみ。
 シェリーが即座に止血を始めるが、その行為は誰の目にも無駄のように思えた。
 全員の意識がランベルトとシェリーに集中する。
 その間に、悪夢は隊員の足元に忍び寄っていた。
 そして直後、

「うあっ?!」

 それはある隊員に襲い掛かった。
 反射的に全員が悲鳴を上げた隊員のほうに向き直る。
 見ると、それは隊員の足に噛み付いていた。
 それは大人の腕ほどの太さがある蛇のように見えた。
 いや、よく見ると蛇は間違いであった。
 確かに頭は蛇に似ている。だが、胴体から下は大量の触手を持つクラゲのようであった。
 足を食いちぎろうとしているかのように、その身を激しく揺らしている。

「くそがっ!」

 その痛みを倍返しにするかのように、噛み付かれている隊員が銃弾を撃ち込む。
 その数発の射撃だけで、謎の生物はあっさりと動きを止めた。
 脆く、力も強くない、その事実に隊員達の緊張は解け始めた。
 驚かされたが大した脅威では無い。隊員達はそう思ったが、直後、

「天井のダクトから這い出てきてる!」

 その安堵は新たな緊張と恐怖によって塗り替えられた。
 発見した隊員がその脅威の位置を知らせるために、暗視用のライトをそれに当てる。
 そこには、落ちてきたばかりのうごめく数匹のそれがいた。
 全員で一斉に射撃する。
 恐怖から来る、過剰な射撃。
 その過剰な火力によってその数匹はミンチと化したが、

「あちこちから音がする! そこら中にいるぞ!」

 恐怖はまだ終わらなかった。

「隊長、指示を!」

 その恐怖に負けた誰かがマイクに向かって叫ぶ。
 そして直後に返ってきた答えは隊員達全員が期待していたものであった。

“全員、撤退しろ!”
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

FLY ME TO THE MOON

如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!

その瞳には映らない

雨霧れいん
ホラー
裏の世界で生きる少年達の壮絶な殺し合いの話し ___ こっちも内容たいして決まってません。

敗者の街 Ⅱ ― Open the present road ―

譚月遊生季
ホラー
※この作品は「敗者の街 ― Requiem to the past ―」の続編になります。 第一部はこちら。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/33242583/99233521 イギリスの記者オリーヴ・サンダースは、友人ロデリック・アンダーソンの著書「敗者の街」を読み、強い関心を示していた。 死後の世界とも呼べる「敗者の街」……そこに行けば、死別した恋人に会えるかもしれない。その欲求に応えるかのように、閉ざされていた扉は開かれる。だが、「敗者の街」に辿り着いた途端、オリーヴの亡き恋人に関する記憶はごっそりと抜け落ちてしまった。 新たに迷い込んだ生者や、外に出ようと目論む死者。あらゆる思惑が再び絡み合い、交錯する。 オリーヴは脱出を目指しながらも、渦巻く謀略に巻き込まれていく…… ──これは、進むべき「現在」を切り拓く物語。 《注意書き》 ※記号の後の全角空白は私が個人的にWeb媒体では苦手に感じるので、半角にしております。 ※過激な描写あり。特に心がしんどい時は読む際注意してください。 ※現実世界のあらゆる物事とは一切関係がありません。ちなみに、迂闊に真似をしたら呪われる可能性があります。 ※この作品には暴力的・差別的な表現も含まれますが、差別を助長・肯定するような意図は一切ございません。場合によっては復讐されるような行為だと念頭に置いて、言動にはどうか気をつけて……。 ※特殊性癖も一般的でない性的嗜好も盛りだくさんです。キャラクターそれぞれの生き方、それぞれの愛の形を尊重しています。

冀望島

クランキー
ホラー
この世の楽園とされるものの、良い噂と悪い噂が混在する正体不明の島「冀望島(きぼうじま)」。 そんな奇異な存在に興味を持った新人記者が、冀望島の正体を探るために潜入取材を試みるが・・・。

没考

黒咲ユーリ
ホラー
これはあるフリーライターの手記である。 日頃、オカルト雑誌などに記事を寄稿して生計を立てている無名ライターの彼だが、ありふれた都市伝説、怪談などに辟易していた。 彼独自の奇妙な話、世界を模索し取材、考えを巡らせていくのだが…。

君は唯一無二の愛しい子

蒼キるり
ホラー
真由の恋人の慎司が行方不明になった。誰もそれを真剣に考えてはくれないが、真由だけはおかしいと探し続ける。そして慎司が行方不明になる前、男女の双子について話していたことを思い出し──

四季子らの呪い唄

三石成
ホラー
 潜入捜査を専門とする麻薬取締捜査官の浅野は、勾島という有人島で行われる調査に、植物学者として参加することになった。勾島に、ドラッグ原材料の栽培、製造疑惑が浮上したからである。  浅野を含めた調査隊は、ガイド代わりに、島に住む四季子と呼ばれる子供たちと行動を共にすることになる。島民たちは調査隊を歓迎し、和やかな空気のままに調査が進む。  しかしある朝、衝撃的な死体が発見される。  目に映るものは幻覚か、それとも真実か。絶海の孤島を舞台にしたミステリーホラー。

鈴ノ宮恋愛奇譚

麻竹
ホラー
霊感少年と平凡な少女との涙と感動のホラーラブコメディー・・・・かも。 第一章【きっかけ】 容姿端麗、冷静沈着、学校内では人気NO.1の鈴宮 兇。彼がひょんな場所で出会ったのはクラスメートの那々瀬 北斗だった。しかし北斗は・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 恋愛要素多め、ホラー要素ありますが、作者がチキンなため大して怖くないです(汗) 他サイト様にも投稿されています。 毎週金曜、丑三つ時に更新予定。

処理中です...