上 下
5 / 53

Ep.1 調査隊の船から回収した記録(3)

しおりを挟む

   ◆◆◆

「弾はこれだけか?」

 倉庫を一通り漁った隊長はその成果の少なさに思わず愚痴をこぼした。
 これにそばにいた隊員が口を開いた。

「これだけ残っていただけでもラッキーだと思ったほうがいいかもしれませんね」

 しょうがない、それはその通りだった。
 だから隊長もそれ以上文句は言わなかった。

   ◆◆◆

「やっぱり、このスーツには慣れないな」

 出発した小型艇の窮屈な椅子の上で、レイモンドは身をよじりながらそう愚痴をこぼした。

「我慢して」

 対面に座っているシェリーが即座にたしなめる。
 だが、そう言うシェリーも着心地は良くなさそうであった。

「もう着くぞ」

 操縦席にいるランベルトの声が直後に響く。
 それは遠まわしな「だから気を引き締めろ」という注意だった。
 操縦席に座っているが、ランベルトは操縦はしていない。船は自動操縦だ。
 だが代わりに別の仕事をランベルトはやっていた。
 ランベルトはその成果を述べた。

「ダメだ。やはり管制室から応答が無い」

 これにレイモンドは尋ねた。

「じゃあドアはやっぱりこちらから?」

 ランベルトは頷きながら答えた。

「そうなるな。電源は生きているから、非常事態の時と同じやり方で遠隔操作すれば入れるだろう」

 そう言っている間に、基地は目の前となった。
 そしてようやくランベルトは操縦桿を握り、端末と正面の窓を交互に見ながら口を開いた。

「これより船を基地に接続する。管制からのナビが無いから、少し揺れるかもしれないぞ。しっかり捕まっておけ」

 その言葉が終わると同時に、言葉通りの振動が機内を揺らした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

呪詛人形

斉木 京
ホラー
大学生のユウコは意中のタイチに近づくため、親友のミナに仲を取り持つように頼んだ。 だが皮肉にも、その事でタイチとミナは付き合う事になってしまう。 逆恨みしたユウコはインターネットのあるサイトで、贈った相手を確実に破滅させるという人形を偶然見つける。 ユウコは人形を購入し、ミナに送り付けるが・・・

月影の約束

藤原遊
ホラー
――出会ったのは、呪いに囚われた美しい青年。救いたいと願った先に待つのは、愛か、別離か―― 呪われた廃屋。そこは20年前、不気味な儀式が行われた末に、人々が姿を消したという場所。大学生の澪は、廃屋に隠された真実を探るため足を踏み入れる。そこで彼女が出会ったのは、儚げな美貌を持つ青年・陸。彼は、「ここから出て行け」と警告するが、澪はその悲しげな瞳に心を動かされる。 鏡の中に広がる異世界、繰り返される呪い、陸が抱える過去の傷……。澪は陸を救うため、呪いの核に立ち向かうことを決意する。しかし、呪いを解くためには大きな「代償」が必要だった。それは、澪自身の大切な記憶。 愛する人を救うために、自分との思い出を捨てる覚悟ができますか?

狙われた女

ツヨシ
ホラー
私は誰かに狙われている

マネキンの首

ツヨシ
ホラー
どこかの会社の倉庫にマネキンがあった。

山を掘る男

ツヨシ
ホラー
いつも山を掘っている男がいた

村の愛玩動物

ツヨシ
ホラー
営業で走り回っていると小さな村に着いた。

敗者の街 Ⅱ ― Open the present road ―

譚月遊生季
ホラー
※この作品は「敗者の街 ― Requiem to the past ―」の続編になります。 第一部はこちら。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/33242583/99233521 イギリスの記者オリーヴ・サンダースは、友人ロデリック・アンダーソンの著書「敗者の街」を読み、強い関心を示していた。 死後の世界とも呼べる「敗者の街」……そこに行けば、死別した恋人に会えるかもしれない。その欲求に応えるかのように、閉ざされていた扉は開かれる。だが、「敗者の街」に辿り着いた途端、オリーヴの亡き恋人に関する記憶はごっそりと抜け落ちてしまった。 新たに迷い込んだ生者や、外に出ようと目論む死者。あらゆる思惑が再び絡み合い、交錯する。 オリーヴは脱出を目指しながらも、渦巻く謀略に巻き込まれていく…… ──これは、進むべき「現在」を切り拓く物語。 《注意書き》 ※記号の後の全角空白は私が個人的にWeb媒体では苦手に感じるので、半角にしております。 ※過激な描写あり。特に心がしんどい時は読む際注意してください。 ※現実世界のあらゆる物事とは一切関係がありません。ちなみに、迂闊に真似をしたら呪われる可能性があります。 ※この作品には暴力的・差別的な表現も含まれますが、差別を助長・肯定するような意図は一切ございません。場合によっては復讐されるような行為だと念頭に置いて、言動にはどうか気をつけて……。 ※特殊性癖も一般的でない性的嗜好も盛りだくさんです。キャラクターそれぞれの生き方、それぞれの愛の形を尊重しています。

黒絵馬 / 黒穢魔(クロエマ / クロエマ)

鏖(みなごろし)
ホラー
〜この書を読む者に呪いあれ〜

処理中です...