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Ep.1 調査隊の船から回収した記録(3)
しおりを挟む◆◆◆
「弾はこれだけか?」
倉庫を一通り漁った隊長はその成果の少なさに思わず愚痴をこぼした。
これにそばにいた隊員が口を開いた。
「これだけ残っていただけでもラッキーだと思ったほうがいいかもしれませんね」
しょうがない、それはその通りだった。
だから隊長もそれ以上文句は言わなかった。
◆◆◆
「やっぱり、このスーツには慣れないな」
出発した小型艇の窮屈な椅子の上で、レイモンドは身をよじりながらそう愚痴をこぼした。
「我慢して」
対面に座っているシェリーが即座にたしなめる。
だが、そう言うシェリーも着心地は良くなさそうであった。
「もう着くぞ」
操縦席にいるランベルトの声が直後に響く。
それは遠まわしな「だから気を引き締めろ」という注意だった。
操縦席に座っているが、ランベルトは操縦はしていない。船は自動操縦だ。
だが代わりに別の仕事をランベルトはやっていた。
ランベルトはその成果を述べた。
「ダメだ。やはり管制室から応答が無い」
これにレイモンドは尋ねた。
「じゃあドアはやっぱりこちらから?」
ランベルトは頷きながら答えた。
「そうなるな。電源は生きているから、非常事態の時と同じやり方で遠隔操作すれば入れるだろう」
そう言っている間に、基地は目の前となった。
そしてようやくランベルトは操縦桿を握り、端末と正面の窓を交互に見ながら口を開いた。
「これより船を基地に接続する。管制からのナビが無いから、少し揺れるかもしれないぞ。しっかり捕まっておけ」
その言葉が終わると同時に、言葉通りの振動が機内を揺らした。
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