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Ep.1 調査隊の船から回収した記録(1)
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◆◆◆
調査隊の船から回収した記録
◆◆◆
「隊長、そろそろです」
その声で男は目を覚ました。
「もうそんな時間か?」
まだ眠い。椅子で寝るのはやはり良くないな、そんな文句を飲み込みながらまだ重たい両目を軽くマッサージする。
そして男は目を開いて正面にある大きな窓を見た。
そこには、星空の中に浮かぶ巨大な建造物があった。
男は老朽化の目立つそれをざっと眺めた後、口を開いた。
「基地からの応答は?」
これに、男を起こした女が答えた。
「やはりありません」
「救難信号は?」
「相変わらず。ずっと鳴りっぱなしですよ」
泣く子供のようにピーピーうるさいが、こちらからの呼びかけはすべて無視、困ったものだ。
さてどうしたものか、男は少し考えてから再び口を開いた。
「向こうの記録にはアクセスしてみたか?」
「それもやってみましたが駄目でした。繋がりません」
「こちらから原因を探れるか?」
「……動力源は正常ですね。施設のステータスにはアクセス出来ました。生命維持装置も稼動してます。ですが……いくつかの隔壁が閉じています」
その言葉に興味を惹かれた男は、
「ちょっと見せてくれ」
立ち上がり、そばに近寄って女の端末を覗きこんだ。
画面には簡単な基地の見取り図が描かれている。
そして通信士の言うとおり、いくつかの隔壁が閉鎖されているようであった。
それはまるで、何かから逃げるために、または何かを閉じ込めるためにそうしているように見えた。
得体の知れない恐怖感が心の奥から滲み出す。
男はそれから目をそらすように、通信機に口を近づけた。
「艦の全員に通達。これよりミーティングを始める。ブリッジに集まってくれ」
調査隊の船から回収した記録
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「隊長、そろそろです」
その声で男は目を覚ました。
「もうそんな時間か?」
まだ眠い。椅子で寝るのはやはり良くないな、そんな文句を飲み込みながらまだ重たい両目を軽くマッサージする。
そして男は目を開いて正面にある大きな窓を見た。
そこには、星空の中に浮かぶ巨大な建造物があった。
男は老朽化の目立つそれをざっと眺めた後、口を開いた。
「基地からの応答は?」
これに、男を起こした女が答えた。
「やはりありません」
「救難信号は?」
「相変わらず。ずっと鳴りっぱなしですよ」
泣く子供のようにピーピーうるさいが、こちらからの呼びかけはすべて無視、困ったものだ。
さてどうしたものか、男は少し考えてから再び口を開いた。
「向こうの記録にはアクセスしてみたか?」
「それもやってみましたが駄目でした。繋がりません」
「こちらから原因を探れるか?」
「……動力源は正常ですね。施設のステータスにはアクセス出来ました。生命維持装置も稼動してます。ですが……いくつかの隔壁が閉じています」
その言葉に興味を惹かれた男は、
「ちょっと見せてくれ」
立ち上がり、そばに近寄って女の端末を覗きこんだ。
画面には簡単な基地の見取り図が描かれている。
そして通信士の言うとおり、いくつかの隔壁が閉鎖されているようであった。
それはまるで、何かから逃げるために、または何かを閉じ込めるためにそうしているように見えた。
得体の知れない恐怖感が心の奥から滲み出す。
男はそれから目をそらすように、通信機に口を近づけた。
「艦の全員に通達。これよりミーティングを始める。ブリッジに集まってくれ」
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