3 / 53
Ep.1 調査隊の船から回収した記録(1)
しおりを挟む
◆◆◆
調査隊の船から回収した記録
◆◆◆
「隊長、そろそろです」
その声で男は目を覚ました。
「もうそんな時間か?」
まだ眠い。椅子で寝るのはやはり良くないな、そんな文句を飲み込みながらまだ重たい両目を軽くマッサージする。
そして男は目を開いて正面にある大きな窓を見た。
そこには、星空の中に浮かぶ巨大な建造物があった。
男は老朽化の目立つそれをざっと眺めた後、口を開いた。
「基地からの応答は?」
これに、男を起こした女が答えた。
「やはりありません」
「救難信号は?」
「相変わらず。ずっと鳴りっぱなしですよ」
泣く子供のようにピーピーうるさいが、こちらからの呼びかけはすべて無視、困ったものだ。
さてどうしたものか、男は少し考えてから再び口を開いた。
「向こうの記録にはアクセスしてみたか?」
「それもやってみましたが駄目でした。繋がりません」
「こちらから原因を探れるか?」
「……動力源は正常ですね。施設のステータスにはアクセス出来ました。生命維持装置も稼動してます。ですが……いくつかの隔壁が閉じています」
その言葉に興味を惹かれた男は、
「ちょっと見せてくれ」
立ち上がり、そばに近寄って女の端末を覗きこんだ。
画面には簡単な基地の見取り図が描かれている。
そして通信士の言うとおり、いくつかの隔壁が閉鎖されているようであった。
それはまるで、何かから逃げるために、または何かを閉じ込めるためにそうしているように見えた。
得体の知れない恐怖感が心の奥から滲み出す。
男はそれから目をそらすように、通信機に口を近づけた。
「艦の全員に通達。これよりミーティングを始める。ブリッジに集まってくれ」
調査隊の船から回収した記録
◆◆◆
「隊長、そろそろです」
その声で男は目を覚ました。
「もうそんな時間か?」
まだ眠い。椅子で寝るのはやはり良くないな、そんな文句を飲み込みながらまだ重たい両目を軽くマッサージする。
そして男は目を開いて正面にある大きな窓を見た。
そこには、星空の中に浮かぶ巨大な建造物があった。
男は老朽化の目立つそれをざっと眺めた後、口を開いた。
「基地からの応答は?」
これに、男を起こした女が答えた。
「やはりありません」
「救難信号は?」
「相変わらず。ずっと鳴りっぱなしですよ」
泣く子供のようにピーピーうるさいが、こちらからの呼びかけはすべて無視、困ったものだ。
さてどうしたものか、男は少し考えてから再び口を開いた。
「向こうの記録にはアクセスしてみたか?」
「それもやってみましたが駄目でした。繋がりません」
「こちらから原因を探れるか?」
「……動力源は正常ですね。施設のステータスにはアクセス出来ました。生命維持装置も稼動してます。ですが……いくつかの隔壁が閉じています」
その言葉に興味を惹かれた男は、
「ちょっと見せてくれ」
立ち上がり、そばに近寄って女の端末を覗きこんだ。
画面には簡単な基地の見取り図が描かれている。
そして通信士の言うとおり、いくつかの隔壁が閉鎖されているようであった。
それはまるで、何かから逃げるために、または何かを閉じ込めるためにそうしているように見えた。
得体の知れない恐怖感が心の奥から滲み出す。
男はそれから目をそらすように、通信機に口を近づけた。
「艦の全員に通達。これよりミーティングを始める。ブリッジに集まってくれ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
インター・フォン
ゆずさくら
ホラー
家の外を何気なく見ているとインターフォンに誰がいて、何か細工をしているような気がした。
俺は慌てて外に出るが、誰かを見つけられなかった。気になってインターフォンを調べていくのだが、インターフォンに正体のわからない人物の映像が残り始める。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【ホラー】バケモノが、いる。 ー湖畔の森ー
鳥谷綾斗(とやあやと)
ホラー
大学四年生の夏休み、七虹(ななこ)はH県のS高原にいた。
頼りない自分を変えたくて、たったひとりで、新しい世界に飛び込むために。
そこで出会ったのは、椿(つばき)という人懐っこい少女と、大和(やまと)という美少年。
謎の多い椿と大和、そして『グロススタジオ』という会社のメンバーと合流した七虹は、湖のある森の中のログハウスで過ごす。
その夜、湖に行った宿泊客のひとりが姿を消す。
その湖には、人間を喰う『人魚』がいるという噂があった……。
*
超弩級のB級ホラー(バトル要素もある)です。
志知 七虹(しち ななこ)
/主人公
木瀬 椿(きせ つばき)
大和 柊(やまと ひらぎ)
/謎の多い少女と少年
仁藤 健太(にとう けんた)
/グロススタジオの責任者
四条 剛樹(しじょう ごうき)
伍川 圭助(ごかわ けいすけ)
六人部 雄一(むとべ ゆういち)
/グロススタジオの関係者(男)
一ノ宮 蓮絵(いちのみや はすえ)
三井 果蘭(みつい からん)
/グロススタジオの関係者(男)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる