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第八話 全力の勉学は全力の恋心とともに(5)

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 だから、

「大丈夫。模試の結果も良かったし」

 少し遅くなったが、俺は良い返事を返した。
 が、

「……」

 彼女は祝福の言葉を返してはくれなかった。
 彼女は何かを考えているようだった。
 そして俺の意識が映画のほうに戻りかけたころ、彼女はようやく口を開いた。

「そっか、じゃあ大丈夫、かな?」

 その「大丈夫」は、俺のものとは違うものを指した言葉だった。

「今日くらいは少しハメをはずしても大丈夫、だよね?」

 ハメをはずす、その言葉の意味は容易に理解できた。
 あの時は勉学のために我慢を選択した。
 だが、ある日もしかしたら、そんな思いは消え去らなかった。
 ゆえに今日の俺はそのために必要な準備もあった。
 だから、

「ああ、大丈夫だ」

 俺ははっきりと答えた。
 そして彼女は俺のその力強い答えに対し、

「じゃあ……今日は泊まっていっても……イイよ」

 少し恥ずかしそうにそう言った。
 言われずとも今日は泊まっていくつもりだった。
 そしてその言葉を聞いた瞬間、映画のことなんてどうでもよくなった。
 自然と、彼女をだきしめていた俺の両腕はそのように動き始めていた。

「あ、待って」

 しかし直後に彼女は俺の両腕を掴んで止めた。
 だが、それは拒絶のためでは無かった。

「ここじゃ汗だくになっちゃうと思うから……」
「……」

 すまないが、これ以上は話せない。何があったかは想像にお任せする。
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