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第八話 全力の勉学は全力の恋心とともに(4)
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彼女も同じことを思ったのだ。
だから彼女の口にはからあげがくわえられていた。
そしてそれが最後の一個だった。
じゃあしょうがないなと、俺はあきらめようとしたが、
「!」
彼女はからあげをくわえたままこちらの方に向き直り、キスするようにその顔を寄せてきた。
「っ!?」
有無を言う間も無く、口移しで俺の口にからあげがねじこまれる。
……あまじょっぱい。
甘みがあるのは直前にケーキを食べたせいだろう。
そう分かっていても、その甘味は妙に印象に残った。
「……」
そして彼女は何も言わず、再び映画のほうに向き直った。
「……」
俺も恥ずかしくて何も言えない。
彼女もそうなのだろうか、俺はそう思った。
それが間違いであることは、直後にわかった。
「ねえ、勉強の調子はどう? いけそう?」
彼女は画面のほうを向いたまま、真面目な質問をしてきた。
「……」
俺は即答しなかった。
どう答えたらいいのか迷ったからだ。
成績自体は既に安全圏に入っている。
だが、それでも俺は「大丈夫だ」と即答できなかった。
それはやはり完璧な自信が無いからだった。
だが、この手の質問に余裕の返事を返せるやつはそうそういないだろう。
しかも俺は頭の回転が遅い人間であるという自覚があるからなおさらだ。
しかしそれでも、彼女を安心させるべきだという意識が最後には勝った。
だから彼女の口にはからあげがくわえられていた。
そしてそれが最後の一個だった。
じゃあしょうがないなと、俺はあきらめようとしたが、
「!」
彼女はからあげをくわえたままこちらの方に向き直り、キスするようにその顔を寄せてきた。
「っ!?」
有無を言う間も無く、口移しで俺の口にからあげがねじこまれる。
……あまじょっぱい。
甘みがあるのは直前にケーキを食べたせいだろう。
そう分かっていても、その甘味は妙に印象に残った。
「……」
そして彼女は何も言わず、再び映画のほうに向き直った。
「……」
俺も恥ずかしくて何も言えない。
彼女もそうなのだろうか、俺はそう思った。
それが間違いであることは、直後にわかった。
「ねえ、勉強の調子はどう? いけそう?」
彼女は画面のほうを向いたまま、真面目な質問をしてきた。
「……」
俺は即答しなかった。
どう答えたらいいのか迷ったからだ。
成績自体は既に安全圏に入っている。
だが、それでも俺は「大丈夫だ」と即答できなかった。
それはやはり完璧な自信が無いからだった。
だが、この手の質問に余裕の返事を返せるやつはそうそういないだろう。
しかも俺は頭の回転が遅い人間であるという自覚があるからなおさらだ。
しかしそれでも、彼女を安心させるべきだという意識が最後には勝った。
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