らぶこめ! 太陽のヒナタと影のエイジ

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第六話 甘く初々しい、そんな青色の春(8)

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   ◆◆◆

 当時の俺の平日の睡眠時間は平均3時間ほどになっていた。
 だから、彼女の家で寝てしまったのはしょうがないことだった。

「zzz……」

 あとから聞いた話だが、俺は彼女がゲームをプレイしているのを隣で見ているうちに寝てしまったらしい。
 いつ眠りに落ちてしまったのかまったく覚えていない。その時は時間の感覚も失っていた。
 だから驚いた。
 目を覚ますと、彼女にキスされていたからだ。
 そして俺が目を覚ましたことに気付いた彼女は、前にも見せた小悪魔っぽい笑顔で口を開いた。

「あ、ごめん起こしちゃった?」

 しかしその笑みに恥ずかしさは見られなかった。
 もしかしたら、俺を起こすつもりでやったのかもしれない。
 そして俺は彼女の笑みを見ていてようやく気付いた。
 背景が天井なのだ。
 さらに後頭部がやわらかい。
 枕とは明らかに違う感触。
 だから何をされているのかすぐに分かった。
 そして直後、彼女は俺の考えが正解であることを述べた。

「エイジくんの寝顔を見てたらいたずらしたくなって……ひざまくらしても起きないから、つい調子に乗っちゃった」

 こういうイタズラならいつでも大歓迎だ。
 そして思った。
 ヒナタさんはこういうこと対してかなり積極的だなあ、と。
 自分ならばやりたいと思っても恥ずかしくて出来ない。
 しかしヒナタさんは違うようだ。こういうことに耐性があるのかもしれない。
 だったら、もう少し甘えても許されるだろう。
 もうちょっとだけこの膝枕を満喫しよう、俺はそう思って再び目を閉じた。
 そして、彼女は俺が寝直そうとしていることに対して何も言わなかった。
 やっぱり彼女は優しい。
 だが、ずっと同じあおむけの姿勢だったせいか、ちょっと背中が痛い。
 だから俺は寝返りを打った。
 彼女のおなかのほうに顔を向けるように、体を回転させる。

「きゃ」

 すると、彼女はとてもかわいい声を出した。
 その声に、俺は頭の中でなにかのスイッチが入ったのを感じた。
 もう少しだけ欲望のままに、そう思った俺は彼女のおなかに顔をうずめようとした。
 が、

「ひゃあ?! ちょっと!?」

 にじり寄る俺の顔を、彼女は両手で止めてガードした。
 キスは普通に出来るのに、これはダメなのか……俺はそう思った。
 じゃあしょうがない。普通に楽しもう、そう思った俺は再び意識を沈めた。

 ちなみに、この後ほっぺたにネコの落書きをされたことについては、家で両親に指摘されるまで俺は気付かなかったのであった。

 こうして、平日は勉強に励み、週末は彼女とむずがゆいスキンシップをして過ごす、そんな繰り返しの生活がしばらく続いた。
 俺は順調に成績を伸ばしていった。それにはやはり彼女の協力もあった。
 もしかしたらいけるかもしれない、そう思えるようになった頃には季節は再び夏になっていた。
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