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第六話 甘く初々しい、そんな青色の春(6)

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「「……」」

 しばらくして、どちらからともなく顔を離す。

「「……」」

 お互いに何を言えばいいのかわからない。
 その静寂を先に破ったのは彼女のほうだった。

「うーん、やっぱり嘘だったか」

 なにが? と尋ねると、彼女は答えた。

「甘酸っぱくは無いね、やっぱり」

 それは場の空気をゆるめるためのものであったのは明らかだったが、

「「……」」

 やはり部屋は再び静寂に包まれた。
 だから彼女はバトンを俺に投げつけてきた。

「……エイジくんも何か言ってよ」

 俺は正直に答えた。

「……何を言えばいいのかわからない」

 だが、俺は「ただ、」と、いまの気持ちを言葉にし続けた。

「今の状況に驚いてる。このまえ付き合い始めたばかりなのに、もうこんなことしてる今の自分にびっくりしてる」

 俺のこの言葉に、彼女は小さく首を傾げ、薄く笑いながら口を開いた。

「そうかな? わたしは遅すぎたくらいじゃないかと思ってるんだけど。もっと早くわたしから告白していればって、ちょっと後悔してるくらい」

 そう言ってから、彼女は、

「だから……」

 再びこちらに近づき、

「……もういっかい」

 何かを確認しあうかのように、俺達は再び顔を重ねた。
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