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第四話 恋と衝撃の秋(15)

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 そして彼女は興奮を鎮めるためか、再び小銭を取り出し、自販機のボタンを「二回」押した。
 そして取り出したうちの一本を天野さんは俺におごってくれた。
 自分も興奮から気をそらす何かが欲しいと思っていたゆえに、俺は「ありがとう」と素直に受け取り、口をつけた。
 そして天野さんも同じように何口か飲んだ後、尋ねてきた。

「影野くんはああいうこと、したことある?」

 俺は「あるわけないだろ」と即答した。
 彼女は俺のその答えに対して「そっか」と言った後、ポタージュを一口含んだ。
 アレを見た後だから、その単純な動作にすら俺はドキドキした。
 先ほど回し飲みしたからなおさらだ。
 そして彼女は考えこむように少しだんまりした後、

「じゃあ、影野くんはどんな人となら、ああいうことが出来るの?」

 とんでもない質問をしてきた。
 どういう意味の質問なのかは直感で分かった。
「どんな子がタイプなのか?」という質問と同じ意味だ。
 だから俺は、

「きみだ」

 と答えたかったが、そんな勇気と自信はその時の俺には無かった。
 だから俺は、

「そうだなあ……真面目で明るくて、だけど気配りも出来て、ダメなやつの頼みにも時間を割いて答えてくれるそんなやさしい人、かな」

 出来るだけ彼女の特徴にあてはまる答えを返した。
 しかし最後の部分は直球すぎたかもしれない。
 誰のことを指しているのか、察しの良い彼女はすぐに気付いたかもしれない。
 そして彼女は俺のそんな焦りにも気付いたのか、

「そうなんだ……影野くんはそういう子が好きなんだ……」

 と、少し顔を赤らめながらそう言った。
 いや、赤く見えたのは気のせいかもしれない。俺が自意識過剰なだけかもしれない。

 とにかく、その後は何事も無く、とんでもない一日は終わった。
 だが、やっぱり最後の一言は直球すぎだった。
 だから、俺達の日常は再び変わることになった。
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