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第四話 恋と衝撃の秋(9)
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◆◆◆
そして文化祭の当日となった。
我が校の文化祭は普通だ。他の学校の文化祭のことなどよく知らないが。でも普通だと思う。
なぜなら、外部からの客はほとんどいないし、同じ学校の連中がこづかいを出し合うだけの、そんなお祭りだからだ。
ドラマのような煌びやかさや派手なことは一切無い。
少なくとも、去年まではそうだったはずなのだが――
「……っ」
その日、初めてそれを目にした俺は一瞬言葉を失った。
それは当日まで公開されず、隠されていた。
驚かせたかったからだろう。
その目論見は見事に成功していた。
それはエプロンドレスだった。
メイド服というよりはドレスと言ったほうが正しい。上品だからだ。
それを女子達が、天野さんが着てるんだから、驚かないわけが無い。
うちの女子はレベルが高い、悪友が言った言葉を俺は思い出していた。
だから男子達は大いに盛り上がった。撮影しているやつまでいるくらいに。
「ちょっと、恥ずかしいんだから撮らないでよ!」
男どもの歓声に対し、女子の誰かがそんなことを言った。
無茶言うなと思った。こんなの漫画でしか見たことないのだから。
「カワイイとは思うけど、やっぱりこれはやりすぎだったんじゃ……」
別の誰かがそんな不安を漏らしているが、俺からすれば杞憂といったところだ。誰の前に出しても問題無い、そんなわけのわからない自信があった。
だが、やはり俺の目線はある一人に釘付けになった。
そして、俺のそんな視線に気付いた彼女は、俺のほうを見ながら恥ずかしそうに口を開いた。
「えぇっと……どうかな? 変じゃない?」
彼女は俺と目を合わせながらそう言ったのだが、俺が答えるよりも早く、どこかのバカが「変じゃないよ!」と力強く答えた。
俺が言うはずだったセリフを先に取られたことには正直苛立ったが、俺はすぐに気を取り直して口を開いた。
「よく似合ってると思う」
思う、の部分は照れ隠しだった。
曖昧にすることで隠しているつもりだった。
そして文化祭の当日となった。
我が校の文化祭は普通だ。他の学校の文化祭のことなどよく知らないが。でも普通だと思う。
なぜなら、外部からの客はほとんどいないし、同じ学校の連中がこづかいを出し合うだけの、そんなお祭りだからだ。
ドラマのような煌びやかさや派手なことは一切無い。
少なくとも、去年まではそうだったはずなのだが――
「……っ」
その日、初めてそれを目にした俺は一瞬言葉を失った。
それは当日まで公開されず、隠されていた。
驚かせたかったからだろう。
その目論見は見事に成功していた。
それはエプロンドレスだった。
メイド服というよりはドレスと言ったほうが正しい。上品だからだ。
それを女子達が、天野さんが着てるんだから、驚かないわけが無い。
うちの女子はレベルが高い、悪友が言った言葉を俺は思い出していた。
だから男子達は大いに盛り上がった。撮影しているやつまでいるくらいに。
「ちょっと、恥ずかしいんだから撮らないでよ!」
男どもの歓声に対し、女子の誰かがそんなことを言った。
無茶言うなと思った。こんなの漫画でしか見たことないのだから。
「カワイイとは思うけど、やっぱりこれはやりすぎだったんじゃ……」
別の誰かがそんな不安を漏らしているが、俺からすれば杞憂といったところだ。誰の前に出しても問題無い、そんなわけのわからない自信があった。
だが、やはり俺の目線はある一人に釘付けになった。
そして、俺のそんな視線に気付いた彼女は、俺のほうを見ながら恥ずかしそうに口を開いた。
「えぇっと……どうかな? 変じゃない?」
彼女は俺と目を合わせながらそう言ったのだが、俺が答えるよりも早く、どこかのバカが「変じゃないよ!」と力強く答えた。
俺が言うはずだったセリフを先に取られたことには正直苛立ったが、俺はすぐに気を取り直して口を開いた。
「よく似合ってると思う」
思う、の部分は照れ隠しだった。
曖昧にすることで隠しているつもりだった。
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