らぶこめ！ 太陽のヒナタと影のエイジ

第四話 恋と衝撃の秋(6)

　　　◆◆◆

　要は、金の話であった。
　外装部分の費用が現時点で大体いくらになるのかを知っておく必要があった。
　俺はそれを調べるために休日を使って出かけることにした。
　
　この外出には天野さんも付いて来てくれた。
　最初は一人で行くつもりだったが、初めての仕事ゆえの不安があったために、俺は彼女の同伴をありがたく受け入れた。
　やはり誰かが一緒にいてくれると心強い。それが彼女ならなおさらだ。
　考えている手は二つあった。
　一つは、ホームセンターで材料を買い、自分達で加工するというもの。
　こちらは安く済むが、自分達の技術が満足なものではないという不安がつきまとう。
　もう一つは、木材加工所で材料の手配から加工まで全部やってもらうという手だ。
　図面を渡せば木材の裁断までやってくれるはず。だから間違い無く完成度が高くなる。
　しかし、どちらにしても問題はいくらかかるのかということだ。
　それを確認するための外出であった。
　目的地は事前に調べてあったので迷うことは無かった。
　天野さんが一緒にいる。だがそれでも足を踏み入れるのには勇気が必要だった。
　自分の身分が一目で分かるように学生服を着ていたためか、入ると同時に注目を集めた。
　だからこちらが口を開くよりも、従業員から声をかけられるほうが早かった。
　何の用か、最初に聞かれたことはそれだった。
　この答えは事前に用意していた。
　何のためにここに来たのかを説明すると、従業員はすぐにＯＫの返事をくれた。
　そして俺は図面を渡し、従業員が戻ってくるのを待つことにした。
　従業員はすぐに再び姿を見せた。二十分もかからなかった。
　従業員はまず最初に欲しかったものを手渡してくれた。
　それは見積書。
　依頼する仕事の値段を事前に知るためのものだ。
　これか領収書が無いと予算を切れない。領収書は先に支払わなければならないため、今回は見積もりにした。
　だが、そこに書かれていた値段は思ったよりも安いものだった。
　加工代も含んでいるのに、ホームセンターで買うよりも安いように思えた。学生だから安くしてくれたのかもしれない。
　これなら見積もりを出してもらう必要も無かった。
　だから俺はその場で手持ちから支払いを済ませてしまうことにした。
　実はこの時、忘れていることが一つあった。
　それは外装についてクラスのみんなから意見を募ること。本当は今日は費用を知るためだけの外出のはずだった。
　これを思い出したのは翌日になってからだったが、結果的には問題にならなかった。