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第三話 近づき始める二人(6)
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めんどくさい、その部分に俺は強く共感した。
だから俺は口元が自然とにやけるのを感じなながら口を開いた。
「やっぱりめんどくさいのかあ。まあ、そりゃそうだよなあ。俺なんて料理は全然だから、毎日インスタント食品になっちゃいそうだ」
俺のこの発言に彼女は応えてくれた。
「私も本当にめんどくさい時は冷凍食品とかですませちゃうこと、時々あるよ」
彼女は俺と同じような薄い笑みでそう言った。
俺はその微笑み(ほほえみ)が妙に嬉しかった。
そして俺が喜んでいることを察したのか、彼女は言葉を続けた。
「あ、訂正するね。時々、じゃなくて結構手を抜いてると思う。そういえば昨日も冷凍食品だった。見栄張っちゃった」
明らかな笑いを誘ったその言い回しに、俺は笑顔で応えた。
「他にも色々手を抜いてるよー。だってやっぱりめんどくさいもん。出前を頼んだり、出費を我慢して外で食べたりすることもあるよ。それに、掃除だって――」
まるで畳み掛けるように彼女の言葉が続く。
しかしこの時、俺は少し違うことを考えていた。
天野さんの手料理を食べてみたい、俺は本気でそう思っていた。
だが、作ってくれなどと言う勇気はこの時の俺には無かった。
◆◆◆
料理の質問にはちょっと焦ったのを覚えている。
なぜなら、正直に答えるのは恥ずかしかったから。
私が当時よく作っていた料理とは、おそらく彼が想像していたものとはかけ離れたものだったから。
卵に納豆やお豆腐、そういう安くて栄養価の高いものだけで構成されている、いわゆる貧乏飯というやつだったから。
つまり、当時の私は料理への手間よりも、服や娯楽品のための貯金を優先していたのだった。
だから俺は口元が自然とにやけるのを感じなながら口を開いた。
「やっぱりめんどくさいのかあ。まあ、そりゃそうだよなあ。俺なんて料理は全然だから、毎日インスタント食品になっちゃいそうだ」
俺のこの発言に彼女は応えてくれた。
「私も本当にめんどくさい時は冷凍食品とかですませちゃうこと、時々あるよ」
彼女は俺と同じような薄い笑みでそう言った。
俺はその微笑み(ほほえみ)が妙に嬉しかった。
そして俺が喜んでいることを察したのか、彼女は言葉を続けた。
「あ、訂正するね。時々、じゃなくて結構手を抜いてると思う。そういえば昨日も冷凍食品だった。見栄張っちゃった」
明らかな笑いを誘ったその言い回しに、俺は笑顔で応えた。
「他にも色々手を抜いてるよー。だってやっぱりめんどくさいもん。出前を頼んだり、出費を我慢して外で食べたりすることもあるよ。それに、掃除だって――」
まるで畳み掛けるように彼女の言葉が続く。
しかしこの時、俺は少し違うことを考えていた。
天野さんの手料理を食べてみたい、俺は本気でそう思っていた。
だが、作ってくれなどと言う勇気はこの時の俺には無かった。
◆◆◆
料理の質問にはちょっと焦ったのを覚えている。
なぜなら、正直に答えるのは恥ずかしかったから。
私が当時よく作っていた料理とは、おそらく彼が想像していたものとはかけ離れたものだったから。
卵に納豆やお豆腐、そういう安くて栄養価の高いものだけで構成されている、いわゆる貧乏飯というやつだったから。
つまり、当時の私は料理への手間よりも、服や娯楽品のための貯金を優先していたのだった。
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