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第二話 そしてエイジは男になる(1)
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◆◆◆
そしてエイジは男になる
◆◆◆
それからは「努力する」という行為の意味が俺の中で変わった。
その理由ははっきりと自覚出来た。
彼女から良い目で見られたい、彼女にカッコつけたい、はっきりとそう思うようになっていた。
その気持ちがもっとも分かりやすく表面化したのはやはり部活だった。
自然と熱が入った。
もっと良いタイムを、もっと速くなりたい、自然にそう思うようになった。
勝利を彼女のために、なんていうアホなことを言うつもりはまったくなかったが、やはり意識の片隅に彼女の姿はあった。
そう、彼女に勝利を捧げる、そんな甲斐性は俺にはまったく無かった。そのはずだった。
だが、その時はむこうから勝手にやって来た。
それは毎年6月に行われる体育祭でのことだった。
俺のクラスはあるクラスと一位争いで良い勝負になった。
あとは最終競技である400メートルリレーで勝ったほうが優勝という展開になった。
アンカーは俺。理由はもちろん、陸上部だからだ。
当然のように緊張した。
応援席からの声はかつてないほどに大きなものになっていた。
その声の中には、当然だが彼女からの声援も混じっていた
その声に応えたいと本気で思った。
だから緊張する。
バトンが来るのを待っている間、震えを押さえるのに必死だった。
そして勝利の女神は俺に微笑んではいないようであった。
バトンを先に受け取ったのは相手クラスのほうだった。
俺がスタートを切れたのはその二秒後。
相手が同じ陸上部員だったら既に絶望的な差だ。
だが、勝利の女神はこちらに振り向きつつあるように思えた。
相手は俺よりも明らかに遅い。いける! そう思った。
そしてエイジは男になる
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それからは「努力する」という行為の意味が俺の中で変わった。
その理由ははっきりと自覚出来た。
彼女から良い目で見られたい、彼女にカッコつけたい、はっきりとそう思うようになっていた。
その気持ちがもっとも分かりやすく表面化したのはやはり部活だった。
自然と熱が入った。
もっと良いタイムを、もっと速くなりたい、自然にそう思うようになった。
勝利を彼女のために、なんていうアホなことを言うつもりはまったくなかったが、やはり意識の片隅に彼女の姿はあった。
そう、彼女に勝利を捧げる、そんな甲斐性は俺にはまったく無かった。そのはずだった。
だが、その時はむこうから勝手にやって来た。
それは毎年6月に行われる体育祭でのことだった。
俺のクラスはあるクラスと一位争いで良い勝負になった。
あとは最終競技である400メートルリレーで勝ったほうが優勝という展開になった。
アンカーは俺。理由はもちろん、陸上部だからだ。
当然のように緊張した。
応援席からの声はかつてないほどに大きなものになっていた。
その声の中には、当然だが彼女からの声援も混じっていた
その声に応えたいと本気で思った。
だから緊張する。
バトンが来るのを待っている間、震えを押さえるのに必死だった。
そして勝利の女神は俺に微笑んではいないようであった。
バトンを先に受け取ったのは相手クラスのほうだった。
俺がスタートを切れたのはその二秒後。
相手が同じ陸上部員だったら既に絶望的な差だ。
だが、勝利の女神はこちらに振り向きつつあるように思えた。
相手は俺よりも明らかに遅い。いける! そう思った。
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