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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ
第五十話 輝く者と色あせていく者(1)
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◆◆◆
輝く者と色褪せていく者
◆◆◆
クリスがガストンを降伏させてから二週間後――
「――以上でございます。クリス将軍はガストン達にアレを教えるようですが、よろしいですか? 何か問題があれば私が止めに行きますが」
アランのもとに戻ってきたクラウスは例の件について報告した。
その報告に対し、アランは首を振りながら答えた。
「いや、それには及ばない。ガストン達のことはクリス殿に任せておいても問題無いだろう」
そしてアランは穏やかな笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「それにしても、ちょうど良い時に戻ってきてくれた」
これにクラウスが「と、仰いますと?」と尋ねると、アランは答えた。
「ちょっと相談したいことがあってね……アンナにも聞こうと思っていることなんだ」
その言葉にクラウスは少し嫌な予感を覚えた。
アンナにも聞こうと思っている、という部分が引っかかった。
女性が関わる相談事について、自分が力になれるとは思えなかったからだ。
しかしアランはそんなことお構い無しに口を開いた。
「実はな、この後――」
そしてアランの口から出た内容は、クラウスが思った類の内容であった。
主君からの相談であるがゆえに無下に出来るわけもなく、クラウスはとりあえず答えたが、正解かどうかはさっぱり分からなかった。
アランはそんなクラウスの自信の無さを感じ取っていたが、その案を採用することにした。
その時のアランの顔には笑顔が浮かんでいたが、クラウスの心には不安しか無かった。
◆◆◆
一週間後――
「――と、いうわけなんだ。アンナはどう思う?」
クラウスに言った通り、妹を呼び出したアランは早速同じ相談を持ちかけた。
「悪く無い、とは、思いますが……」
そしてアランが述べたクラウスの案に対し、アンナの感想は歯切れの良いものでは無かった。
その理由はクラウスと同じであった。
アンナにも何が正解なのか分からないのだ。
それを感じ取ったアランは口を開いた。
「あまり深刻に考えなくていい。アンナが感じた通りに、思った通りに答えてくれればそれでいい」
この言葉からわずかな勇気を抱いたアンナはゆっくりと口を開いた。
「……力強さを示すことも大事かと思いますが、華やかさも必要だと思います」
それがただの直感、思いつきでは無いのを感じ取ったアランは尋ねた。
「どうしてそう思う?」
アンナはすぐに理由を答えた。
「無能力者の皆様は経済的に不利な境遇にある人が多いでしょう? でしたら、華やかなほうがそういう人達にとって新たな希望になるのではと思って。……嫉妬して荒れる人もいらっしゃるでしょうけども」
その答えにアランは頷きを返し、口を開いた。
「よし。では、クラウスとアンナ、二人の意見を組み合わせた形で『やる』ことにしよう」
そう言うアランの顔には自信と期待感が滲み溢れていたが、アンナの心にはやはり不安しか無かった。
輝く者と色褪せていく者
◆◆◆
クリスがガストンを降伏させてから二週間後――
「――以上でございます。クリス将軍はガストン達にアレを教えるようですが、よろしいですか? 何か問題があれば私が止めに行きますが」
アランのもとに戻ってきたクラウスは例の件について報告した。
その報告に対し、アランは首を振りながら答えた。
「いや、それには及ばない。ガストン達のことはクリス殿に任せておいても問題無いだろう」
そしてアランは穏やかな笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「それにしても、ちょうど良い時に戻ってきてくれた」
これにクラウスが「と、仰いますと?」と尋ねると、アランは答えた。
「ちょっと相談したいことがあってね……アンナにも聞こうと思っていることなんだ」
その言葉にクラウスは少し嫌な予感を覚えた。
アンナにも聞こうと思っている、という部分が引っかかった。
女性が関わる相談事について、自分が力になれるとは思えなかったからだ。
しかしアランはそんなことお構い無しに口を開いた。
「実はな、この後――」
そしてアランの口から出た内容は、クラウスが思った類の内容であった。
主君からの相談であるがゆえに無下に出来るわけもなく、クラウスはとりあえず答えたが、正解かどうかはさっぱり分からなかった。
アランはそんなクラウスの自信の無さを感じ取っていたが、その案を採用することにした。
その時のアランの顔には笑顔が浮かんでいたが、クラウスの心には不安しか無かった。
◆◆◆
一週間後――
「――と、いうわけなんだ。アンナはどう思う?」
クラウスに言った通り、妹を呼び出したアランは早速同じ相談を持ちかけた。
「悪く無い、とは、思いますが……」
そしてアランが述べたクラウスの案に対し、アンナの感想は歯切れの良いものでは無かった。
その理由はクラウスと同じであった。
アンナにも何が正解なのか分からないのだ。
それを感じ取ったアランは口を開いた。
「あまり深刻に考えなくていい。アンナが感じた通りに、思った通りに答えてくれればそれでいい」
この言葉からわずかな勇気を抱いたアンナはゆっくりと口を開いた。
「……力強さを示すことも大事かと思いますが、華やかさも必要だと思います」
それがただの直感、思いつきでは無いのを感じ取ったアランは尋ねた。
「どうしてそう思う?」
アンナはすぐに理由を答えた。
「無能力者の皆様は経済的に不利な境遇にある人が多いでしょう? でしたら、華やかなほうがそういう人達にとって新たな希望になるのではと思って。……嫉妬して荒れる人もいらっしゃるでしょうけども」
その答えにアランは頷きを返し、口を開いた。
「よし。では、クラウスとアンナ、二人の意見を組み合わせた形で『やる』ことにしよう」
そう言うアランの顔には自信と期待感が滲み溢れていたが、アンナの心にはやはり不安しか無かった。
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