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最終章

最終話 おとぎ話の続き(9)

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 それは名の通りの、正に巨人が描く太陽十字であった。
 規模が大きすぎるゆえに、幻想的ですらあった。
 まるで水平線から顔を覗かせた太陽のよう。
 水平に奔る三日月が輝く水平線を表し、わずかに歪んだ中央の円が朝霧と水面の反射でぼやける夜明けの太陽に見える。
 だが、光の戦士達はその非現実的な代物に対して恐れを抱かなかった。

「破ッ!」「鋭ィッヤ!」「せぇやっ!」

 光の戦士達が一斉に居合いで三日月を放つ。
 直後、幻想の太陽は形を失い、ただの巨大な嵐となった。
 蛇の群れと三日月の群れがぶつかり合う。
 瞬間、互角、とヴィクトルは思い、光の戦士達はその心の声を感知した。
 ゆえに、

「「「雄雄雄ッ!」」」

 ヴィクトルと光の戦士達は同時に気勢を響かせ、ぶつかり合う嵐に向かって踏み込んだ。
 蛇同士の衝突で生じる閃光の中から金属音が響き渡る。
 同時に散った火花は、より鮮やかに滲んだ赤色の中に紛れた。
 直後、

「雄応ッ!」

 応、と、気勢を響かせながら、赤色を身に纏いながら、ヴィクトルが閃光の中から飛び出した。
 何に応えるというのか、それは、

「「「でぇやっ!」」」

 直後に襲い掛かってきた三人の光の戦士を迎え討つためのものであった。
 先手を取ったのは間合いの長いヴィクトル。
 三人の胸元を同時に撫で切るように右手の大剣を左に振るう。
 この一撃に対し三人は同じ構えで、水鏡の構えで迎え打った。
 一閃と共に三つの火花が散る。

「!」

 瞬間、ヴィクトルの心に驚きが滲んだ。
 誰も倒せなかったからだ。赤色が散らなかったからだ。
 一人目は大きく姿勢を崩したが、二人目は持ちこたえ、三人目では完全に受け流された。
 ゆえに三人目は即座に刃を切り返し、

「疾ッ!」

 鎧の隙間を狙って突きを繰り出した。
 が、

「ぐぁっ!」

 三人目の体はその閃光のような一撃もろとも、ヴィクトルの盾による突き飛ばしによって吹き飛ばされた。

「でぇやっ!」

 そして、盾を前に繰り出したことで生じた胴体の隙を二人目が狙うも、

「ぁがっ?!」

 切り返しで放たれた大剣によって、股下から脳天に向かって真っ二つにされた。
 真上に大剣を放り投げるような一撃。
 鮮血と共に剣先が天に向く。
 直後、

「斬!」

 裏に回り込んでいた一人目が、がら空きの背中に向かって居合いを放った。
 隙間を狙わずとも零距離からの三日月であれば――確信に近い期待と共に放たれた一撃。
 であったが、

「!?」

 瞬間、ヴィクトルの巨体は一人目の視界から上へ消えた。
 直前に抱いた「上に放り投げるような」という印象は間違いでは無かったのだ。
 剣を振り上げた勢いを利用した後方への回転跳び。
 胸を回転軸とした、一人目の頭頂部とヴィクトルの頭頂部がかすめるような軌道の跳躍。
 回り込みを察したヴィクトルは、このために大剣を振り上げたのだ。
 この動きに一人目は「その重装備でなんと身軽な」という感想を抱いたが、それが言葉として完成するよりも早く、

「ぐぇっ!」

 直後、真上から繰り出された盾の一撃によって、その頭蓋は踏み砕かれた。
 そしてそれは次の攻撃に繋げるための動作。振り上げて勢いをつけた大剣を使わなかった理由。
 次の瞬間、ヴィクトルは理由と共にそれを見せた。
 頭蓋を砕いた感触が残る盾を輝かせ、下の一人目をねじ潰すように捻る。
 そして完成した回転する巨大な防御魔法を、上から一人目ごと串刺しにするかのように、

「破ァッ!」

 ヴィクトルは輝く大剣を突き立てた。
 光る嵐がヴィクトルを中心に広がり、全方位をなぎ払う。

「「「!」」」

 ヴィクトルの着地の隙を狙っていた光の戦士達が、やむなく足を止める。
 襲い掛かってくる蛇の群れを切り払う。
 その斬撃と嵐の轟音の中で、光の戦士達は見た。
 嵐の発生源であるヴィクトルが再び眩く輝いたのを。
 そしてその輝きから伝わってくる技の名は、直後に心の叫びとなって響いた。

“ギガース・トルクエント・エクスプローデア・ハスタム!”
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