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最終章
第五十八話 おとぎ話の結末(4)
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◆◆◆
一方、魔王は声を上げ続けていた。
奴を止めろ、と。
「ぎゃあっ!」
しかし響くのは味方の悲鳴ばかり。
「雄雄っ!」
勇ましい声を上げるのは迫る相手ばかり。
その耳障りな気勢を止めるために爆発魔法を投げ込む。
「うわぁっ!」
味方が少々巻き込まれるが、それはどうでもいい。
問題は我の爆発魔法では止まらないこと。
見た目通りに重く、そしてそれ以上に力強い!
(おのれ!)
自分の衰えが、老いが忌々しい。
我にもアレが、後ろでラルフが投げ続けているあの特別製を練成出来れば、こんな焦りなど抱かずに済んだ。
「ラルフ!」
思わずその焦りが呼び声となって飛び出す。
しかしラルフはリーザとかいう魔法使いの相手で手一杯という様子。
しかも押されているように見える。
何という体たらく。お前はこの国で最強の魔法使いでは無かったのか? 報告書が間違っていたのか?
「何をしておる! ラルフ!」
「……っ」
再びの呼び声にもラルフは応えない。応えられない。リーザとの撃ち合いで精一杯。
魔王の援護が無ければ、ラルフ一人では今のリーザを相手にするのは分が悪い。
報告書は間違っていない。
しかしそれは情報が古い。
リーザはさらに強くなった。爆発魔法の射程と連射速度が増した。
だがラルフはあまり変わらなかった。変われなかった。右手を失ってしまったがゆえに。ケビンが刻み込んだ呪いが彼の成長を遅くしてしまった。
「……ラルフ!」
魔王の呼び声にあきらめと失望の色が混じる。
ゆえに、魔王は意識の線をラルフから外し、別の方向に向けた。
◆◆◆
「っ!」
自身の左腕が急速に冷却されていく感覚に目を見開くオレグ。
高速演算による緩慢な世界の中で思考の時間を稼ぐ。
すぐにこの拘束を解除せねばならない。
それ自体は簡単だ。しかし同時にやらねばならないことがある。
熱を作らなくてはならない。でなければ拘束を解除しても凍傷で使い物にならなくなる。
そして幸いなことに、そのための作業工程は既に持っている。知っている。
ゆえにオレグは即座に二つの注文を大工に出した。
「!」
その直後、今度はバージルが目を見開いた。
感じ取ったのだ。電撃魔法と炎魔法が凍りつきつつあるオレグの左腕に集まったのを。
そして次の瞬間、その変化は目に映った。
オレグの左腕が激しく痙攣し始め、同時に赤みを帯び始めたのだ。
電気の力で筋肉を激しく伸縮させつつ、炎魔法で熱を生んでいるのだ。
そしてまるで茹で上がったかのように赤くなった直後、オレグは右手でカイルの左腕をへし折りながらその拘束を解除した。
「くそっ!」
その赤くなった腕を狙って、バージルが立ち上がりながら槍斧を振るう。
これをオレグは「後ろに」跳んで回避した。
受けでも、流しでも無い、オレグには似合わない回避行動にそれは見えた。
しかし違った。
それは前進だった。
オレグは目標を変えたのだ。
誰にも聞こえぬオレグの思考の叫びがそれを示していた。
(魔王め! 世話が焼ける!)
一方、魔王は声を上げ続けていた。
奴を止めろ、と。
「ぎゃあっ!」
しかし響くのは味方の悲鳴ばかり。
「雄雄っ!」
勇ましい声を上げるのは迫る相手ばかり。
その耳障りな気勢を止めるために爆発魔法を投げ込む。
「うわぁっ!」
味方が少々巻き込まれるが、それはどうでもいい。
問題は我の爆発魔法では止まらないこと。
見た目通りに重く、そしてそれ以上に力強い!
(おのれ!)
自分の衰えが、老いが忌々しい。
我にもアレが、後ろでラルフが投げ続けているあの特別製を練成出来れば、こんな焦りなど抱かずに済んだ。
「ラルフ!」
思わずその焦りが呼び声となって飛び出す。
しかしラルフはリーザとかいう魔法使いの相手で手一杯という様子。
しかも押されているように見える。
何という体たらく。お前はこの国で最強の魔法使いでは無かったのか? 報告書が間違っていたのか?
「何をしておる! ラルフ!」
「……っ」
再びの呼び声にもラルフは応えない。応えられない。リーザとの撃ち合いで精一杯。
魔王の援護が無ければ、ラルフ一人では今のリーザを相手にするのは分が悪い。
報告書は間違っていない。
しかしそれは情報が古い。
リーザはさらに強くなった。爆発魔法の射程と連射速度が増した。
だがラルフはあまり変わらなかった。変われなかった。右手を失ってしまったがゆえに。ケビンが刻み込んだ呪いが彼の成長を遅くしてしまった。
「……ラルフ!」
魔王の呼び声にあきらめと失望の色が混じる。
ゆえに、魔王は意識の線をラルフから外し、別の方向に向けた。
◆◆◆
「っ!」
自身の左腕が急速に冷却されていく感覚に目を見開くオレグ。
高速演算による緩慢な世界の中で思考の時間を稼ぐ。
すぐにこの拘束を解除せねばならない。
それ自体は簡単だ。しかし同時にやらねばならないことがある。
熱を作らなくてはならない。でなければ拘束を解除しても凍傷で使い物にならなくなる。
そして幸いなことに、そのための作業工程は既に持っている。知っている。
ゆえにオレグは即座に二つの注文を大工に出した。
「!」
その直後、今度はバージルが目を見開いた。
感じ取ったのだ。電撃魔法と炎魔法が凍りつきつつあるオレグの左腕に集まったのを。
そして次の瞬間、その変化は目に映った。
オレグの左腕が激しく痙攣し始め、同時に赤みを帯び始めたのだ。
電気の力で筋肉を激しく伸縮させつつ、炎魔法で熱を生んでいるのだ。
そしてまるで茹で上がったかのように赤くなった直後、オレグは右手でカイルの左腕をへし折りながらその拘束を解除した。
「くそっ!」
その赤くなった腕を狙って、バージルが立ち上がりながら槍斧を振るう。
これをオレグは「後ろに」跳んで回避した。
受けでも、流しでも無い、オレグには似合わない回避行動にそれは見えた。
しかし違った。
それは前進だった。
オレグは目標を変えたのだ。
誰にも聞こえぬオレグの思考の叫びがそれを示していた。
(魔王め! 世話が焼ける!)
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