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最終章
第五十四話 魔王上陸(8)
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「止まるな! 走れ!」
「押し合うな! 列を乱せばさらに遅れるぞ!」
「おい! 誰かこの荷車を押すのを手伝ってくれ!」
市外への最短経路であり、かつ最も広い街の大通りは怒号と悲鳴のような叫び声に包まれていた。
誘導を行っている兵士達は声を枯らす勢いで声を上げ続けている。
市民達と兵士達の多くは迫る脅威を感知出来ているわけでは無い。
だが、それでも何かが近づいて来ていることは分かっていた。
ただの叫び声とは違う何かの音が、だんだんと近づいて来ているからだ。
ゆえに焦る。ゆえに叫ぶ。
が、
「「「……」」」
対照的に静かな者達もいた。
感知が強い者達だ。
その者達はその近づいてくる音が戦闘音であることを感じ取っていた。
そしてその発生源が主に上からであることも。
屋根の上にいる狙撃兵や監視兵が攻撃されている。
そして速い。間も無くここに到着する。
それが分かっていたからその者達は口を閉じていた。どのように迎え撃てばいいかを考えていたからだ。
そして、
「「来るぞ!」」
その時が来たのを感じ取ったケビンとバージルは同時に声を上げた。
◆◆◆
そして同じく声を上げた者が港にもいた。
「全員、撃ち方そのままに聞け! 街の内部に敵部隊が浸透してきている! ここに踏みとどまれば我々はいつか包囲されてしまう!」
それなりの感知力を有するゆえに、大通りまでその手が伸びたのを感じ取った指揮官は言葉を続けた。
「なので我等はこれより市民の避難の援護に回る! 予定通り、防御陣形を組んで大通りへ向かう! 全員、後退の準備をしろ!」
それを聞いた兵士達は手の空いた者から即座に行動を開始した。
矢を撃ち尽くした兵士が後ろに下がり、大盾に持ち替える。
魔法能力の無い者から整列を開始。
魔法使いは最後まで残る。しんがりでは無いが、攻撃以外の仕事がまだ残っている。
指揮官は頃合を見てその指示を出した。
「投石器に火を放て! 機械弓も破壊しろ!」
炎を使える者が投石器に群がり、それ以外の者が機械弓に向かって光弾を放つ。
事前に割り当てられていた仕事を終えた者から順番に整列。
弓兵だった大盾兵と入れ替わるように後ろへ。
しかし敵がこの変化と動きを黙って見過ごすわけが無い。敵も感知能力を有しているのだから。
攻撃もほぼ止まっている。ゆえに当然、
「敵が突撃してきます!」
次の行動に完全に移るまでの、その隙を敵が突かないわけが無い。
これに指揮官は同じく当然の答えを返した。
「接近戦になるぞ! 全員抜剣しろ!」
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