Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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最終章

第五十三話 己が鏡と共に(10)

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   ◆◆◆

 そしてサイラスはルイスに言われた通りシャロンと過ごした。
 それはやはり奇妙だった。
「教えを請う」、その名目のもとに近づく歪な二人。
 されど、二人の関係は悪くはならないように見えた。
 それはまるで、お互いに欠けている何かを埋め合おうとしているかのようであった。

 そんな日が一週間ほど過ぎたある日のこと――

「シャロン、紹介しよう。和の国からの協力者、雲水だ」

 居間に呼ばれたサイラスとシャロンはルイスから突然そんな紹介をされた。

「「……」」

 二人の回答は沈黙であったが雲水は特に気にした様子も見せず、頭を小さく下げた。

「よろしくお願いする」

 その挨拶にルイスが言葉を添えた。

「彼は我等と和の国を結ぶ重要な繋ぎ役だ。失礼の無いようにな」

 しかしこの言葉に対しても、

「「……」」

 二人の回答は沈黙であった。
 が、沈黙の理由はそれぞれ違っていた。
 サイラスが黙っている理由は、シャロンが雲水を知らないことを、忘れていることを感じ取ったからだ。
 そしてシャロンの沈黙はそんなサイラスの思考を読み取ったから。
 だからシャロンは、

「ねえ……?」

 ルイスに尋ねた。

「私は彼と戦ったことがあるようだけれども、どうしてそれを覚えていないのかしら?」

 これにルイスは「既に用意してあった答え」を述べた。

「彼とは密接な関係を築いてもらわねばならないからな。だから調整の時に私が消した」
「……」

 シャロンはその言葉に良い気持ちはしなかったが、

「ふうん、そう……でも、あなたが気を許していて、しかも『計画』に関わっているということは、今は本当に何も問題無いということね?」

 これにルイスは「ああ」と頷きを返した。
 同時に、内心ほくそ笑んでいた。
『私を無条件で信用する』、今回はその設定が勝ったようだ。
 そしてこれはシャロンに対しての『確認試験』であった。
 サイラスという異物の影響を見るための試験。
 とりあえず、今のところは特に問題無いようだ。
 ルイスはその実感をシャロンから発せられる脳波から得た後、口を開いた。

「というわけで、シャロンには今から雲水に町の案内をお願いする。ただの散歩でもいい。二人で話し合っておいたほうがいいだろう」

 そう言った後、ルイスはサイラスのほうに視線を移しながら言葉を続けた。

「サイラスは私についてきてくれ」

 その言葉にサイラスは内容を尋ね返そうとしたが、それよりも早くルイスは薄い笑みとともに答えた。

「この前の続きだ。ここで何が起きているか、我々が何をしようとしているのか、それを教えてやる」
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