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第七章 アランが父に代わって歴史の表舞台に立つ

第五十一話 勇将の下に弱卒なし(5)

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 直撃を回避したのに防御魔法が破れ、体が吹き飛ぶ。
 ケビンはその浮遊感の中で思った。なんてやつだ、と。
 されど同時に幸運だとも思った。
 リーザと同じ威力だったらこの一発で死んでいた可能性が高いからだ。
 そしてケビンは吹き飛びながら自身の状態を確認。
 戦闘続行に支障が無いことが判明すると同時に、クラウスに手綱を渡す。
 交代したクラウスは着地の衝撃を受身でいなしながら、剣に魔力を込めた。
 立ち上がりながら光る二刀を一閃。
 起き上がりの隙を狙って一枚で放たれたラルフの嵐と、クラウスの三日月がぶつかり合う。

「!」

 直後、こちらの嵐が相手の嵐を突破したのを、ケビンは見逃さなかった。
 一枚で放たれた嵐ならば、こちらの二刀で打ち勝てるということ。
 すなわち勝機。
 自然と体が、クラウスが動かしていた。
 立ち上がりと同時に振り上げた二刀を×字型に交差させながら振り下ろす。
 即座に足を前に出し、踏み込みながら挟み込むように二刀を水平に一閃。
 そして二刀を一本に合わせるように両手を近付けながら、構えを下段に。
 逆足で踏み込みながら、

「斬っ!」

 束ねた刃を振り上げ、重ねた三日月を放つ。
 放たれた三連射の光刃が次々と嵐とぶつかり合う。
 クラウスの手は止まらない。
 振り上げた二刀を振り下ろし、同じ三連射を繰り返す。

(押せ押せーっ!)

 相手に三枚の防御魔法を展開する時間を与えるな、そんな思いが含まれたケビンの叫びが心の中に響き、

「応ッ!」

 気勢と共にクラウスが新たな刃を放つ。

「っ!」

 この連射に、ラルフはついに焦りの色を浮かべた。
 双方の距離がじりじりと詰まる。
 だからラルフは嵐から爆発魔法に切り替えた。
 連射速度、貫通力ともに一枚の嵐よりも圧倒的に高い。
 しかしこれは射程が短い。槍自体はそれほど伸びない。球自体は遠くに投げれるが、燃焼前に割られては不発になる。
 つまり、防御に使わされているということ。

「……っ」

 その事実がラルフには忌々しかった。
 ラルフの心に新たな色が滲む。
 それは荒々しい、怒気であった。
 そうだ、怒りだ。恐怖では無い。
 まだラルフには怒る余裕があるのだ。
 ゆえにラルフは、

「調子に乗るなっ!」

 その怒気を爆発させると同時に、余裕の根拠を見せた。

「!?」

 直後、その攻撃の正体を虫の報告で知ったケビンは思わず後方に跳び退いた。
 ラルフが見せたもの、それは巨大な光弾であった。
 ラルフの上半身が隠れるほどの大きさ。
 しかしこれほど大きくては速く投げられない。
 事実、ラルフが放ったその大玉はほとんど飛ばず、前方で地面に落ちるように思えた。
 だが、それで良かった。
 巻き込まれない距離が確保出来れば何でも良かったのだ。
 ついさきほど、ラルフは気付いたのだ。
 防御魔法を閃光魔法で破る理由だ。
 その答え自体はもう知っていた。
 それは針の速度を嵐に乗せるというだけではなく、回転する針に巻き込むことで嵐を中心に集束させるためである。一時的に圧縮されるため熱エネルギーが増大し、単純な威力も増す。
 しかし威力を上げるだけならば、針などという面倒なものを使う必要は無いのではと、ラルフは気付いたのだ。
 だからラルフは試したくなった。
 威力は既に予想がついている。だからなおさらだ。
 ラルフはその期待感とともに、大玉に向かって、

「爆ぜろ!」

 赤い槍を刺し込んだ。
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